169-8-36_最後の試練
このイニシエーションは、私が水の精霊に認められてその加護を得るためのものだ。そう考えると、磐座からの光を受けようとしている女神像が、女神ガイアではなく私であるのは当然か。
「そうそう。私の中に、水の精霊を受け入れなきゃいけなんだもんね」
でも、それって、どうすればいいんだろう?
女神像の瞳が見つめるものは、杯の真上。天井から下がった円錐の岩の先端だ。目を細めて手を翳し、真上を見上げる。
何が光ってるんだろう?
あの光には、水の精霊の力があるんだろうか。
指の隙間から光を見ていると、その光が、一瞬、揺らめいた気がした。
ん?
「あっ!?」
その時、青い光は、まるで、水が滴るように……落ちた!
光の雫は、そのまま真っすぐに落下し、女神像が持っている杯に、入った! その瞬間、音もなく、杯の中で光が弾け、激しく飛び散る!
うっ! 眩しいっ!
その光はとても強く、突然、辺りが真っ白に変わる。しかし、眩しい光は、フラッシュライトのように、一瞬で消滅してしまった。
「ビックリしちゃった! 光が落ちちゃうなんて!」
また、ドームの中が暗くなる。ところが、女神像の杯は、まだ、ぼんやりと光り続けていた。
何で光ってるの? 何かの反応かな?
そっと、杯に手を触れた。しかし、熱くも冷たくも無く、エネルギーを感じることも無い。ところが、よく見ると、女神像のおへその下の部分も、杯と同じようにぼんやりと光っていた。
「ここも光ってるわね?」
腰を屈めて、女神像のお腹の下を観察する。そして、手をそっと触れた。
「あれ? こっちは温かい!?」
杯は何んとも感じなかったけれど、お腹の下は温かくなっている。
「ここは、子宮の辺りだわ」
そうか! アクアディアさんが言っていたように、子宮に精霊の力が宿ったということね!
なるほど、水の精霊の力はこうやって宿すんだ。とっても神聖で幻想的!
「……でも、これを、私も同じようにしなさいって意味なのかな?」
う〜ん、考えていても始まらない。あの光が落ちてくるのを待って、私が何かで受けてみれば女神像に起きた事が私にも起きるかもしれない。そうすると、お腹が温かくなって……って、もしかして、妊娠? なんちゃって、そんな事ある訳がない。
「何かでって言っても、手で受けるしか無さそうだよね……」
女神像が持っている杯は、像と一体になっていて外れない。それなら、次に落ちてくるときに、女神像の杯の上に手を出して、光の雫を受けてみよう。
頭上には、次の青い光が現れた。それが、段々と強くなって、また、さっきのようにドーム中が明るく照らされた。上を見上げていると首が痛くなりそうだ。でも、タイミングを逃せば、いつまでも待つことになってしまう。すると、一瞬、光が揺れた!
あっ! 動いたっ!
慌てて、杯の上に手を翳す!
「もう、落ちるわ!」
両手をしっかり閉じて、こぼれないように注意する。
「来たっ!」
青い光は、何も音を立てずに、天井の岩の先端を離れる。そして、雫は手の中に……。
落ちたっ!
光は眩しく煌めき、辺り全体を真っ白に照らす。しかし、刹那の瞬間が過ぎ去り、周囲は瞬く間に暗くなる。
光の水は、まだ、手の中にあるはず……。
こぼれないように、手元に引き寄せた。暗くてよく分からない。女神像のお腹の僅かな光を頼りに、確認するしかない。そして、注意深く移動した。
「見えるかな?」
よし、こぼれて無いっ!
しかし、おかしい。女神像の場合は、杯もお腹の下も、まだ光っている。それなのに、手の中にある水は何も変化がないばかりか、身体にも何も感じることがない。
「ダメだわ。ただ手で受けるだけじゃないみたいね。それなら、飲んでみる? 大丈夫かな?」
鼻を近づけて匂いを嗅いでみた。
「匂いがしないわね……」
何だか、ただの水のようだ。手を少し回して、掌の水を動かしてみた。何となくだけど、まとまりがあると言うか、本当に普通の水と比べると、僅かに粘りがあると言うか……。
兎に角、手の中で回すと、まとまった水玉として動く気がする。
「飲んでも大丈夫かな?」
きっと、大丈夫だ。精霊の水だから。
他にいい方法も思い付かないし、このままでは埒が明かない。
「やっぱり、飲んでみる!」
意を決して、口元に運んだ。そして、手首の先に口を付け水玉を転がすように喉へと流す!
ゴックン!
「飲んじゃった!? 飲んだわよ!」
喉を通り過ぎる感覚は、ただの水だ。そして、その水は、胃の壁を伝ってお腹に入って行った。
「どう?」
身体の感覚に意識を集中する。
お腹の下の方は……。
「あれ?」
何も起こらない……。
しばらく、じっとしていても、特に変化が起きそうな様子がない。そうしていると、また、天井の方では新しい光が輝き出した。
「何でだろう……?」
分かんない。でも、きっと、飲むのでは無いということだ。
「どうしたらいいんだろう?」
こんなとき、インスピレーションでも働けば……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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