155-8-22_隷属の女神
そう言うと、クータムは、「チッ!」と舌打ちをした。すると、ウェンネが呆れたように呟いた。
「別嬪に入れ込みおって。ワシらを見捨てようとするとはのぅ……」
「ヘヘヘッ」
しかし、クータムは、始めから、猫耳少女たちを逃がす予定で、しかも、私の事も、奴隷にしないと決めたのだ。
それなら、少し、派手にやり過ぎたのでは……?
何となくラケルタ人の事情が見えてきた。この人たちは、私の事はともかく、奴隷狩りを行っていた訳ではなかった。どうにかして猫耳少女たちを逃がそうとしていただけだ。それなのに、彼らがクロック人に備えて慌てて作った砦を、木っ端みじんに破壊してしまったのは……。
わ、私だ……どうしよう?
じゃないでしょっ! だって、あれは仕方なかったんだからっ! 私の事、手籠にしようとしたんだからね、この男はっ! ま、まぁ、砦を壊す必要まであったかどうかって言われると……。
そんなの、今さらよっ!
でも、私だって本当は、この人たちが皆殺しになるのは嫌だって思ってるし、何かいい方法考えようかな。
「ところでウェンネさん。ここは何処なの?」
「あぁ、ここは、レガリ湿原ですがな。ほれ、レピ湖の北西にある……」
「へぇ〜、そうなんだ」
ふ~ん。レピ湖の近くに湿原があるんだ。
「あいや〜、乙女戦士様は、知りませんなんだか? あなた様は、一体、どこからおいでなされたのじゃ?」
「私?」
言っちゃっていいのかな? まぁ、カメは事情を知っている様だし、水の精霊のことはみんな知っているだろう。
「私はね、水の精霊のイニシエーション中なの」
「み、水の精霊様の……も、も、もしや、あ、あ、あ、あなた様は……れ、れ、れ、隷属の、め、女神様!?」
「隷属の女神?」
出た! 女神の加護持ちの二つ名、隷属の女神っ! ここに来て、まさかのリアル情報!
目の前のウェンネの驚きようが、普通ではない。そして、彼女は地べたにひれ伏した。すると、他のみんなも一同に、その場でひれ伏してしまった。クータムは、「ヘッヘッヘッ」と笑っている。
「何してんの?」
「そ、そ、そ、そりゃ、お、畏れ多いですのでのぉ〜」
ウェンネは動揺が収まらない。
なんだか仰々しいわね。
「でも、なんで私が隷属の女神って思ったのよ? この首輪があるから?」
「そ、その通りでございます……」
「でも、ちょっとみんな驚き過ぎでしょ?」
「ヘッヘッヘッ、そりゃ驚くだろうぜ。伝説なんだからヨ」
「伝説ねぇ……」
過去の加護持ちの足跡かぁ。誰だか知らないけど、その人たちが、色々と頑張った結果だもんね。私じゃないし……。
しかし、ウェンネはテンションが高いままだ。
「い、いや、まさかワシの生きておるうちに、お目にかかれるとはのぉ〜」
「そんなの、私が隷属の女神じゃないかもしれないじゃない?」
「いえいえ、隷属の首輪をはめたままの者は、奴隷以外に、隷属の女神様くらいしかおらんじゃろ。それに、水の精霊様ともご縁がおありで、しかも、桁外れの強さとくれば、ワシらじゃのぅても分かるでのぅ」
「この首輪の事言ってるんでしょ? これは、隷属の首輪じゃないし」
「そうですかいの? それなら、なんでそんなもん嵌めておいでなさるんじゃ? その首輪はすぐに外れよるんですか?」
「え? え〜と、まぁ、すぐには、外れたりしないんだけど……」
「つまり、その首輪は魔法の首輪じゃな。ならば、やはり、あなた様は隷属の女神様じゃ。ワシら、デミヒューマンは、人間に比べれば数も少なくての、ひっそりと生きてきたのじゃが、その分、寿命は奴らより長いでのぅ。言い伝えもしっかり若いもんに伝えておるのじゃ。あなた様は、こんなワシらの絶滅の瀬戸際に現れなさったんじゃ。間違いないわ。なぁ、みんな?」
ウェンネの言葉に、一同が、うむうむと頷く。
「……ワシら一族は弱いからのう。いつか、隷属の女神様が現れて、逃げ隠れせんでもええように、ラケルタの民に力を授けてくださる。ワシらは代々そうやって希望を繋ぎ、辛いことも耐え忍んできた訳じゃ」
う〜ん、なんだか変な雰囲気になっちゃったわね。別に、私はそんなんじゃないって言い張ってもいいんだけど、実際、隷属の女神は、女神の祝福の加護持ちに対する二つ名なんだから、嘘ついちゃうみたいで、なんかそれも違う気がするよね……。
私の顔が、少し困った顔に見えていたのかもしれない。クータムが、ウェンネに言った。
「ババァ、そいつぁ俺たちの事情だぜ。この姫さんには関係ねぇ」
「まぁ、そうじゃな。確かにクータムの言う通りじゃ」
しかし、シャルは目を輝かせてこちらを見ている。
「戦士のおねぇちゃん、女神様なの?」
「う、うん、そうね、どうなんだろうね、この人たちが言っている隷属の女神って、良く知らないんだけど」
思わずそう言ってしまった。でも、よく知らないのは事実だ。
すると、ウェンネがクータムに向かって言った。
「クータムよ。こうなれば、お前の仕出かした事は、先祖の顔に泥を塗る事になるで赦されん事じゃ。ワシらも、覚悟の時が来た様じゃな」
「ヘヘッ」
クータムは力なく笑うと、「俺たちぁ、クロック人どもには勝てねぇんだ。仕方ねぇ」と言って、視線を落とした。彼の言葉が床に落ちるように零れると、その場の空気がさらに重くなる。
はぁ〜、やっぱ、放っておけない。
「ちょっと、待ちなさい、あなたたち。私は、まだ、あなたたちのことどうするかなんて、何も決めていないわよ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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