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26ピンチ? いいえ、チャンスです!

 恋華が出した問題は『ジャンヌが戦った、フランス北中部のロワール川沿いの町を何と言う?』だった。横で見ている俊介はすぐに分かったが、面と向かい合ってる当事者同士では、これが案外パッと出てこないものだ。


「ふ。その程度の問題で、森の精霊たるわたしを倒そうだなんて。舐められたものだわ」


 しかし、レイラはそんなプレッシャーをものともせず、堂々たる振る舞いで答えるのだった。


「オルレアンよ。イングランド、フランスの双方にとって、戦略的にもシンボルとしても重要な街ね」


「おおー」


「ちなみに、かのオルレアン包囲戦は1428年10月12日から1429年5月8日にかけて起きた戦闘。100年戦争のターニングポイントとなった戦いね」


 ドヤ顔で、補足を付け足すレイラ。

 オルレアン包囲戦は有名なので俊介も知ってはいたが、流石に年月日までは覚えていなかった。そんな細かい知識まで覚えてるレイラの方が、やはり恋華より1枚上手か。


「やるじゃないレイラちゃん! あったまいい!」


「うふふ、そう? ……じゃない! なに闇の眷属のくせに馴れ馴れしく話しかけてきてるのよ! 貴方とわたしは、前世から続く因縁の敵同士なのよ!」


 褒められて思い切り緩めていた頬を、慌てて引き締めるレイラ。相手に答えられたということは、今度は自分にターンが回ってくることだというのに、恋華は一向に焦る気配がない。


「ふむ……?」


 俊介はあごに手を当てて考えた。

 恋華は果たして、本当に勝つ気があるのだろうか。先ほどの、和姫戦での引き分け判定にしてもそうだ。実力差は歴然としていたわけだから、抗議の声が上がっても何ら不思議ではない。しかし、恋華はあっさりと引き分けを受け入れた。この勝負にしてもそう。ただ純粋に、クイズを楽しんでるようにしか見えない。一体恋華が何を考えているのか、俊介には見当もつかなかった。


「――じゃあ、次はレイラちゃんが問題を出す番ね」


 楽しげな恋華の声に、俊介の思考は中断された。


「え、ええ……。えーっと」


「言っとくけど。いい加減な問題を出したり、そもそも問題が浮かばなかったりしたら、その時点で失格だからね?」


「分かってるわよ! 今ちょっと異世界と交信してただけよ!」


 明らかに苦し紛れだが、レイラは時間を稼いでいた。


「……何だったらいい? 何だったら答えられない?」


 レイラは小声で、そんなようなことをブツブツ言っていた。

 今のところ、勝負は五分五分のようにも見えるが、ペースを握っているのは完全に恋華の方である。いかに難しい問題を出すかよりも、いかに相手のペースを乱すかが重要になっている。


「……問題が決まったわ。覚悟はいい?」


「やっと決まった? そろそろレイラちゃん、危ないんじゃない?」


「ふん。そんな低次元な言語、わたしの魂には響かないわ。わたしは負けない。この勝負に勝って、兄さんと星の世界に旅立つんだから!」


 とは言うが、形勢はかなりレイラに不利だ。ここまでの勝負を見るに、恋華はレイラと同等の知識量を持っているのは明らかだ。しかも、ちょっとやそっとのプレッシャーでは動揺しそうもない。

 ならばレイラはどのようにして、恋華が答えられないようにするのだろうか。


「ひとつルールを加えましょう。制限時間は1分以内と。時間内に答えられなかったら負けね」


「ふえ? うん、いいよ! 私絶対答えてみせるし!」


 不意なレイラの提案に、勢いよく答える恋華。俊介はハッとした。レイラの狙いはこれだったのだ。次のターンのことは考えず、このターンで勝負を決める――つまり、1分では到底答えられないような問題を出題すること。


 俊介がそれに気づくより一瞬早く、レイラは恋華に向かって言った。


「百年戦争をジャンヌと共に戦い、童話「青髭」のモデルとなった人物の名は? もちろん、本名で答えてね!」

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