157-8-24_ラケルタの娘
天邪鬼。あの子、一応は精霊だよね。まだ子どもだけど。あの子が私の眷属になってくれたら、彼女のエネルギーの一部を使って、この人たちの強化が出来るってことか? でも、それには、水の精霊と話を付けないといけないんだよね。それに、この人たちが天邪鬼の配下になると、どうなるんだろ? ラケルタ人じゃなくなっちゃうんじゃないの?
まぁ、考えていても仕方ない。とりあえず、この子たちに聞いてみよう。
そして、若い女の子ばかりを前に集めた。呼びかけに答えたのは全部で五人だ。
「あなたたちが不安に思うことも分かるわ。もし、このままだったら、明日には、あなたたち若い女の子は、種族の存続のために奴隷にならなきぁいけない。だけど、今の状況では、私にできることも限られているの。上手くいくかどうかも分からないし。それでもいいなら話を聞いてみる?」
そう言うと、彼女たちは、床に跪き、祈りの姿勢を取った。そして、さっき、一番最初に立ち上がった女の子が話した。彼女は、若い女の子たちのまとめ役のような立ち位置だ。
「隷属の女神様の御心に従います。どうか、私たちをお見捨てにならないよう、お慈悲をください」
彼女がそう言うと、女の子たち全員が、丁寧にお辞儀をし頭を下げた。
当たり前よね。さっき、ウェンネさんは、奴隷になった方が長生きだ、なんて言ってたけど、奴隷になんてなっちゃったらどんな目に遭わされるか分かんないんだし、死ぬ方がマシって思う事もあるんだから。
でも、私は、それでも生き抜いた女の子たちを知っているけど……。
「いいでしょう。では、私の考えを話します……」
そして、天邪鬼と契約をかわし、彼女の配下になってもらうこと。そして、それは、希望者だけで良いことを話した。何も全員が強くなる必要はない。身体強化された者が後の一族を守ればいいのだ。
「それから、一番大切なことを話すわね……」
それは、天邪鬼の配下になれば、恐らく、ラケルタ人では無くなってしまうだろうと言うことだ。デミヒューマンたちは守護精霊の性質を受け継ぐ。守護精霊が変われば、身体の状態も変わるかもしれない。こればっかりは、やってみないことには分からない。さっき、ウェンネは、自分たちの数が減った理由を獲物の数のせいにしていたけれど、間違いなく、精霊契約の解除のせいだ。このラケルタ人たちは、クロック人に皆殺しにされなかったとしても、いずれは消滅するか、守護精霊の性質をとことん失ってさらに弱い生き物に変化してくのではないかと思う。
「さあ、私の話は以上よ。あなたたちの返事はOKでいいのね?」
「はい」
まとめ役の彼女は、祈りの姿勢のまま返事をした。
「あなた、お名前は?」
彼女に名前を尋ねた途端、その子の顔が急に明るくなる。
「は、はいっ……!」
そして、彼女は、嬉しそうに名前を言った。
「わ、私は、ミセリと申します!」
「綺麗な名前ね。では、ミセリ、水の精霊様の許可が下りれば天邪鬼も力になってくれるでしょう。その後は、あなたが若い子たちのリーダーになるのよ」
「分かりましたっ!」
ミセリは、祈りの姿勢を崩さずに、真っすぐ正面を向いて答えた。他の若いラケルタ人女性たちも、全員祈りの姿勢になり腰を折って礼を行った。
「ウェンネさん、そういう事でいいわね?」
「も、もちろんですじゃ」
ウェンネも反対はしていない。
後は、戦士の男たちか……。コイツらは、絶対、強くなった女の子に守ってもらうなんて、プライドが許さないだろう。かと言って、そのままでは、いずれ今よりさらに力を失ってしまう。そのことは、自分たちでも分かっているはずだ。
「クータム、あなたたちはどうするつもり?」
一応は拳を交えた相手だ。武士の情けってやつで、聞くだけ聞いてあげるわ。
「俺たちぁ、ラケルタの戦士だぜ。種族まで変わっちまうなら、そんなもん、いらねぇ……」
まぁ、そう言うと思ったけどね。
「……と言いたいとこだけどヨ。背に腹は代えられねぇじゃねぇか。女神さんが戻ってくるまでヨ、ちょっと、考えさせてくれ」
「なんだ、案外、現状認識ができてるみたいね」
「ヘヘッ、そう言うなってヨ」
何とか話は着いた。そうと決まれば早速行動だ。明日までに私が戻ってこなければ、この人たちは全滅するだろう。急がないと! まずは、天邪鬼だ。今の内に彼女をここに呼んでおいて、話をしておこう。あの子なら、きっと力になってくれるはずよ。
外で待っていたカメに声を掛けて、天邪鬼をここに呼ぶ方法を聞くと、指笛を吹けばいいということを教えてくれた。指笛は、前世でもできたので問題ない。シャルが珍しそうにして側にやってきた。
早速!
お腹に空気を一杯吸い込んで、一旦、息を止める。それと同時に両手の人差し指を舌の裏側に入れて……。
行くわよっ!
魔力は使えないけれど、意図だけ乗せて、力いっぱい息を吐き出した。
「ピーーーーーーッ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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