53告白しない? いいえ、告白します!
息を吸って、結果を発表するまでの数秒間。
俊介は、今までの妹達との過去を思い出していた。
幼い頃、自分はこの家に引き取られることになって、きっと退屈でつまらない家庭なんだろうなと想像していたのだが、実際は想像の10倍ぶっ飛んでいた。
大和撫子っぽい裏で、実は超肉食系の和姫、アニメや漫画の影響で中2病になってしまったレイラ、常識皆無な緋雨、元気いっぱいすぎて困る美鈴、マセすぎて末恐ろしいましろと、あまりにも個性的な家族だったからだ。
もちろん、そんな個性的な妹と暮らす日々は、騒々しくもあったが、楽しく、優しく、そして暖かった。
出来れば彼女達の想いを聞き入れてやりたい気持ちはあったが――。
「すみません。僕は、あなた達と付き合うことは出来ません」
俊介が言葉を発した瞬間、室内は静寂に包まれた。
正確には無言ではない。
5人が一斉に息を呑む音が聞こえてきたのだから。
誰もが金縛りにあったように動けない中、一番先に口を開いたのは、和姫であった。
「やはり……ですか。まあ、予想していた通りの結果ですわね」
「すみません……」
和姫の自嘲気味の笑みに、俊介は悲痛な顔で謝罪をした。
すると、
「そっかー。でもにーにーはパパにーにーになってくれたから、これからも甘えさせてくれるんだよね?」
「覚悟は出来ておりました。元よりこの緋雨、兄君の決断に歯向かおうなどという邪心はなし」
「ひっぐ……! くやしくなんか、ないんだから! くやしく、なんか……っ!」
「この結果も、当然このわたしの魔眼によって予期していたもの。それでも、想像以上にこたえるものね……」
ましろ、緋雨、美鈴、レイラと、それぞれに思うところを呟いた。
皆は口を揃えて「結果は予想していた」とは言っているが、本当は期待もしていたのである。俊介に愛されたたという願望もあったし、この何年間もの絆をもって、自分こそが俊介に選ばれるものだと。
それが分かってるからこそ、俊介には彼女らの辛さが、手に取るように理解できた。
戸惑い、怒り、諦め、悲しみ、期待と、各姉妹がそれぞれに感情を抱いている中。俊介は、口を開いた。
「……すみません。でも、分かってください。僕は……」
俊介は、一拍間を置いて、
「……恋華さんのことが、好きなんです」
その言葉に、5姉妹は再び黙り込んでしまう。誰もが予想していた結果ではあるが、それでも、納得できない点もあるからだろう。
和姫が、口を開いた。
「お兄様、お聞かせくださいまし。恋華さんの、どういう所が好きになったのかを」
俊介は答える。
「恋華さんとは元々、偽装恋人でした。第一印象としては、人の話を聞かない、強引な人でした。でも、付き合っていく内に、彼女の優しさ、強さ、繊細さなどが少しずつ分かって、僕はどんどん恋華さんに惹かれていきました。別れた今だからこそ、自分のホントの気持ちに気づけたんです」
「……10年前、俊介兄君と恋華どのは同じ孤児院だったそうですな? やはり、そのことも関係しているのですか?」
おそるおそる尋ねたのは、緋雨だった。俊介は首を振って、
「いいえ。そのことは関係ありません。確かにレンちゃんのことは大事な思い出ですが、思い出は思い出です。僕は今現在の、まっさらな恋華さんを好きになったんです。仮に『レンちゃん』の正体が違う人だったとしても。僕は恋華さんを選んでいたと思います」
俊介がそこまで言うと、口を挟んだのはレイラだった。
「でもあの人は兄さんのことを、こっぴどくフッたじゃない。兄さんとのことは遊びだったって。本当は愛してなんかいないんだって。それでも兄さんは、瀬戸内恋華を愛するの?」
「あの人はああいう人だから、ああいう言い方しか出来ないんです」
レイラの問いかけに、俊介は真剣な表情で答えた。
「でも、あれはあの人なりの愛情だと僕は思っています。僕や、皆さんのことを気遣っての発言だと。でなければ、不必要に人が傷つくような言い方はしません。うぬぼれてるのかもしれませんが、恋華さんだって、僕のことを好きでいてくれてる。そう信じて、僕は恋華さんに告白します」




