43.女性の武器
外部からの攻撃に、王宮内は蜂の巣をつついたかのような騒ぎだった。
辺境部隊の攻撃のせいで逃げ惑う人々に紛れ、出口に向かって走る。陛下の軍勢が整う前にリカルド様と合流しなくてはいけない。
国王軍の攻撃を浴びない為にもこの混乱はありがたかった。
そう思っていたのに!
「セシリオ、結界を張れ!」
アルフォンソ様の叫び声がした途端、途轍もない衝撃に襲われた。
なんとか結界が間に合ったのか、衝撃を受けつつもなんとか無事だった。私達は。
急だったこともあり、セシリオの結界は私達の周りにしか張られていなかった。
「……うそ……」
国王軍は敵味方の区別無く攻撃したのだ。
彼方此方に吹き飛ばされ、怪我を負った人達が倒れている。
「治療を!」
「待てルシア!まだ動くなっ!」
アルフォンソ様が結界の強化をしつつも上空を睨み付けた。
すると、更に第二撃が襲ってきた!
強化された結界越しでも抑えきれない程の振動が来た。立っていられず倒れそうになるのをアルフォンソ様が捕まえてくれる。
慌ててオフェリア様の方を見ると宰相閣下が支えていた。何とか大丈夫そう。でも!
爆風が収まり、辺りが見えるようになって来る。
そこには……先程まで怪我で呻いていた人々の亡骸が無残な状態で横たわっていた。
……許せない……なんの罪も無い人達に攻撃をするなんてっ!!
「セシリオ、結界はまだ持つか?」
「……次の攻撃は防げるかどうか……」
「いや、これ以上は城が崩れて奴等も危なくなる。さっき程の攻撃は出来ないはずだ」
「となると、眠らせるか毒ガスとか?」
「そうだな、人数が絞られたからな」
「毒は無いだろう。私は殺したいだろうが、母上とエスカランテは殺せない。しまったな、先程強力な結界を見せつけたのが裏目に出た」
アルフォンソ様が悔しげに言う。
そうか。私達が結界を張るのが分かっていて、邪魔な人間をまずは消したってこと?人の命を何だと思っているのよ!
吹き抜けの回廊はまるで地獄のようだ。
しかし、あちらも結界を張っていたのだろう。国王軍がいる2階から下に降りる大階段まで壊れることなく綺麗な状態を保っている。
「今の攻撃はリカルド達にも伝わっている。あと少しなんだ」
あと少し。その少しが恐ろしく遠く感じる。
「やっぱりもう普通の魔法では届かないですよね?」
「……そうだな。あちらは結界士が複数いる。君の魔法は通らないだろう」
「アルフォンソ様が強化したら?」
「……エスカランテの雷撃は知られているから対策済のはずだ。君の場合は……何をするつもりだ?私もすべてを強化出来るわけじゃない。認識出来るものしか強化出来ないぞ」
なるほど。使う魔法の原理を理解しないと強化出来ないのね。
「アルフォンソ殿下に告ぐっ!直ちに結界を解き投降せよっ!!」
国王軍からふざけた言葉が投げかけられた。
あ、なるほど。これがいいかも。
「アルフォンソ様!」
私は作戦を耳打ちした。
「君の攻撃は凄いね。私には思いつかないものばかりだ」
「だって私は普通の攻撃はできませんから。でもこれだって戦で使うことのある魔法ですよ!」
「メガホン!」
「強化!」
メガホン。それはその名の通り拡声器だ。遠くまで声を届ける魔法。アルフォンソ様に強化された声はどこまで届くだろうか。
『エルディア国王は王太子妃を犯し、自分のクローンを産ませようとする気狂いだっ!!
王妃陛下を騙し、チェスティ国の禁忌魔法を手に入れ!永遠に己が王として君臨しようとしているっ!』
「なっ!?おい!あの女を止めろっ!」
「え!?ちょっ、メガホンってどうやって止めるんだ!?」
『バレリアノで流行り病に似せた禁忌魔法を使い先代辺境伯夫妻を暗殺!グラセスとも秘密裏に繋がっており、人の命を利用した凶悪な魔法で辺境を破壊しようとしたっ!
そして今っ!王太子殿下を亡きものにしようと王宮内で攻撃を仕掛け、大回廊は国王軍の無差別攻撃で多くの命が失われたっ!このような暴挙を許していいのかっ!?』
国王軍から爆撃魔法が打ち込まれるが、オフェリア様を巻き込めない為、威力が弱い。
遅いよ。もうだいたい喋ったもの。
この大回廊での虐殺もすべてアルフォンソ様のせいにしようとしたのでしょう?そんなこと絶対にさせないわ。
女性のおしゃべりや噂話が怖いって知ってるわよね?




