18知ってます? いいえ、一応です!
昇降口で下駄箱を空けた時だった。その人物に話しかけられたのは。
「……ねえ。君、井川君だよね?」
「ああ、はい。そうですけど」
おそらくは2年の同級生であろう。
俊介は瞬時に思い出していた。確か、2年B組の内田という男子生徒だ。
サッカー部に所属していたはずなので、朝練終わりなのだろう。俊介と同じくらい早く学校に来ている。
まあ、だからといって俊介が話しかけられる理由はどこにもないのだが。
「えっ、どうしたの。僕の顔に何かついてる?」
「いいえ、何でもありません」
内田に話しかけられ、俊介は首を振りながら上履きを履いた。
別に不快ではないが、接点もない人間から話しかけられるのは好ましくない。
「それよりも。僕に何か用ですか?」
「ああっ、そうだよね。ごめんね、急に話しかけて」
抑えたつもりだったが、俊介の気まずさを感じ取ったのだろう。内田は一言詫びを入れながら、
「瀬戸内さんのことで、ちょっと話したいことがあったんだけど……まずかった?」
「いえ、いいですよ。どんなことですか?」
俊介が答えると、内田は何故か神妙な顔で「そう」と頷き、
「一応自己紹介だけしとくけど、僕は2年B組の内田。サッカー部に入ってるよ」
「ああ、はい。知ってますよ」
本当に、ただぼんやりと覚えてるだけなのだが。それは言わないでおいた。
「それでね。今朝はサッカー部の朝練があったんだけど」
内田は顔を、苦々しくしかめた。
「3年生の佐々木隼人先輩。知ってるかな?」
聞かれて、俊介は記憶の糸をさぐった。
学校1のモテ男だが、俊介にはチャラそうな人だな、という印象しかなかった。長身で、端正な顔立ちで、話し上手で。サッカー部のエース的存在というのも、女子人気に火をつけているのだろう。いつも女子を侍らせているし、チャラ男かギャル男という呼び名がお似合いだ。
そこまで考えて、俊介はハッとした。
内田が佐々木のことを話すということは、恋華とも繋がりがあるということだ。
片や学校1のモテ男。片や学園1のアイドル。となれば、やはり――。
「どうやら、知ってるようだね」
俊介の表情から考えを読み取ったかのように、内田は語りかけた。
「その通りなんだ。偶然、佐々木先輩が瀬戸内さんに告白してる所を見てね……。瀬戸内さんもまんざらじゃないって感じだった」
内田の言葉に、俊介は足元がぐらつく気がした。
しかし何とか踏みとどまって、内田と正面から向かい合った。
「詳しい話を聞かせてください。いや、最後まで聞かせてもらいます」
偽装だろうが何だろうが関係ない。
印象最悪な先輩と恋華がどんな会話をしたのか、この内田から全て聞き出してやろうと、俊介は決意していた。




