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吾輩は蜘蛛の糸失格料理店  作者: ひなた
わるい王さま(伝説) Hans Christian Andersen 矢崎源九郎訳
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わるい王さま(伝説) 4


 鳴り止まなかった悲鳴が聞こえなくなって、どうしたんだろうと心配になっていたら、どこかからコツンコツンと足音が響いてきた。遠くからとても可愛らしい声が聞こえてくる。機械のように冷たくて、感情が感じられなくて、それでも恐ろしさの中に可愛らしさが感じられてしまうような声だ。

「むかしむかし、心の高ぶった、わるい王さまがいました」

 声は聞こえるけれど、その顔は見えなかった。けれど小さくて愛らしい様子で、俺が想像しているマリアそのままとは言いがたい感じだった。ここで登場するのはマリアのはずだ。そして顔は見えないけどたぶん可愛いだろう人が来た。それならそれこそマリアのはずだ。でもナーシャがこれだけ俺の思っているまんまの美少女ってことは、マリアだってそのはずじゃないか。だったら、だったらこの悪役の美少女はだれなんだ。


 俺の夢の世界、支配人、神、ナーシャが言っていたことはどうだったのだろうか。あれはどうなったのだろうか。悲鳴のことは気になるけれど、もう聞こえなくなった以上は何も言えないし、そもそも閉じ込められている俺たちにできることはない。

「この王さまは、わしの力で、世界じゅうの国々をせいふくしてやろう、わしの名前を聞いただけで、あらゆる人間をふるえあがらせてやりたいものだ、と、こんなことばかり考えていました」

 悪役美少女の声は続く。何か昔話の読み聞かせのようなことをしているのだろうか。もしかして、ナーシャのことを小さい子どもだと思って、それで読み聞かせに来てくれたんじゃないか? そうだ、悪役だって勝手に怖がって勝手に思ってただけで、本当は優しい人なのかもしれない。だって女の子が悪役なわけないもんね。俺の物語に出てくる女の子は、みんな可愛くていい子だった。

「アンデルセンね。他の街に行かなくてよかったという気持ちもあるけれど、でも、状況としては最悪のようだわ。あなたはだれなの。どうしてこんなことをするのよ。名乗りなさいよ」

 頭を抱えているようだったナーシャだが、謎の美少女にキッと鋭い目線を向けて質問をした。そういうところでナーシャはやっぱりかっこいい。


「名乗らなければ私がだれだかもわからないのですか。わからないはずがありませんよね。もしも私がだれだかわからないというのなら、この世界は終わりです。王様が愛するお姫様を手に掛けて、その王様も無様に人々に笑われながら終わるのです。世界と一緒に終わりです」

 やっぱり悪役か。やっぱりこの美少女は悪役なのか。悪い王様だから、悪巧みをする王様だから、人々に笑われながら終わる。でもそれだったら、悪いのは王様の方だから、この美少女は悪を倒すヒロインってことになるのか。でもお姫様がいるってことは、お姫様が悪役なわけはないよね。だとしたらお姫様を愛している王様はお姫様の味方で、そうなったら悪い王様は悪くないわけだ。

「何が言いたいのよ。言いたいことがあるのならはっきり言いなさいよ」

 ナーシャの言うとおりである。何か言いたいことがあるならはっきり言えばいい。でもナーシャは心を読めるのに、そんなナーシャにも何が言いたいのかわからないのだろうか。つまりナーシャは俺のことが好きだから、俺の心だけ読めるようになったということだろうか。それともなんだか機械っぽいような声をしてるような気がするから、この謎の美少女はロボットなのかもしれない。ロボットということなら、全てに納得がいく。

「喧しいからあなたはちょっと思考を止めてちょうだいよ。うるさい」

「勝手に心を読んでるのはそっちじゃん。俺は一言も声を発してないのに」


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