159-8-26_吐き溜めの池
カメの背中はよく滑る……。
まるで滑り台のようね。
それに、彼は、言葉数が少ない……。
人と話すのが苦手なんでしょ。
そんなカメだけど、彼がいなければ、湿原の移動は大変だったと思う。
カメには本当にお世話になっちゃった……。
だから、最後に一言くらい言わせて欲しい。
「落とすんじゃないわよ~~~~~~~~っ!」
真っ暗な闇の中を何処までも落ちていく。
どこまで続くんだろう? バンジージャンプの落ちる時ってこんな感じ? やった事ないけど。でも、これ、最後まで落ちるとどうなるんだろうね?
せめて、落ちたところに大きな池でもあってほしい。固いところだと、痛そう。身体は丈夫らしいけど、痛い思いはしたくない。
そうして、暗闇に意識が溶けていった……。
ーーーー。
ん? 顔が濡れている。さっき、水たまりに落ちたからだ……。
うっ! 冷たい!
今度は、何かが顔に当たった。
あれ? どうやら、落下は止まったみたい。と言うか、夢を見ていたのかな?
身体には、どこにも痛みなど感じない。息もしている。
んんっ!? 何? この匂い!? く、臭いっ! 酷い匂いだっ!
手で、口と鼻を覆った。
ヤバっ、ちょっと、何この匂いっ!
「おいっ!」
「えっ!?」
誰かいるっ!?
「いい加減、起きたらどうだっ!」
「だ、誰っ!?」
薄目を開けて、声のした方を見た。しかし、周囲は薄暗く、目も慣れないのかして、よく見えない。
それにしても、この匂い、目にしみるほどだ!
「フンッ! 何だ貴様! 失礼な奴だっ! 此処は俺様の楽園だ。何しに来やがった?」
「何しにって……?」
誰? この人? 何なの、突然!?
上半身を起す。そして、落ち着いて辺りを見渡した。
どうやら、また、洞窟の中みたいね。足元には、あの小さな光る石があるし……。
目が慣れてくると、周囲がぼんやりと見え始めた。そして、天井を見上げる。
大きな空洞だぁ〜〜〜。
頭上に見える沢山の尖った岩の先から、ぽたぽたと雫が落ちてきている。
さっきのは、これが、顔に当たってたんだ……。それにしても、酷い匂い?
「おい、お前! 転生者だろ?」
「何っ!?」
一瞬で警戒心が高まった!
ここは、何処なの? 何で、私の事知っている?
「お前、肥溜めみたいな匂いがするって思ってんだろっ? はっきり、そう言ったらどうだ?」
何、コイツ! 何だか偉そう!
ちょっと威圧的で、嫌な感じだ。確かにコイツが言った通り匂いは酷い。でも、呼吸はできる。
「あなたは誰?」
「人に名前を尋ねるときは、自分から先に名乗るもんだ。そんな事も知らないのか?」
いちいちムカつく。
「わ、私は、エリア、エリア・ヴェ……」
「どうだっていいっ!」
「何なのよっ!」
くぅ~、ホント、嫌な奴。それにしても、ここは何処だ? それに、この匂いは……。
目が完全に慣れてきた。どうやら、今いるところは、天井が大きなドームになったような丸い空洞の中だ。天井からは鍾乳石のように無数の突起が垂れ下がっていた。そして、空洞の殆どの面積を締めるように池があり、さらに、その中心に、今いる場所と同じ高さの丸く小さい陸地があった。その陸地は完全に孤立していて、さっきから話しかけてきている人物がそこにいる。
それで、池の中だけど……。
「お前! イニシエーションを受けに来たんだろ? なら、さっさと終わらせようじゃないか。俺様は、人間と会うのが嫌いなんだよ。どうせ、お前はここでリタイアだ。この、吐き溜めの池を前にすれば、お前たち転生者は怖気づいて帰るしかないんだよ。俺様の、不憫で可愛い愛する子どもたちを前にすればなっ!」
彼がそう言うと、池の表面がねっとりと盛り上がり、段々高くなると、高さ三メートルほどの壁になった。しかし、粘性のある液体がぬるっと落ち、中から異様な形をした生き物が二体、姿を現したっ!
うっ! 何コレ? ヤバっ!
座ったまま、後ろに下がる。しかし、直ぐに背中が何かにぶつかった。後ろは、もう、壁だ!
「ハッハッハッ! やっぱり逃げようとしてやがる。みっともねぇ奴だ。ここはなぁ、人間の醜い欲と恨みの感情が集まる場所なんだよ。性欲、物欲、金銭欲、妬みに、嫉みに、僻みにと、まぁ、いろいろあるけどな。お前知ってるか? 水っていうのはな、あらゆるものを取り込んで流すんだよ。感情だってそうだ。水に溶けた感情はここに流れ着いて、こいつらが、その感情を喰らう。まぁ、精霊様は浄化って言ってるけどな……」
よくしゃべる男ね。
「……ほらっ、見てみろ、こいつらの姿を。負の感情を食い続けて、こんな醜い姿になっちまった。こいつら、本当は妖精なんだ。可哀そうに。お前ら転生者は、どんなに強力な加護を持っていても、何にも変えられ無いんだよ……」
それにしても、ホントにこれが妖精……?
「お前、その首輪……? 女神の枷ってやつだな。ケッ、ダセッ! 奴隷にされた奴らの気持ちも分からないくせして、カッコ付けるんじゃないってんだ! さっさと帰れっ!」
「カッコなんて付けてないし!」
何、意味分かんないこと言ってんのよね。
男の拗ねた様なくだらない言葉よりも、池の中の方が気になった。
池から立ち上がった二体の生き物は、大きくて太いミミズのような生き物だ。胴回りは五十センチ近くあり、全身にいぼがある。そして、先端には丸い大きな口が開き、口の中の内壁を一周するように尖ったギザギザの歯が生えていて、それが二重にも三重にもなって喉の奥へと続いていた。口の周りには髭のようなものが生えているけれど、目は見当たらない。
彼は、丸い空洞の周囲を四分の一ほど進んだ先に、ぼんやり明かりが見える出口を差して、言った。
「ほらっ、あそこが出口だ。とっとと、行きやがれっ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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