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転生記者の取材手帳 〜王都の闇を暴いた男の英雄譚〜  作者: 漂月


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第15話

   *   *


【メリアナの取材メモ・その一】


 あいつが席を外した隙に、私はシスナちゃんにそっと質問した。

「あなたのお兄さんって、いつもああなの?」

「そうなの。すっごく鈍いんだよ」

 即座に肯定の答えが返ってくる。やっぱりそうなんだ。

 シスナちゃんは困ったような顔をして私を見ている。



「ごめんなさい、メリアナさん。男らしさ全開のダッジ兄さんと違って、上品なサッシュ兄さんは堅物すぎるから……。二人とも同じぐらいモテるんだけど」

「あ、そうなんだ」

 ここの一家、みんな顔がいいものね。シスナちゃんも美少女だ。きっとダッジさんもイケメンなんだろう。



「ちなみにダッジさんはどれぐらいモテるの?」

「えーとね、ダッジ兄さんに告白する順番を三人ぐらいで言い争ってるのは見たよ。全員断られたけど」

 三人!? しかも全員断った!?

「その人と同じぐらいモテるってことは、サッシュも!?」

「サッシュ兄さんの場合、変に期待させないからそういうところまでいかないんだよ」

 よかった。



「でもず~~っと未練を引きずってる人、五人ぐらい知ってる」

 よくなかった。五人は多いでしょ!?

「そんなにいるの?」

「うちの近所に一人いて、兄さんが学校に通ってた間に一人」

「ふんふん」

「で、私の送迎をしてる間に同級生が三人やられて」

「なぬ」



 妹の送迎で顔をチラ見せするだけで三人って、どういうことなのよ。あいつ、もしかして年下女性の敵じゃない!?

「聞くんじゃなかったわ……」

 私が壁にもたれかかると、シスナちゃんはニコッと笑ってくれた。

「血が繋がってなかったら、私も未練を引きずってたかも」

「ええっ!? 禁断の恋!?」

「あはは、冗談よ。兄さんたちみたいにモテる人と付き合ったら、気が休まる暇もないもん」

 それはあるかも。



 うわー、うわー。とんでもない男に惹かれてしまった。

 どうしよう、諦めるなら今が最後のチャンスって気がするわ。これ以上親しくなると、もう引き返せなくなりそう。

「そ、そうよね……私もやめといた方がいいかしら」



 乾いた笑いを浮かべると、シスナちゃんが私の手を握った。

「ダメ! 諦めないで!」

「なんで!? 話の流れ的に、そういう感じになってなかった!?」

「気が休まる暇もないから、メリアナさんみたいに芯の強い人がいいと思うの」

 強くないよう。全然強くない。むしろ弱すぎて自分でも笑っちゃうぐらい。



 だって私がサッシュに惹かれてるのは、あいつが頼もしいから。

 同年代とは思えないぐらい頼りになるのよね。おまけにどんなときでも落ち着きがあるし。物知りだし。お父様と一緒にいるときみたいな安心感がある。

 ああいう人を今までに見たことがない。



 シスナちゃんは目を細めて、とても嬉しそうな顔をした。

「メリアナさんと知り合ってから、サッシュ兄さんとってもいきいきしてるの。本人は普段通りのつもりだろうけど、嬉しそうなのがわかるもん。家でもずっと『ディプトン週報』の話ばかりしてるし」

「へ、へえ~……」

 ちょっと照れくさいけど、それは光栄なことね。うんうん。



 でもあいつの場合、私じゃなくて「ディプトン週報」に夢中なんじゃないかなあ。私を見ているときも、どこか遠くに焦点を合わせているような気がするのよね。

 まあでも、「ディプトン週報」は私そのものと言ってもいいもの。これはもう、私に夢中ってことでいいでしょ。

 ちょっと無理やりだけど、私はそれで納得したことにする。

 まあそういうことなら、あいつの意見を誌面に取り入れてあげてもいいわね。



「それでどんなことを話してるのかしら?」

「あー、うん」

 シスナちゃんは目をそらすと、ぼそぼそ答えた。

「誌面構成が素人臭いとか、取材記事の一本もないのは怠慢だとか、小説が挿絵におんぶされてて描写をさぼってるとか」

「そっかああぁ~」

 戻ってきたら殴ろう。うん。

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― 新着の感想 ―
把握してるのが5人ならまだ居そうだな、実は売店に通いつめてる人が居そうだ、、いや直接話してるなら線引かれてるのがわかる側になるのか?被害者の会がありそうだなw
サッシュみたいな視点の達観した転生者を恋に落とすには、暴力系ヒロインみたく押し引きが強くないと駄目な気がする。涼宮メリアナの憂鬱、いや、経験ゼロの使い魔?w
ライバルは多そうですね。
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