5順当? いいえ、意外な再会です!
そして、約束の一週間が経った。
この一週間というもの、俊介は出来る限り妹達と会話をし、コミュニケーションをとることにしていた。それは、話すのもはばかれるほど恥ずかしい内容でもあるのだが。約束は約束だ。
俊介と恋華は学校帰りに喫茶店、「ブルーアップル」に立ち寄った。
「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」
「2名で」
「それでは、お席の方ご案内しますね~」
いつものウエイトレス――名を明美というらしい――が、俊介と恋華を1番隅にある壁際の座席に案内した。
俊介が座ると、恋華も向かいの席に腰を下ろした。
最近の放課後はこれがすっかり日課となり、俊介も慣れたものではあるが、今日は気が重かった。
ハッキリ言うと、今すぐにでも帰りたい気分だった。
しかし、その思いは恋華の前では儚い望みであることは、俊介自身1番よく分かっていることである。
店内は相変わらず閑散としていた。俊介達以外には、サラリーマン風の男性客が1人いるのみである。こんなことで経営は大丈夫かと不安になるが、内緒話をしたい時には、この衰退具合に感謝したい気持ちになってくる。
席につくと、恋華はメニューを広げた。
「俊介君、何食べようか」
「僕はペペロンチーノにしようと思います。恋華さんは?」
メニューを見ずに、俊介はそう恋華に尋ねた。
「う~ん。どうしようかなあ。いつものチョコレートパフェでもいいけど、フルーツパフェも捨てがたいんだよねえ。変り種としては、野菜パフェなんてのもあるでしょお? それからそれから……」
「思うんですけど、恋華さん……」
呆れ顔で俊介がそう言うと、メニューとにらめっこをしていた恋華が「ふえ?」と顔を上げた。
「最近、糖分の取りすぎじゃないですか? 流石に太りますよ?」
「いーもん。ちゃんとジョギングして体動かしてるから」
「ジョギングですか」
「ジョギング」
「毎日ですか?」
「んーん。月に1回」
「たったそれだけですか……」
俊介は、思わずズッコケそうになった。
何と言うか、いかにも恋華らしい。
ジョギングは毎日やるより、一定の間隔を空けた方が効果的というが。ここまで間隔を広げたら、もはや無意味ではとすら思えてくる。
俊介の考えていることを察したのか、恋華は上目遣いでおずおずと言った。
「ね、ねえ、俊介君。1つ聞いていい?」
「なんですか?」
「もしも、仮に、例えばの話だけどね? 付き合ってる彼女の体重が、ほんの少し、ほ~~んの、すこ~~~~しだけ増えていたとしたら、やっぱりイヤ?」
例えばにしては、やけに具体的な話だ。
「……そうですねえ」
俊介は、一瞬思案するそぶりを見せたあと、
「別にイヤじゃないですよ」
「ほんと?」
「はい。人を好きになるって、そういうことじゃないと思うんですよね。人間なら歳を取れば老けもしますし、太りもします――誰だってそうです。程度の問題もありますが、僕はそんなことでいちいち人を嫌いになったりしません」
「……俊介君」
「何だか、恥ずかしいことを言ってしまいましたね」
涙目で感動する恋華を前に、俊介は照れくさそうに目を背けた。
お互い照れてしまったのか気まずい雰囲気が流れたので、早々にウエイトレスを呼ぶことにした。
「あーよかった。これで、思う存分パフェが食べられるぞー」
「……僕、さっき言いましたよね? 程度の問題だと。あまり太りすぎるようなら、強制的にダイエットさせます」
「うっ……。だ、大丈夫だもん、まだ」
などという会話を交わしながら呼び鈴を鳴らし、2人はウエイトレスが来るのを待った。
「お待たせしましたですう~~」
と、妙に間延びした声が聞こえてきた。
俊介はこの時、完全に油断していた。
だからであろうか。
目の前に現れたウエイトレスの顔を見て、驚きを隠せなかった。
「お客様~、ご注文はお決ま、り……?」
ウエイトレスも、俊介の顔を見て一瞬で気づいたらしい。
その意外すぎる再会の場で、俊介はその少女の名を呼んだ。
「何、してるんですか……? 東条奏さん……」




