168-8-35_精霊の磐座(挿絵あり)
磐座へと続く通路の先は暗く、まるで、そのまま闇に繋がっているかのようだ。
通路の真ん中に立ち、真っ直ぐに進行方向に向かう。
「行くわよっ!」
一度、気合を入れて、石畳みの通路へと足を踏み出す。
胸を張って、凛々しく……。
自分の足音以外には、何も聞こえない。
それにしても、何で、水の精霊のイニシエーションは、こう言う暗い洞窟が多いんだろう? 少しくらい明るくしてもいいのにね。そもそも、もっと、綺麗な泉とかだったら、テンションだって上がるんだけど。
五十メートル程進んだところで、前方の暗闇が少しずつ大きくなっているのに気がついた。壁に埋め込まれている光る石は、そこで途切れている。
「ん? あそこで、行き止まり?」
しかし、近づくと、それは、真っ暗な空間の、扉の無い入り口だという事が分かった。
「何かの部屋のようね……」
ここが磐座だろうか? それにしても、生物の気配が全くしない。それに、精霊の雰囲気だって感じられない。
通路の端まで進み、真っ暗な空間を覗く。しかし、何があるのか分からないほど暗く、中の様子は分からない。
磐座を守るガーディアンとかいたら、どうしょうかと思っちゃったけど、そんな存在もいないようね。
とりあえず、入ってみるしかなさそうだ。
「ふぅ~」
息を一つ吐き、一歩、足を踏み入れた。その途端!
「うわぁ!?」
突然、青く美しい光が灯った。
「えっ! 眩しいっ!」
部屋の中央に煌めく光。
「何っ、あの大きな岩!?」
何だか異様な光景だ。ドーム状に丸くなっている天井は、中央のところで、その根元の直径が五メートルくらいあるような巨大なトゲ状になって、尖った先端を、真っ直ぐ地面に向けている。そして、岩の先っぽに輝く透明な青い光が、空間全体を照らし出していた。
「凄く綺麗〜っ!」
どうやらここは、円形のドーム状になっている部屋のようだ。中は結構広く、百人が一度に入っても問題なさそうな広さがある。天井の一番中央は、床から四、五メートルくらいの高さはあるだろうか。そして、床には一面、美しく磨かれた黒い石が敷き詰められていて、裸足で走り回っても、安全そうだ。周囲を見渡すと、ドームの壁際に、高さ一メートル程の白い石柱が、等間隔で据えられているのが見えた。そして、その石柱の上には、それぞれ、小さな像が設置されている。中央に吊り下がった岩の青い光は、ドーム中を、真っ青に照らし、それぞれの石像の影が、ドームの壁に映し出されている。
なんて神々しい光……。
さっきまでは、何にも感じなかったけれど、あの光が輝き出すと、ドーム内が、一気に神気で満たされた。
周囲にも注意を向けながら、ゆっくりと中に入り、一番手前にある石柱の前に立つ。
石柱は、直径が三十センチくらいで高さが一メートルくらいの円柱だ。表面の色は白く、大理石のような光沢のある石材で出来ている。そして、その石柱を土台に、高さ五十センチほどの、舞を踊る女性の石像が設置されていた。その像は、アクアブルーの透明な石で出来ており、ゆったりとしたドレスを纏っている。そして、両腕を水平に遠くへと伸ばし、何かを押し流そうとする動きをしているようだ。
「これ、踊りのポーズだよね」
女性像の顔を覗き込んでみると、その表情は幼く、少女がモデルになっている事が明白だ。そして、とても喜びに満ちたような表情をしており、小さい像にも関わらず、瞳まで細かく表現されている。それに、細い腕と小さな手、しなやかな足とその指の爪、揺れているドレスの皺に至るまで、ディティールが見事に掘り込まれていた。
「凄い彫刻ね。きっと、名のある芸術家が作ったんだわ」
隣の像を見てみると、その二番目の像は、一番目と、また異なるポーズをしている。
「へぇ~、みんな違うんだ……」
二番目の石柱の前にくると、そこに設置された像も、やはり、少女の姿をしていた。その少女像は、最初の像の続きの動きをしているように、両手で何か押し上げているような姿勢をしている。その像は、身体をグッと上に伸ばし、左足は、少し地面から浮いていた。
グルっと周囲を見渡し、石柱の数を数えると、全部で八本ある。どうやら、少女像は、踊り型をそれぞれに表している様だ。順番に、石像を一つずつ見て回る。どの像も、とっても力強く躍動感があって、豊かな表情をしていた。
そして、八番目の石像の所にやってきた。
その石像のポーズは、しゃがみ込んで、小さく丸まったようなポーズだ。左足つま先で身体を支え、右足と両腕を前に伸ばして上体を前屈みにし、目は閉じられている。
八体の少女像は、ポーズこそ違うけれど、どれもみなよく似ている。そして、それらには見覚えがある。そう、あの時の……。
「……エリアと……そっくりだ」
このイニシエーションの最初の洞窟で、瞼の裏に見えたエリアの姿。水の精霊への感謝を捧げる舞を踊っていたエリアと、とても雰囲気が似ている。
「やっぱり、そういうことね。間違いないわ。雰囲気だけじゃない。この像が身にまとっているドレスだって、エリアが着ていたものとよく似ている。ん? と言うか、今、私が着ているものともそっくりね。じゃぁ、これは、どれもみんな、水への感謝の踊り……」
広い空間に踊りの型を示す女性像だ。そして、この場所は、踊りを踊るのに十分な広さがある。
「もしかすると、ここは、水の精霊様に、踊りを捧げる場所?」
そして、中央に垂れ下がった大岩が、恐らく磐座だろう。さらに、その真下にあるのは……。
「あの像……?」
この部屋の真ん中には、磐座と思しき天井から突き出た岩のちょうど真下に、等身大と思われる裸婦像が置かれていた。こちらの像も、遠目から見ただけで、かなり精巧に作られたものと分かる。
部屋の中央へと進み、像に近づくと正面に立った。真っ先に目に留まったのが、首に表現された輪の飾り。
「……あぁ、首輪を嵌めているんだ。ローズ男爵領の教会にあった女神像とそっくりね。じゃぁ、これは、女神ガイアの像?」
女神像の身長は、私とほぼ同じだ。そして、舞を踊る少女像と同じアクアブルーの透明な石で出来ている。
「布切れ一つ身に付けてないわ。でも、とっても綺麗。それに、これもかなり精巧に彫られているわね」
女神ガイアの像は、杯を両手に持ち、上から落ちてくる何かを、その杯で受けようとする姿をしているようだ。女神像をグルっと回り込んで観察した。よく見ると、杯を顔よりも上に掲げ、背中を伸ばしてつま先立ちをし、後ろ足は、指が僅かに床に触れて身体を支えている。後ろには、背中まで伸びる長い髪。腰が細く、小さめのお尻からしなやかに伸びる太ももと、長く清楚な膝下から小さな足。
指で、像の背中を背骨に沿ってそっと撫でる。
美しい身体だ……。
正面に戻って一歩下がり、表情を見つめる。意思の強さを示す凛とした瞳。あどけなく細い顎。
視線を下げて、前面の姿を見る。
細い腕に細身の身体。そして、その身体とバランスの取れた大きすぎない胸の膨らみ。
掌で、そっと胸に触れてみた。
とても滑らかな手触り。
思わず、左の手を、自分の右胸に当てた。
「同じだね……。フフフ」
まだ、大人の女性に成長する前の身体だ。
腕を組んでしみじみと見る。
「まるで、自分を見ているみたい……」
へぇ〜、ちょっと親近感が湧いちゃった〜。
ほんのさっきまでは、女神ガイアとして見ていた像に、今度は自分の姿を見る。
「何だか、私にそっくりって気がしてきたよ」
そう思ったら、もっとじっくり見たくなり、ベタベタと女神像に触れて細かなところまでチェックした。やはりこの女神像もディティールがとんでもない!
「こんな所まで……ちょっとこだわりすぎでしょ」
女神像の前にしゃがみ込む。おへその形まで詳細だ。
「こ、ここも……こ、細かい……。それにしても、こんなの、一体誰が作ったのかな? 当然、モデルさんがいたんだよね。恥ずかし過ぎるでしょ! それとも、イメージだけで彫れちゃうものなの?」
顔を近づけて、さらに細部を確認した。
「ほら、こんなところに、ホクロみたいにしてなんか付いてるよ」
それは、右太もも付け根近くの内側に赤い点になっているため、小さいながらも、目を引いた。
……。
ん? これって……。
「いや、そんな事あるはずないよ」
しかし、それが気になり出したら止まらない。
「もう〜、確認すればいいだけでしょ。誰もいないから平気よ」
ドレスを捲り上げ、自分の右太ももを見る。ショーツをずらす必要はない。今は何も履いていないのだ。
「いくらなんでもそんな事ある訳が……えっ! 嘘っ……?」
全く……同じ……位置に、ホクロがある……。
女神像の赤い点を指で触っても、取れるようなものでは無い。
「いや、マジで? でも、そんなのおかしいって!」
こうなったらとことん確認しないと気が済まない。そして、もう一度、顔から順番に女神像を見ていく。
「どれどれ、ん? あっ、瞳の中に……何か……光ってる……鼻筋が通ってて、顎が幼い……」
ふ〜む。
次は、華奢な肩から、胸、お腹、お尻、足の先まで自分の身体を触りながら、女神像を触り比べる。サイズが、ピッタリ瓜二つ!
……ふ〜む。
「これは、私に似ているんじゃないよ……」
頭が、やけに冴えてくる。
「……紛れもなく、私だな」
ーーーー
なんて神々しい光……。
AI生成画像
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