152-8-19_剣技、神旋風!!!(挿絵あり)
しばし目を閉じた。
あぁ、これね。この感じ、さっきと同じだ。では、インストールっと。うわっ! 凄い凄いっ! こんなの反則級だ。これは、ちょっと、ラケルタ人が可哀そうかな? いや、ダメダメ。そんな甘い顔見せちゃったら、またつけ上がるだけだ。
目を開けて息を整える。
ふぅ〜。これでよし。
しかし、クータムは、まだ、起き上がるようだ。
「チキショー! ありえねぇ! どうなってやがるっ!」
彼は、丸太を押しのけ、立ち上がると膝に手を付いてこちらを睨んだ。クータムの雰囲気が変わっている。
何か、目が赤くない? ちょっと、怒っちゃってるかもね。どうでもいいけど。
「まだ続けるの?」
一応、彼にそう聞いた。これが最後通告だ。
やっぱり、私って、こういう時、無慈悲ではいられないかも。
しかし、彼の返事は無い。
「なら、仕方ないわね」
彼らの何人かが命を落とすかもしれない。でも、ここで赦す気なんてさらさら無い。
まぁ、見物人には言っておいてあげるわね。私、基本的に、暴力は嫌いだから。
そして、岩壁の所に集まっているラケルタ人たちに向かって叫んだ。
「あなたたちっ! 洞窟に入ってなさいっ! そこにいるとケガするわよ!」
そう言って、一旦、剣を下段に構え、次に、左腕を引いて腰の脇に剣を横に寝かせて構えなおした。
次で勝負を決める!
一度、深呼吸をし、意識を集中させた。重心を下っ腹に置き、さらに腰を落とす。右目の端には、クータムが短い杖を構えている様子が見える。
意味ないのに……。
「ふっ!」
小さく息を吐き、一瞬、目を閉じる。そしてすぐさま、カッと目を見開いたっ!
「神ーー旋ーー風ぅぅぅーーーーっ!!!」
腰を捻り、高速回転に入ると同時に剣を一気に振り抜くっ! 一瞬の無音の後、ブンッ! と空気を震わす音がした。身体は、瞬時に旋回し、元の位置へと戻る!
三百六十度の剣筋!
次の瞬間! 空気に切れ込みが入り、放たれた斬撃の輪が外側へと広がっていくっ! 斬撃は、超速で周囲の崖や砦の丸太に到達し、大音響が鳴り響くっ! 鋭利を極める斬撃は、高速回転しながら周囲の物体を容赦なく切断したっ! 砦の丸太は、上下真っ二つに裁断され、後方に飛び散るっ! 砦は全て大破し、崖の岩壁には真一文字にヒビが入って、洞窟の入り口が大きく崩れ落ちたっ! 衝撃波による大きな音は、近くの山の方まで反響していく。そして……。
しばしの静寂が訪れる……。
「ちょ、ちょっと、思った以上に凄い威力かも。あ、あの人たち、し、死んじゃったかな……?」
流石はヴィースの技だ。破壊力が桁違い過ぎる。これは、死傷者が多いかもしれない。
「い、いい気味だわよ……そ、そうよ……わ、悪いのは、コ、コイツらだし……」
ラケルタ人のことなんてどうでもいいのだ。それよりも猫耳少女だ。でも、あの子はさっき、洞窟の奥へと入って行ったから大丈夫。きっと、姉のところに行ったんだろう。
「ふぅ〜」
周囲を見渡す。誰も起き上がっている者などいない。
「命のやり取りなんだから、覚悟くらいあったでしょ?」
私だって、覚悟したんだもんね。お互い様よ。
やれやれ。ここで受けた嫌な出来事を、全部、吹き飛ばしてやった。
「あ~、スッキリした!」
剣を地面に差し、クータムのいたところを見る。そこには、ラケルタ人が数人倒れていた。近寄ってみると、クータムも仰向けになって倒れている。
「私の勝ちね」
人の事を、生殖の道具とか、性欲のはけ口みたいに言った報いだ。
まぁ、死んでは無さそうね。
とりあえず、今のところはこれくらいにして、あの子たちを迎えに行こう。洞窟は、さっきの衝撃で天井が少し崩れたようだけど、人が出入りすることはできそうだ。入口付近にも、数人の若いラケルタ人の男が倒れている。
「洞窟に入れって言ったのに」
彼らを横目で見ながら、呟くように言った。でも、気絶してるだけのようだし、男ばっかりなんだから、放っておいても大丈夫でしょ。
崩れ落ちた岩に注意しながら、洞窟の入り口を通る。洞窟の中は薄暗いけれど、何本かの小さな松明が壁際で燃えているため、その明かりで、かろうじて中の様子を知る事が出来た。洞窟は入口を入ると直ぐに広くなっていて、その広場にラケルタ人の老人と女たち、合わせて五十人程が、身を寄せ合って不安そうにこちらを見ている。カメは、ラケルタ人の事を戦闘部族って言ってたけれど、この人たちは戦士でも無さそうだ。
辺りを見回す。
さっきの猫耳の子、何処だろう?
すると、奥の方からその女の子が駆け寄ってきた。彼女は、いきなり抱き着いてくると、見上げて笑った。
あ~、良かった。
「無事だったのね」
「……」
やっぱり、人懐っこい女の子だ。でも、話せなくて辛そう。魔法が使えたら、直ぐにでも話せるようにしてあげるんだけど……。それにしても、可愛い耳……フフッ。
猫耳少女の頭を撫でていると、一人のラケルタ人の老婆が、別の猫耳の女の子に手を引かれて目の前にやってきた。
「キャ~! 猫耳美少女だ!」
可愛い~。この子が、お姉ちゃんの方ね。ハグハグしちゃいたいっ!
ところが、猫耳少女は猫耳少女で、口に手を当てて驚いた様な顔をし私の事を凝視する。
「……」
彼女は、言葉を話さずに固まっている。
ん? なんでそんなに見るの? 私の顔に、なんか付いてる?
すると、ラケルタ人の老婆は、目の前に跪いた。猫耳少女も我に返り老婆の隣に跪く。
「あ、あの……この子のことも気になりましょうが、少し、よろしいかな?」
「んんっ! な、何?」
咳払いをして、気を引き締める。
「乙女の戦士様、願わくばワシらの罪を、この老いぼれの命で償わせてはもらえんじゃろうか?」
「罪? 償う? はぁ? 何言ってんの今さら」
ラケルタ人の話を聞く耳なんて持ってないし。
この人たちは、獣人の少女たちを攫って、誰かに差し出そうとしていたのだ。村人全員で奴隷狩りに加担していたに違いない。しかし、ちょっと腑に落ちない光景でもある。この老婆の手を引いてきたのは猫耳少女だ。彼女は、自ら率先してそうしているように見える。
何だろう、この違和感。この子たち、ラケルタ人に攫われてたんだよね? 何だか、仲がいいみたいなんだけど……。
「ちょっと、そこの彼女。この子のお姉ちゃんよね。私と一緒に行くでしょ?」
しかし、獣人の少女は下を向き、残念そうに首を振った。
ん? この子も、沈黙の魔法で話すことができないんだわ。
「ちょっと、ラケルタ人の人! この子たちの魔法を解除しなさいよ!」
すると、辺りに沈痛な空気が流れた。周りにいるラケルタ人たちは、みんなうつ向いて、誰も応えようとしない。
何なのよ、この人たちっ!
「答えなさい! 誰かっ! 魔法を使える人はいないのっ?」
もう一度呼びかけたけれど、やはり、誰も返事をしない。もしかしたら、さっきの男達に止められているのかもしれない。
でも、そっちがその気なら……。
「いいわ、分かった。さっきの男、明日になれば、あなたたちが皆殺しにされるって言ってたけど……」
今日の私は、ちょっと、黒女神よ。
「……何なら、今から、この私が皆殺しにしてあげようか?」
イヒヒヒ。
ーーーー
次で勝負を決める!
神ーー旋ーー風ぅぅぅーーーーっ!!!
AI生成画像
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