25.悪魔の手(クラウディア)
どうしてこんなことになったの?
私は美しいものが好き。
花も、ドレスも、宝石も……男も。
だって私は王女よ?最高の物が与えられて然るべき立場の人間なの。
セシリオを初めて見た時、私の為の男だと思った。それ程までに美しかった。剣を握り戦う姿は神々しくすらあった。
すぐにお父様にアレが欲しいと頼んだわ。
それからは私の専属護衛騎士にして、いつでも側に置いた。
彼だって私にいつも優しく、美しい微笑みを送っていた。想い合っていたのよ。それなのに!
「……結婚?そんな、嫌ですっ!それも他国に行くなんて!
……お父様は私が嫌いなの?そんな遠くに追いやるなんて酷いわ!それに婿にするならセシリオがいいの!あんなに美しい男が他にいるはずないわ!」
泣いて泣いて泣いて……でも、いつもは私に甘いお父様なのに、セシリオとの結婚をお許しにはならなかった。
「仕方がない。1年だけあの男を護衛騎士として連れて行け。その間に気持ちを落ち着けなさい」
そうして、私の輿入れが決まった。
一年だけ。気持ちを落ち着けるって何?……気持ちを決めるってこと?それならもう決まっているのに。
ああ、セシリオの気持ちね?
そうよ。付き合っている女がいるのだわ。
私を抱けないから仕方がないと思っていたけれど、もう切り離さないといけないわね。
ここでは女のことを知ってる者が多くて駄目だわ。それならエルディアに連れて行ってから捨てたらいいんじゃない?
セシリオからも彼女を連れて行きたいと話があった。よかった。私達の気持ちは同じね。
エルディアに向かい、初めて結婚相手の顔を見た。あら、それなりの顔じゃない。でも、やはりセシリオの方が綺麗だわ。
まずはあの女を捨てなきゃ。適当に男に犯させてから捨てようと思っていたのに、いつの間にか辺境に旅立っていた。
少し面白くなかったけど、まあいいわ。二度と戻って来ないでね。さよなら!
不貞で裁かれたくはないから、仕方なく彼の体に子種が出来ない魔法を刻ませる。一人世継ぎを産めば解除してもいいかしら。でも、まるで引き裂かれる恋人達って感じで逆にいいわ。
アルフォンソ様は私の気持ちを待つと言ってくれた。
セシリオ以外に抱かれないのは嬉しいけど、それではいつまでもセシリオと最後まで出来ないのよね。
それでも、秘密の恋を楽しんでいたのに……
魔女が私のセシリオを壊した!
あんなに美しかったのに!
侍女たちに化粧を施させてみてもどうにもならなかった。
それどころか、王妃教育が済んでいないことがバレて、朝からずっと勉強勉強勉強!
頭がおかしくなる!!
でも、あの女が恐ろしいことを言っていた。
このままでは私は消されてしまうの?
勉強は分からなくてイライラするし、イラつきと寝不足で肌が荒れるし、セシリオが目に入ると吐き気がするし、もうアルフォンソでいいかと思えば辺境に行ってしまったし!!
何一つ上手くいかない。すべては魔女のせい。
美しい私を妬んで呪いをかけたのだわ。
「誰か私を助けなさい!」
部屋の中の物を力いっぱい投げつける。
もう、すべてがイヤ!!
「おやおや、美しい姫がそのように嘆き悲しんでどうしたんだ?」
「こ、国王陛下……申し訳ありません、あの」
なぜ私の部屋に陛下が?
……この男は怖い。お父様とは違うもの。笑っているのに、その目は私を見透かしている気がする。私が愚かな女だと?
……いいえ、そんなはずがない。若く美しい私を心配して来て下さっただけよ。
「ああ、可哀想だったね」
久しぶりにかけられた優しい言葉。
ほら!私の前には国王すら平伏すわ!
「あ……わ、わたくし、もうつらくて……」
「ああ、泣いては駄目だよ。だがそなたは泣き濡れていても美しいな。さあ、おいで」
そうよ、私は美しい。そういう言葉を待っていたのよ!私は未来の王妃よ。さあ、早く私を救って!あの憎き魔女を殺して!!
私は、その手が悪魔の手だと、気付くことができなかった……




