7険悪? いいえ、良好です!
「……それにしても、俊介君が奏ちゃんと知り合いになるなんてねぇ。さすがの恋華さんも、ちょっとビックリだよ」
恋華は水を一口飲むと、俊介に向かって言った。
「奏ちゃん? 恋華さんの方こそ、彼女と知り合いだったんですか?」
「知り合いじゃないけど、知ってることは知ってる」
俊介の問いかけに、恋華はあいまいな返事をした。
「要するに、奏ちゃんって有名人なんだよね。ほら、彼女かなり可愛いじゃない? それに、性格もいいし。だから、女子の人気投票1年生部門で、1位に輝いてるんだよね。ちなみに、2年生部門の1位は私。どやさ!」
「なるほど」
さり気なく自慢を挟んでくる恋華に、つい苦笑してしまう。
淡白な俊介の反応に、恋華は頬をリスのように膨らませて、
「分かってる? ミス千本桜だよ? 学園のアイドルを、俊介君は手篭めにしたんだよ? エロゲーなら、○○○○な展開しかないじゃん」
「手篭めって言葉はおかしいと思いますけど。それに、学園のアイドルだろうが学園の嫌われ者だろうが、付き合うこととは別です」
「それはそうだけど……」
今度は、膨らませた頬をペコリとへこませる恋華だった。
「でもさ、奏ちゃんって凄く可愛いと思わない?」
「思いますよ。でも、恋華さんだって凄く美人さんじゃないですか」
「……ふえっ?」
赤く染まった顔を上げて食いつく恋華。俊介は慌てて、
「ち、違いますよ。僕がそう思ってるとかじゃなくて……。あくまで一般的な話ですよ」
と、顔を赤くしながら、明らかな照れ隠しをしてしまった。
お互いに赤面しながら俯いていたが、2人は同時に顔を上げて、
「私ったら、ヤキモチ妬いちゃった。ごめんね?」
「僕のほうこそ。東条さんのこと、黙っていてすみませんでした」
同時に。
同時に、2人は謝った。
そして……。
クスリと、お互いの顔を見つめあうと、2人は笑い合った。
「あ~あ。気を張って損しちゃった」
ひとしきり笑い終えたあと、明るく恋華は言った。
「じゃあ、そろそろ聞かせてもらおうか」
「聞かせる? 何をですか?」
「妹ウオッチだよ! まさかと思うけど、忘れてたんじゃないでしょうね?」
恋華に指摘されると、俊介はばつが悪そうに、
「いえ、してきましたよ。してきましたけど……」
と、不明瞭に呟いた。
再び顔を赤くして。今日は2人とも、やたらと顔を赤くする日である。
「え、なに? もしかして、言えないようなことでもあったの!?」
俊介の逡巡をそう解釈した恋華は、机をバーンと叩きながら叫んだ。
俊介は両手をブンブン振って、「違うんですよ」と否定する。
「まあ、違うこともないんですが……。いえ、そうじゃなくて。人に言えないようなことは何もなかったですよ? でも……。と、とにかく! 順を追って説明します!」
「うん、分かったよ」
俊介が狼狽しながら言うと、逆に恋華は冷静に頷いた。
「まずは話を聞いて、そこから去勢するかどうか考えよう」
「だから去勢は止めてください!」
「うそうそ。怒らないから、とりあえず話を聞かせてよ」
「……そうですね」
ついに、この時が来てしまったか。
俊介は心の中で嘆息した。この1週間というもの、妹に振り回されたり、エロティックな展開になったりもしたのだ。そんな話を、喫茶店なんかで話さなければならないのか。
しかし、約束は約束だ。
だから――
「分かりました。お話しましょう。まずは、和姫さんについてです」
と、俊介は静かに語り始めた。




