15暗黒の王? いいえ、普通の人間です!
それは、今から5日前。
俊介は、風邪で倒れたレイラを看病していた。
「熱は38度5分。咳も出てますし、扁桃腺も腫れています。間違いなく風邪でしょうね。まあ、暖かくして眠っていれば大丈夫でしょう」
俊介がそう言うと、自室の布団の上で苦しげに呻いていたレイラは「フッ」と自重気味に笑った。
「魔族の子孫たるわたしが病に冒されるだなんて。皮肉なものね」
「そうですね。ていうか、この間は神界の使徒って言ってませんでしたか?」
「そっ、それは……。魔族の子孫であり、神界の使徒でもあるのよ。光と闇。2つの心を併せ持つ混沌の女神。それがわたしよ」
「ほーう。それはそれは」
俊介は苦し紛れの彼女の言い訳を、軽く流した。
井川レイラ。
北欧系の見た目をした美少女で、普段は金髪のサイドテールなのだが、病に付しているので髪は解いている。氷のように涼やかな切れ長の瞳には、いつもならば右目には大きな眼帯、左目には真っ赤なカラーコンタクトをしているのだが、それも外させている。当然ながら右腕に巻かれた包帯もだ。
これらのことに意味はない。ただレイラが、アニメの影響で「カッコいいから」という理由だけでやっていることだ。
このようにレイラは、大変整った美しい容姿をしているのだが、かなり残念な思考をしている。
良く言えば「感受性豊かな子」。悪く言えば、「ただの中2病」だ。
「まあ、どっちでもいいんですけど。大人しくしてないと、治るものも治らないですよ」
俊介は呆れたように言いながらも、乱れた布団を駆け直してあげた。
するとレイラは顔を赤くしながら、
「兄さん。わたしを誰だと思ってるの? 前世は暗黒の王。この体は冥府の魔力によって作られたものなのよ。つまり、わたしは不老不死だから死ぬことはないわ」
「へえ、不老不死なんですか。じゃあ、布団なんて被らなくても大丈夫ですね」
「ふえ? 兄さん?」
「こんなものは、取ってしまいましょうか」
「へくちょん!」
被せてあげた布団を俊介が剥ぎ取ると、レイラは可愛らしいくしゃみをした。
ちなみに、レイラが着ているパジャマは水玉模様のパジャマ。
シルク生地の暖かな寝巻きを、レイラのスタイルの良いほっそりした肢体を包んでいる。こんな格好で魔族も暗黒の王もないよなあと思いつつ、俊介は再度布団をかけ直してあげた。




