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吾輩は蜘蛛の糸失格料理店  作者: ひなた
わるい王さま(伝説) Hans Christian Andersen 矢崎源九郎訳
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わるい王さま(伝説) 3


 暗い牢屋に入れられて、外の景色は何も見えない。街から出るように促したのはナーシャだけれど、本当にナーシャはこうなることを知らなかったのだろうか。正しく物語を進めるために、一度牢屋に入れられる必要があったというわけではないのだろうか。本来の物語の進みを、本当にナーシャは知らないのだろうか。

「疑わせてしまうのは私の行いのせいね」

 隣に座っているナーシャが呟いた。ナーシャのことを疑うのも最悪だし、こんな悲しいことをナーシャに言わせてしまったのも最悪だ。不安になっているのは俺だけじゃないんだし、こんなときにこんな美少女を疑うなんて俺は最低だ。


「もしかしたら、あなただからわかることもあるのかもしれないわ。ねえ、今更になってしまうけれど、もっとちゃんと話させて。……私が適当なことを言って大事なことを誤魔化しているから、そうしてあなたが私を疑うことになってしまったのでしょ。それに私の頭じゃ解決策が思い浮かばないのよ。ごめんなさい。ごめんなさい、この事態を招いたのは私なのに、あなたを危険な目に遭わせるのだけは嫌なのに、ごめんなさい」

「謝らないでよ。マリアが嫉妬しているんだとしたら、俺のせいだろ?」

「そうね、そうね、あなたのせいね。あなたの夢の世界なのに、支配人であったはずの私にも、神にも等しいあなたにもわからない問題が起こっている。これをあなたのせいと言わずに、だれにその責任を押し付けられるものかという話だものね」


 話すと言ってくれているのに、その言葉もなんだか何かを隠しているような感じがした。ナーシャのことを疑ってしまうのは、場所が暗いから不安になってしまっているせいだとは思うんだけど、でも少しでもそう感じてしまうのが嫌だった。

「いやーーーーーーーーーっ!!!!!」

 どこかから耳が壊れそうなくらいの悲鳴が聞こえてきた。やっとナーシャが話してくれようとしてくれたのだからそれが気になりはするけれど、でもそれは無視できるような悲鳴ではなかった。

「子どもだけは許してぇっ!!!!!!!! やめて!!!! やめてぇええええええっ!!!!!!!!」

 どこから声が聞こえているのかわからない。どれくらい離れた場所にいるのかがわからない。それなのにこれだけ声が聞こえてくるなんて、どれだけの大声を出しているんだろう。何が行なわれているのだろう。

「目覚める方法を私が知っていたら、あなたのことを助けられるのに。何も予測していなかった、全てが自分の思い通りになると思っていた、私の考えの浅さが全ての原因なのよね。偉そうにしていたのに、他人を馬鹿にしているばかりで、馬鹿なのは私ね」


 聞こえてくる悲鳴と悲しそうなナーシャの声。頭がおかしくなりそうだった。俺がナーシャを守らなくちゃいけないのに、俺はナーシャに守られるような主人公じゃいけないのに。今まで忘れてしまっていただけで、ナーシャは俺の妹で、ロストローズ共和国の皇女で、俺は王様で最強の勇者様なんだ。守らなくちゃいけない。俺が守らなくちゃいけない。ナーシャは俺を頼って迎えに来てくれたんだ。俺は困ったナーシャを助けるためにここに呼ばれたんだ。

 ここから逃げることはできないが、そんな特殊能力は俺にはないが、それでも俺はナーシャを助けなければならない。ナーシャには兄であり国王であり最強の勇者である俺しか、頼る相手がいないんだ。彼女が可愛すぎるから、彼女の周囲には意地悪な人とかがいっぱいいて、だから俺が助けるしかないんだ。俺が助けなくちゃいけないんだ。俺が助けたいんだ。


「いきなりかっこよくなるの、やめなさいよ。馬鹿じゃない? いえ、わかっていたことよ、あなたはどうしようもない馬鹿よね」


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