18沈黙? いいえ、考え事です!
「ねえ兄さん。何か話してよ」
沈黙を続ける俊介に、レイラは不安そうな声で言った。
「黙るのはやめて。何か話して」
「いや、話すって言われても……。何を話せばいいんですか?」
「なんでもいいよ。昨日見たテレビの話とか、今日食べたものの話とか。学校の授業の話とか。今思ってることとか。無言になると、不安になるの。何でもいいから、兄さんの声をわたしに聞かせて?」
レイラはすがるように、上目遣いで懇願してきた。
俊介は、口元をフッと緩めて、
「本当に、何でもいいんですね?」
レイラは、「うん」と頷いた。
すると俊介は、レイラの頭を撫でながら、
「僕は今、昔のことを思い出していたんです」
と言った。レイラのサラサラな、ブロンドの前髪をかきわけながら。
しばらく気持ちよさそうに目を細めていたレイラは、「ふえ……昔?」と、俊介の言葉を聞き返した。
「ええ、昔です。覚えてますか? 7年前、僕がこの家の養子になった時です。ましろさんは、まだ産まれてませんね。初めて皆さんと顔を合わせた時、和姫さんや美鈴さんとはすぐに打ち解けたんですけど、レイラさんとは中々上手くいきませんでした。それに病弱で、たびたび今みたいに高熱を出して寝込んでいました……と、昔話は退屈でしょうか? 別の話にしましょうか?」
「ううん。退屈なんてことないよ」
レイラは微笑みながら、首を横に振った。
「わたし、兄さんの話なら何でも聞きたい」
「そうですか。分かりました。しばらくお耳を拝借しますよ」
そう言いながら、俊介は目を細めて上を向いた。
思い出しているのだ。7年前のことを。
自分自身、あの頃に立ち返っているのだ。
「どこから話しましょうかね」
視線をレイラに戻し、俊介は言った。
そして、ちょっと照れくさそうに頬を指でかきながら、
「それじゃあ、あの話でもしましょうか。僕が初めてこの家に来た時のことでも」




