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28勝ち? いいえ、負けです!

「レイラちゃん、頑張ってね!」


「あれほど啖呵を切ったのですから、負けることなど許しませんわ。死ぬ気で勝利なさいな」


「ふええ、レイラねーねー。まけないで……」


「大丈夫よ! わたしは未来を幻視することができるの。それによると、勝利の女神はわたしに微笑むって決まってるんだから!」


 と、美鈴、和姫、ましろの激励に対して。

 レイラは勝気に答える。応援されたことにより動揺が減って、平静さを少しは取り戻したようだ。しかし、ここで負ければ負け越し。その後は美鈴とましろで2連勝しないといけないのだ。プレッシャーがかかる事態に変わりはなかった。


「ふふ。大丈夫かなあ、そんな大見得切って。負けた時みじめになるのは、レイラちゃんの方だよ?」


「ふん、大丈夫よ。わたしは守護霊獣の加護を受けているんだから。どんと来なさい!」


 クイズ対決もいよいよ佳境。気合も充実してくる2人だった。

 俊介は、冷静に戦局を分析していた。

 その場の状況への対応力を持っているのは、恋華の方だった。逆にレイラは、精神的にやや不安定なものの、知識でカバーしている形だ。


 恋華は果たして、どのようにレイラから勝利を掴むつもりなのだろうか。


「さあ! グズグズしないで! さっさと問題を出してちょうだい!」


「じゃあいくよ? 1431年5月30日に、ジャンヌが火刑に処された場所は~~?」


「ふっ。そんなの簡単よ。ルーアンのヴィエ・マルシェ広場ね」


「……ルーアンのヴィエ・マルシェ広場ですが、立会人となった2人の修道士の名前はなんでしょう!」


「えっ!?」


 レイラが自信まんまんに回答した直後に、恋華は問題を切り替えた(・・・・・)。当然、正解したものと思ったレイラは一瞬硬直する。そして、しばらく固まってからようやく騙されたと気づいたのか、


「ちょ、ちょっと! それズルじゃない!」


「どうして? レイラちゃん。私はまだ最後まで言い切ってなかったんだよ? それを勘違いして勝手に答えたのはレイラちゃんじゃない。それに、私はこれまで問題を出す時は最後に『なんでしょう?』と言ってたよ? それを聞かずに先走りしたレイラちゃんに、私は非があると思うな~」


「う、うう……」


「それより、早く答えないとヤバいよ? もうストップウオッチ押したからね?」


「ひぇっ!? ちょ、ちょっと!」


 レイラは慌てて頭を抑えて考える。

 すっかり動揺しきっている。そして、恋華は追い討ちをかけるように、


「40秒……39秒……38秒……」


 カウントダウンを秒刻みで行い、レイラに重圧をかけにきていた。


「~~~~!」


 ゴシゴシ!


 綺麗な金髪を乱暴にかきむしりながら、レイラは懸命に答えようとしていた。

 ちなみに答えは、マルタン・ラドヴニューとイザンヴァル・ド・ラ・ピエール。平常時ならスラスラと答えたレイラだったろうが。こうも揺さぶりをかけられる中では、咄嗟に頭は回るものではない。そして、最終的にレイラは、


「ぶー。時間切れ~。はい、レイラちゃんの負けね!」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 瀬戸内恋華!」


「え? なに? 敗者のレイラちゃん」


「う、うるさいわね! こんなの無効よ!」


 すっかり中2キャラを捨てて、素の状態に戻ったレイラが、涙目で恋華を睨みつけながら、


「卑怯よ! 引っ掛けなんかして! あんな妙に間を溜めた問題の出し方なんて、さっきまではしてなかったじゃない! あんたはわたしをハメたんだわ!」


「え~違うよ~。そもそも、問題の出し方に定義なんかつけてなかったでしょ?」


「な、なによ……そ、そんな言い訳……」


「大体さあ、そんなこと言うならレイラちゃんだってズルくない? 私が答える順番になって1分以内とか制限つけてさあ。でも、私は何も言わなかったよね? なら、レイラちゃんだけが私に文句を言うのは、筋違いってものだよ?」


「……あ、あう……あうあう」


「それにさあ、言っちゃ何だけど、こんな程度の罠に引っかかる方が悪いと思うよ? 小学生レベルの引っ掛けじゃない。そんなのにハメられちゃう時点で、知力勝負としては負けだと思うな~?」


「はうっ!」


 その一言で、勝負は決まった。

 恋華は確率の薄い、良い所30%ほどの勝率を、自力で100%まで引き上げたのだった。それは知力というよりも、負けることを恐れない恋華の精神力に起因するものだろう。


 かくして。

 恋華VSレイラの対決は、恋華に軍配が上がったのだった。

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