17白湯? いいえ、はちみつ湯です!
精のつくモノでも作ってきますと、俊介はリビングまで降りていた。
そして用意が出来ると、再びレイラの部屋まで戻ってきた。レイラは俊介が席を外したことで寂しがっていたが、俊介が手に持っていたトレーを見ると、表情を変えた。
「……兄さん、それ、なに?」
ぼうっと湯気の立つカップを指差すと、レイラは尋ねた。
「白湯?」
「まあ、そんなようなものです。ちょっと違いますけど」
そう答えると、俊介はレイラの前にカップを置いた。
「これ、はちみつ湯って言うんですよ。すりおろした生姜の汁と、はちみつをお湯に加えた飲み物です」
「……はちみつ湯?」
首を傾げながら聞き返すレイラ。
さらにカップを持ち、くんくんと匂いをかぐと、
「あ、いい匂いがする。これ、体に良いの?」
「風邪の時には、はちみつ湯がいいそうですよ。体が温まりますから。内臓の機能も活発になりますし、のどの痛みを和らげる効果もあります。なにより、殺菌効果があるので免疫力をサポートしてくれるんですよ」
「へえ、そうなんだ」
そう言うと、レイラははちみつ湯をコクコクと飲み始めた。
「あったかい……」
「温かさだけじゃないですよ。代謝もよくなりますし、体内の毒素を洗い流してくれます。お肌にもとってもいいんですよ」
「……ありがとう、兄さん。おいしいよ」
感謝を述べるレイラの表情は、いつもより幼く見えた。
「それ飲み終えたら、和姫さんがおかゆを作って持ってきてくれるそうですから。早く良くなってくださいね」
微笑ましいレイラの姿に、俊介は頬を緩ませながら言った。
そして、ふーっ、ふーっ、と熱を冷ましながら、レイラがはちみつ湯を、ゴクゴクと飲み干したところを見計らって俊介は、
「あとは、水で濡らしたタオルで少し体を冷やしましょうか」
「うん。お願い、兄さん」
素直にそう言うと、レイラは布団の上に横たわった。
普段の中2丸出しな姿より、こっちの方が可愛らしいのに……。
俊介はそう思いつつも、持ってきた洗面器の水につけ、タオルを濡らした。
そしてそれを、レイラの額にそっと乗せる。
「あっ♡ あっ♡ 兄さん、それ気持ちいい!」
「気持ちいいのは分かりますけど、誤解を招く声は出さないように」
甲高いあえぎ声を上げるレイラを俊介はたしなめた。
「だってぇ。気持ちよかったんだから、しょうがないじゃない」
レイラはむくれた顔で、
「それに、何だか嬉しかったから。あの瀬戸内恋華と付き合い始めてから、兄さん、わたしには全然かまってくれなくて。だから、すごく寂しかったんだよ?」
「……それは……」
偽装なんですよ、と言いかけて、俊介は口をつぐんだ。
そのことは、絶対秘密にしておかなければならないことだから。
なぜなら、それがレイラや、他の妹達のためなのだ。
義理とはいえ兄に対し水着姿で迫ってきたり、恥ずかしげもなく「犯して!」などと言える妹達に、マトモな貰い手などつくはずがない。
……だから、恋華との偽装恋人だけは知られるわけにはいかないのだ。




