110-6-15_小さなドラゴンと公爵令嬢(挿絵あり)
小さな火の精霊ファイアドレイクは、腕を組んだまま右手の人差し指でピュリスを指さし、そう言った。
「チューだって!?」
ピュリスさんに女神の祝福をしろってことだよね。う~ん、精霊が、それを望んでいる?
「どうしてさ?」
ファイアドレイクに、理由を尋ねると、精霊は、その訳を説明した。
「もちろん、この女のためなのだ……」
小さな火の精霊は、ピュリスが、前世で経験した恐怖による傷を、未だ魂の奥深くに残しているということだった。
ファイアドレイクは言った。
「……この女は、魂の傷のせいで、まだ、あたいの力を十分に発揮できておらんのだっ! 此奴は、女神様の眷属になると、きっと役に立つのだっ! それに、あたいも、女神様の眷属になれるのだぞっ!」
全く遠慮の無い物言いだけど、ちょっと、今、気になることを聞いたぞ。
「ピュリスさんは人間だよね。心の傷は治るかもしれないけど、彼女にキスしても、精霊や妖精じゃあるまいし、僕の眷属にはならないよね?」
「ん? 何を言っているのだ、女神様。人間も精霊も関係ないのだぞっ! みんな、チューで、女神様の眷属なのだっ!」
人間が、僕の眷属になる? 全く、ピンとこないんだけど……。
しかし、ファイアドレイクの話では、女神の祝福によって、人間も女神の眷属になるという。
そう言えば、ヴィースは、アリサに同胞って言ってたけど……。いや、でも本当かな? アリサと僕は、主と眷属という関係でも無いんだけど……。
「ただしなのだ、あたいが此奴と融合しなければならん!」
ファイアドレイクは腕を組み、フムフムと自分だけ納得するように頷いている。
「融合?」
「そうなのだっ! 女神様とチューした人間どもは、我らと融合できるようになるのだっ! 融合が嫌なら、ただの契約にしておけばいいのだぞっ!」
精霊は、子どもみたいに小さい割に、話すことには迷いが無い。
「それなら、融合するとどうなるんだよ?」
「本当に何も知らないのか? 変な女神様だぞ。融合は、融合なのだ。人間が精霊になるのだっ!」
「人間が精霊になるっ!? マジで?」
しかし、万が一それが本当なら、僕は、かなりやらかしてしまっている事になる! 今まで、女神の祝福をした人間は、アリサ以外に三人もいる。
「そう言えば、イリハやラヒナは女神の絆っていう加護が付与されていたような……」
「それな。それが融合の加護なのだぞっ!」
「そうなのっ!?」
女神の絆って、そういう権能なのか? ちょ、ちょっと、ヤバイ!
「で、でも、融合なんてしたら、人間だった人はどうなるのさっ?」
「眷属精霊になった人間どもは、女神様と、ともに生きるのだ……」
僕とともに生きる? ちょっと意味が分からないぞ!
小さな火の精霊は、話を続けた。
「……つまりなのだ、眷属精霊に命の終わりなどない。女神様の命がある限り、生き続ける存在になるのだからなっ!」
「ちょっと待って! 不老不死になるって事?」
「そうなのだ。しかし、そんな事、精霊なら当たり前だぞっ!」
小さな火の精霊は、何だか偉そうだ。彼女によると、そもそも、精霊に年齢は関係がないので、本人の意図次第により、見た目が何歳にでも変化する。だから、僕の年齢に合わせて、僕と同じ目線で人生を送ることができるそうだ。もちろん、眷属として女神のための働きを行うことが喜びとなる。それが、女神とともに生きるという意味だった。
「嘘でしょ!?」
精霊は、「本当なのだ」と言って、何故かニンマリと笑った。ファイアドレイクの態度が怪しいのは、この際、脇に置いておくとして……。
でも、ちょっと、これは、問題じゃないの?
僕がキスをすれば、その人の人生に、必要以上に干渉することになるっ! しかし、それを言ってしまえば、もう、病気や心の傷を治療した時点で、既に干渉してしまっている。それに、本人には、精霊や妖精と契約しないという選択肢もあるはずだ。
「選択の自由はあるんだよね?」
「当然なのだっ! 本来、魂は自由なのだっ! 選択の自由は、全宇宙の掟なのだぞっ! それも知らなかったのか?」
ファイアドレイクは、魂が自由でないのは、人間だけだと言った。
精霊は自由なんだね。
なるほど。驚いたけれど、とりあえず女神の絆加護がどういうものか判明した。これまでに女神の祝福をした四人には、どう言って話せばいいかまだ思い付かないけれど、もう、やってしまった事はどうしようもない。それなら、精霊の言う通り、ピュリスさんにキスをして、融合がどんなものなのか見ておく方がいいかもしれない。しかし、そうは言っても、彼女に断りもなく、勝手にキスをする訳にもいかないと思う。
もう少し、詳しく本人への影響を聞かないと……。
「精霊と融合すれば、人格はどうなるのさ?」
ファイアドレイクは、両手を腰に当て、胸を張って言った。
「そんなもの、足して半分に決まってるのだぞっ!」
やっぱり偉そうだな。足して半分って、殆ど人格変わるじゃないか!
「それなら、融合は難しいよね。誰も、そこまでして精霊になりたくないだろうし……」
そう言いかけると、ファイアドレイクは少し焦りだしたように言った。
「いや、待て待て、女神様。あたいは女神様の眷属になりたいのだっ! よ、よし、分かった。それなら、半分の半分ではどうなのだっ? これ以上は無理なのだっ! 力が存分に発揮できなくなるからな」
四分の一ってことか? それでもどうかな……。
「やっぱ、無理だね」
そう言うと、ファイアドレイクは両手を振って、僕の言ったことを取り消そうとするような仕草をしながら言った。
「違うのだっ! 半分の半分というのはだな……」
ファイアドレイクが言うには、普段の人格には影響を与えず、戦闘など精霊の力を大きく発揮するときだけ、その人間と半分半分に人格を分け合うと言うことだった。
「それって、どんな精霊でも同じ条件なの?」
「ま、まぁ よく似たもんだぞ。あたいはオーソドックスな精霊なのだぞっ!」
絶対違うね。まぁ、しかし、力が出せなくなるなら意味がないからね。精霊が嘘なんてついて無いと思いたいけど……。
ーーーー
違うのだっ! 半分の半分というのはだな……。
AI生成画像
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
と思ったら
下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。
面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に励みになります。
重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。




