44逃げる? いいえ、逃げません!
そして放課後。俊介は1人で昇降口まで降りてきていた。
なぜ1人なのかというと、恋華は女友達から女子会に誘われていたからだ。
恋華は断ったらしいのだが……。
どうしても恋華の「コイバナ」を聞きたい女子が多いらしく、頼み込まれて渋々Okしたとのことだ。
そんなわけで、俊介が1人で校門をくぐった時。
その男はいた。
昨夜も会った金髪のチャラ男だ。
「よお。俊介く~~ん」
「またあなたですか……」
俊介はもう毛嫌いする気持ちを隠すこともなく、眉をひそめため息をついた。
「そう嫌そうな顔すんなよ。傷つくじゃん。俺はアンタと会話すんの楽しいぜ」
「……」
俊介は無言で男の横を通り過ぎようとしたが、
「ちょ、ちょっと待てよ! アンタ意外と短気な男だな!」
「……僕はこれから帰って、家で勉強しなければなりません。あなたと話してる時間は1秒たりともありません」
俊介は男に肩をつかまれたが、怯むことなく気丈に言い返した。今日のチャラ男は灰色のスウェットパンツに黒のパーカーというラフな服装だった。首元にはまた星型のペンダントが下がっている。この時間にここに私服でいるということは、この男は千本桜高校の学生ではないらしい。
「……!」
ふと俊介が周りを見渡すと、他の生徒からかなり注目を浴びていることが分かった。今の自分は、恋華の彼氏ということで有名人になったということを、俊介はすっかり忘れていた。
――おい。あれ、瀬戸内さんと付き合ってるって噂の井川だろ?
――なになに? 何か不良と絡んでるよ。
――あいつ、不良とも付き合いあんの? だとしたら、瀬戸内さんも……。
気づくと周りには人だかりが出来て、皆口々に勝手な憶測を言い合っている。これはまずい。ただでさえ目立っているのに、その上悪評まで広まっては。自分はともかく恋華に迷惑がかかる。俊介がそう考えていた時――
「なあ。場所、変えね? ここじゃ迷惑っしょ?」
俊介の考えを見透かしたように、男は俊介の耳元でボソリと呟いた。見透かした、というより、最初からそうしようとしてたらしい。普通に会話しても俊介には避けられるが、こうまで目立ってしまった以上は場所を変えて話し合うしかない。男はチャラついた見た目よりもずっとしたたかなようだった。
「……」
俊介はチャラ男の提案を深く考えてみた。
結果、この問題は放置するよりも、遺恨を残さず話し合っておくことがベストだという結論に達する。俊介は意を決したように男に向き直ると、こう言った。
「いいですよ。お話を聞きましょうか」




