表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/218

20照れてる? いいえ、具合が悪いんです!

 『みんな~。今日からみんなのお兄ちゃんになる、俊介くんよ♪』


 義母である井川麗子は、妹達――和姫、レイラ、美鈴に俊介を紹介した。

 ニコニコと、俊介の肩に手を置きながら、妹達を眺めて。

 妹達もまた、俊介に目が釘付けになっていた。


 麗子は、娘たちに向かって言った。


『初めましてだから、ちょっと戸惑っちゃうかもしれないわね~。緋雨ちゃんは出かけてていないけど、緊張をほぐすために、お互いに自己紹介しちゃおうか』


 麗子の一言に、妹達はこわばりの表情を浮かべた。

 しかし、それもすぐのことで。

 艶めかしい黒髪を腰元まで垂らした、日本人形のような美幼女が、俊介に向かってペコリと頭を下げた。


 8歳の頃の和姫だ。


『俊介おにいしゃま。わたくし、井川和姫ともうしますわ。よろしくおねがいしますの』


 和姫の挨拶が終わると、俊介も頭を下げる。


『和姫さん……ですね。よろしくおねがいします』


『う~ん、ちょっとカタいかな~? おチビちゃんのくせに、2人とも敬語なんて使っちゃってさ~。まあ、和姫ちゃんはいいとしても、俊ちゃんはタメ口でいいのよ? これからは、この家の長男なんだから』


 麗子は、俊介の頭を撫でながらそう言った。

 この頃から、俊介は家族に対しても敬語を使っていたのだ。

 そしてその癖は、今でも直っていない。


 ――自分は、この家の人たちとは赤の他人なのだから。

 

 俊介は、物心つく前に両親を事故で亡くしていた。

 親戚も早くに失くしている俊介に待っていたのは、孤児院生活だった。

 そこからはずっと、外の世界など知らずに生きていた。

 

 ――だから、自分とこの人たちとは全く違う生き物なのだ、と。


 次に自己紹介をしにきたのは、6歳の頃の美鈴だった。

 オレンジがかったブラウンの髪は、今よりもさらにボーイッシュに短く切り揃えられてて。

 まんまるとした瞳はキラキラしていて、汚れなど何も知らないようだった。

 そんな美鈴は、とことこと俊介の前まで歩み出て、


『おにーちゃん、はじめまして! 井川美鈴、6さいです!』


『美鈴さん、初めまして。よろしくおねがいします』


『あたち、ずっとおにーちゃんほしかったの! いっぱいいっぱい遊んでね! かけっことか、鬼ごっことか! あと、えーと、えーと……』


『す、すみません。あまり、体を使った遊びは……』


『えー、なんでー? あたち、おにーちゃんといっぱい遊びたいのにー』


『ま、まあ、美鈴さんがそうしたいなら付き合いますよ』


『ほんと!? やったー、おにーちゃんだいちゅき!』


 喜色満面、俊介に抱きつく美鈴であった。

 俊介が1番早く打ち解けた妹、それは彼女だったのである。


 そして、最後に残ったのはレイラだが、


『あ……う……』


 彼女は母親の影に隠れて怯えるだけだった。蒼い瞳に涙を溜めて。肩まで垂れ下がった金髪のブロンドヘアーを、ブルブル震わせて。粉雪のような白い頬を、赤く染めて。


 和姫が日本人形のようにお淑やかならば、彼女はフランス人形のように優雅な見た目だった。

 麗子は、オドオドするレイラに笑いかけながら、こう言った。


『どうしたの? レイラちゃん。あ、わかった! こんな素敵な男の子がお兄ちゃんになるもんだから、緊張しちゃってるのね!』


 麗子はレイラの顔を覗き込み、茶化すように言うが、レイラは黙ったままだった。


『あらら、きっと恥ずかしがってるのね。でも言ってみてごらんない。お兄ちゃんって』


『……………』


 ここまできて、俊介はあることに気づいた。


『あの、お義母さん』


『なあに、俊ちゃん?』


 俊介は、義母におそるおそる意見を述べた。


『その子……もしかして具合が悪いんじゃないでしょうか? 照れてるにしては、顔が赤すぎますし。発熱症状を起こしてる可能性があります。体が震えているのも、体温が上がっているからじゃないでしょうか。だから、熱を計ってあげた方がいいと思います』


 俊介の言うことは、当たっていた。

 なぜなら俊介の発言直後に、レイラはぐったりと倒れたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ