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42罪? いいえ、大罪です!

 ――夕方。俊介は、リビングで正座させられていた。


 その周りを、和姫、レイラ、美鈴、ましろが取り囲んでいた。

 俊介は何も悪いことはしていない。むしろ、社会秩序はよく守っているほうだ。それなのに、3人の乙女は彼を憤怒の形相で見下ろしている。


「お兄ちゃん、ひどいよ。あたし達を裏切るなんて」


 まず、美鈴が口を開いた。


「兄さん、何か言い残すことはある? なければ、煉獄の彼方へと消滅してもらうけど」


 続いてレイラが口を挟んだ。


「まあまあ、2人とも。落ち着きなさいな。全ては長女であるわたくしの失態ですわ。よって、わたくしが責任を持ってお兄様を調教いたしますわ」


 最後に、和姫が物騒な言葉で結論づけた。


 そう。

 なぜ俊介が正座をさせられているのか。

 それは、ましろとお風呂に入っていたことが3人にバレたからである。

 ちなみにバレた原因は、うっかりましろが口を滑らせたことにあるが。

 ともかく俊介は3人に囲まれ、その俊介を庇う者が1人。


「みんなやめて! にーにーは、なにもわるくないよ!」


 そう、ましろのみだ。


「でも、ましろちゃんと一緒にお風呂入るなんて、ちょっとねー」


 必死に手を振り回して俊介を擁護するましろの言葉を、美鈴は否定した。


「ましろさんは、まだ小学1年生ですよ。お風呂ぐらい一緒に入っても、特に問題ないと思いますが」


 俊介がそう言うと、美鈴は眉をひそめながら、


「でも、ましろちゃんだって立派な女の子なんだから、やっぱりお兄ちゃんと一緒にお風呂はまずいよ。目隠ししながら入るならオッケーだけど」


「なんで、目隠ししながらお風呂に入らないといけないんですか……」


 美鈴の意味不明な理屈に、俊介はため息をついた。

 しかしながら、俊介にも反省すべき点はあった。

 何しろ、ましろとお風呂に入ったことは事実なのだから。


 しかも、素手でましろのお尻や、胸を撫で回し……ましろにさせられたことではあるが。確かに、もっと毅然として断るべきだったのだ。まあ、ましろに泣きつかれたら、どうせその決意も崩れるだろうが。


 そう考える俊介の目の前に、和姫がぐいっと顔を寄せる。


「お兄様は罪、いいえ、大罪を犯しました。よって、償いを要求いたします」


「ましろさんとお風呂に入ることは、そこまで罪が重いんですか……」


「そうではありません。わたくしが憤慨しているのは、『なぜましろは兄様と一緒にお風呂に入れるのに、わたくしと一緒にはお風呂に入ってくださらないのか?』この1点のみですわ!」


「そんな理由ですか!?」


 ただの利己心を挟んでくる和姫に、呆れて俊介は叫んだ。

 正座させられているのがバカらしくなってきたので、脚を崩す。


「この際なのでハッキリさせておきますが。ましろさんはまだ幼いから仕方ないですけど、あなた達はもう中学生です。なので、一緒にお風呂へは入りません」


「何を言うのよ、兄さんたら」


 冷静な口調で、レイラが口を開いた。

 しかし左目の真紅の瞳には、嫉妬の炎が宿っていた。


「あなた達、じゃなくて、わたし以外は、でしょ? わたしは、兄さんと一緒にお風呂に入る権利があるのだから」


「け、権利、ですか?」


 唐突な言葉に、思わず聞き返してしまう俊介。


「そうよ。兄さんにとってヒメ達は異種族だけど、わたしと兄さんは前世から脈々と受け継がれる闇の末裔なのよ? 兄さんと魔力を共有できる存在は、わたしだけだわ」


「聞いて損しました!」


 俊介は頭を抱えてうなだれた。

 ……しかし。

 今さらながら、なぜうちの妹達は変態しかいないのか? 

 誰1人、まともな倫理観を持ち合わせていないという……。

 いつの間にか、その考えが自分でも当たり前になってしまいそうで、俊介にはそれが恐ろしかった。


「えーっと。それで? 美鈴さんはどうしたいんですか?」


 とりあえず、俊介は美鈴に話を振ってみた。


「あたしも、お兄ちゃんと一緒にお風呂入りたぁ~い! 順番から言っても、ましろちゃんの次はあたしだよね!? あたしも、お兄ちゃんといっぱい裸のお付き合いしたいよぉ!」


「……はい、そうですか」


 美鈴は美鈴で、欲望に正直だった。

 この辺はもう、突っ込む気も起きない。


「あたしをお兄ちゃんのお嫁さんにしてくれるって、小さい頃約束したのにっ! YA・KU・SO・KUしたのにっ! どうしてお兄ちゃんは浮気ばっかりするの!? ぜったい、ぜーーーったい、許さないから!」


 拳を握り締めながら力説する美鈴だが、内容はどうしようもなく稚拙だった。そもそも結婚の約束なら、5姉妹全員と幼い頃にさせられているので、美鈴1人ではないのだが。

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