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3ありません? いいえ、あります!

 そして、始まった少女の自転車の鍵探し。


「――をする前に、いくつか聞きたいことがあります」


「な、なんでしょうか、先輩」


 少女は、おどおどと聞き返した。

 決して声を荒げるようなことはせず、むしろ優しく尋ねているつもりなのだが、何ゆえこの少女はこんなに怯えているのだろうか。

 俊介は疑問に思えてならなかった。


 上級生に話しかけられて緊張するのは分かるが、この少女の怯え方は尋常ではない。ハキハキした恋華の話し方に慣れてしまったから、そう感じるのだろうか。


「そんなに緊張しなくていいですよ。僕が聞きたかったのはまず、鍵の種類です。リング型なのか、前鍵型なのか、ワイヤー型なのか」


「よ、よく分からないです……す、すみませんです!」

 

 少女はツインテールの髪をブンブン振り回すようにして頭を下げた。長い2本の髪が危うく当たりそうになり、俊介は思わず後じさる。しかし何故そんなに謝るのだろうか。ただ鍵の種類を聞いただけなのに。


「えっと、そんな大したことじゃないんですけど。説明しますね。輪っか状の錠になってるのが『リング型』。前輪部分に取り付ける簡易的な『前鍵型』。金属の平たい板をつなぎ合わせた『ワイヤー型』と。今は大体こういうのが主流だと思うんですけど。あなたの使ってる自転車の鍵は、どの種類ですか?」


 とにかく少女を怯えさせないように、俊介はゆっくりと、そして丁寧に尋ねた。

 少女は、口元に手を当てながら震える声で、


「…………えっと、ワイヤー型……だと思うです」


「なるほど」


 少女のたっぷり間を空けた返事を辛抱強く待ちながら、俊介は返事をした。

 なるほど、ワイヤー型か。

 それなら、最悪ニッパーやペンチの類で切断できるが。それでは時間がかかりすぎる。俊介は質問を変えた。


「では、次の質問ですが……」


「は、はいです!」


「自転車に鍵をかけたあと、いつもどこにしまっていますか? ポケット? それとも鞄?」


「あ、ポ、ポケットに入れてますです」


 多少は俊介と会話することに慣れてきたのか、少女は先ほどより幾分スムーズに答えた。


「……そうですか」


 その答えを聞いた途端に、俊介の目が鋭くなった。

 そして、

 

「これが最後の質問なんですけど」


「は、はいです! 何でも答えるです!」


「では」


 と、俊介は一旦言葉を区切り、


「鍵には、キーホルダーやストラップの類はついていましたか? つけてませんでしたか?」


「……いえ、何もつけてなかったです……。すみません、私、目印になるようなものは何も……」


「いえ、いいんですよ」


 そう言う俊介の顔には、笑みが浮かんでいた。

 そして、少女の自転車の前まで歩く。そして、サイクルスタンドに停まっていた自転車を持ち上げると、自転車置き場の端に置いた。


「……」


 少女は、その様子を固唾を呑んで見守っていた。

 俊介は、少女の自転車が停まっていたサイクルスタンドの前にかがみこんだ。

 そして、金具の下に手を入れること数十秒。

 俊介の手に握られていたのは。


「ほら、ありましたよ。これ、あなたの鍵ですよね?」

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