24タトゥー? いいえ、シールです!
「ふん、まったく。ヒメったら、だらしがないんだから」
と。
恋華VS和姫の対決内容を、レイラはバッサリと切り捨てた。
なぜレイラがそんなことを言うのか――それは、次はレイラが恋華と勝負する番だからである。
今の所、勝負内容は1戦1分け。
勝ってもなければ負けてもいない、勝負を始める前の状態である。
よって初勝利は自分が掴むと、レイラが重い腰を上げた次第であった。
「ふええ。レイラねーねー、ひどいよお」
「そうだよ、レイラちゃん! ダメダメだったとはいえ、ヒメちゃんだって十分頑張ったんだからね!」
和姫をそれぞれ擁護するましろと美鈴。
しかし、美鈴は微妙にフォローになってなかった。
「ふん。大事なのは結果よ。いくら眷属とはいえ、結果を残せなければ無価値だわ。それが、闇の世界の掟よ」
いつからここは闇の世界になったのか。
「そ、それじゃあ。次は恋華さんとレイラさんが勝負するってことで」
突っ込みを入れたい気持ちを抑えて、俊介は話をまとめた。
恋華と和姫の勝負は『料理対決』。それぞれが選んだ内容で勝負しないといけないルールのため、レイラと恋華は違う種目で競わないといけない。本命の和姫が引き分けに終わった今、どの方法で戦うかが非常に重要になってくるわけだが。
「わたし、思うの。兄さんの伴侶として必要なのは『知力』だと!」
と、豪語するレイラだったが、
「そうかなぁ。あたしは、知力よりも体力の方が大事だと思うけど」
「……うう。ましろ、あたまわるいから、にーにーのおよめさんなれない?」
「ふん。まず一般常識や家事が出来てからの話ですわ」
美鈴とましろと和姫の賛同は得られなかった。
しかしレイラはかまわず、
「これだから下賎なる種族は。いい? 容姿、性格、家事全般。それらに『頭脳』が加わって、初めて兄さんの恋人がつとまるのよ」
「いやいや。いつから僕は、そんな敷居の高い人間になったんです?」
「確かにそうだね! 俊介君の彼女になるなら、勉強ぐらいはできないとだね!」
反論する俊介の横で、恋華はしきりに頷きレイラの言葉に賛成した。
しかし確かに俊介も、付き合うなら頭の良い女性の方がいいとは思っていた。なにせ、自身が毎日学校から帰ってきて3時間は勉強するほど勤勉な学生なのだ。知識はあって困らないというのが、俊介の持論だった。
レイラは右上に巻かれた包帯をそっと撫でると、
「そうよ。でもあなたはわたしには勝てない。わたしの脳には――アカシックレコードが刻まれてるんだから」
「アカシックレコード? 元始からのすべての事象、想念、感情が記録されてるっていう、世界記憶の概念のことだよね?」
「よく知ってるじゃない。わたしの対戦相手として不足はないわ!」
恋華がこともなげに知識を披露すると、レイラは右腕に巻かれた包帯をシュルシュルと解いた。
その右手には――
「レイラさん! なんですかそれは!?」
あらわになったレイラの右腕を見て、俊介は叫んだ。
そこには「黒い蝶」が止まっていたのだ。いや、止まっていたというより、刻まれている。おそらくはタトゥーであろうが。
レイラは右腕を悲しそうに眺めると、
「ふっ。ついに右腕の力を解放する時がきたようね」
「なんてことをしたんですか! 1度死んだ皮膚の細胞は、2度と生き返ることはないんですよ!」
「違うよ兄さん! タトゥーじゃないわ! これはただのシールで……じゃなかった! これは生まれる前からわたしの体にあったもの。これこそが、わたしが前世で星辰の姫騎士だったという証だわ!」
……とまあ、俊介の叱責に、思い切りシールだと言ってしまっているのだが。
他の妹達はレイラの中2病にはもう完全に慣れきっている。しかし、今日がレイラと初対面である恋華は、
「くくく……『星辰の姫騎士レイラ』よ。私に勝てると思っているのか? この『闇騎士ラブ・フラワー』に」
……意外にもノリノリであった。
それよりも、恋華だからラブ・フラワーとは、あまりにそのまますぎないか? 突っ込み所が多すぎて、俊介が御しきれないでいると、レイラは「くっ……」と悔しそうに歯噛みしていた。
「とうとう本性を現したわね! ラブ・フラワー! 兄さんは返してもらうわよ!」
「ふふふ。出来るものならやってみるがいいわ。レイラとやら」
しばらくそんなやり取りを死んだ目で見ていた和姫が、たまりかねたように、
「おふたりとも。勝負内容は『知力対決』ということでしたけど。詳しい勝負方法はお決まりでしたの? 日が暮れるので早くしていただけませんこと?」
俊介が思っていたことを、そのまま代弁した和姫。口には出さなかったが、俊介は和姫のファインプレーを心の中で高く評価していた。
「あっ、そうだったー。それで? どんな感じで勝負する? レイラちゃん」
もう飽きたのか、すぐに中2キャラを捨て去る恋華だった。
しかし、そんなことはおかまいなしとばかりにレイラは、
「――そうね。わたしとあなたで1問ずつ。あるテーマについて問題を出し合うというのはどう? もちろん、間違ったり答えられなかった方が負けよ」
「うん、シンプルでわかりやすい! それで、そのテーマって?」
恋華がそう尋ねると、レイラはフッと怪しく笑って、
「わたしのテーマは、若くして処刑された悲劇の聖少女――『ジャンヌ・ダルク』についてよ!」




