14ありえない? いいえ、ありえます!
私は一体、何をしてるんだろう。
こんなにも俊介君のことが好きなのに、自分から離れた。
私は一体、どうしたいんだろう。
心の中ではもう吹っ切れたはずなのに、いまだに彼を求めている。
「……まったく、何やってんだろ、私」
ベッドの上でごろごろと転がりながら、瀬戸内恋華はつぶやいた。部屋の中なので、レースのタンクトップにホットパンツという、ラフな服装だ。若干サイズが大きめなので、タンクトップの胸元から谷間が見えており、デニムのショートパンツからは生足どころか、際どい部分までもが見えている。クラスの男子が見たら卒倒しそうなほど煽情的な恰好だが、一人で部屋にいるので平気だ。
「ああっ。でも……。久しぶりに俊介君といっぱい話せて、楽しかったなぁ」
そう。
恋華と俊介がまともに会話するのは、実に一ヵ月ぶりなのだ。
偽装恋人を解消した後は、電話やメール、ラインすらもしてなかった。それぐらいなら別に、とは思う。だが表向きは破局したカップルなので、あまり頻繁に連絡を取り合わない方がいいだろう。しかし偽装恋人だった頃は毎日一緒にいて、寝る前まで電話をしていたものだった。この一ヵ月間は、まったくもって辛かった。
「はぁっ……。それにしても俊介君。奏ちゃんと本当に付き合うのかなあ?」
恋華は、ため息をつきながら考えていた。
そもそも、俊介は本当に奏のことが好きなのだろうか?
今はまだ違うのかもしれない。しかし、時間が経てばどうなるか分からない。もしかしたら、本当に付き合うのかもしれない。
なぜならば、奏は意外なほどアグレッシブだったからだ。
大人しくいつもおどおどしてる小動物みたいな彼女だが、俊介に積極的にアプローチを仕掛けている。
さっき自分でも言ったが、俊介は優しすぎる。ちょっと弱みを見せてグイグイ押せば、大概のワガママには付き合ってくれる。それは恋華が、一番よく知っていた。俊介は、お人好しすぎるのだ。
「はっ、そういえばあれから俊介君たちどうしたんだろ……。一緒に登校するくらいだから、下校も一緒にするよね? 帰り道で、手を繋いだり……」
そのまま本屋に立ち寄ったり、ゲーセンで遊んだり、映画を見たり、喫茶店に寄ったり。
「私の家この近くなんですよー」と奏に誘われ、ホイホイついていく俊介……。
「ダメダメ! そんなの絶対ダメなんだからぁっ!!」
恋華は頭をブンブン振って叫ぶが、俊介が奏の家にいるというのは、あくまで恋華の勝手な妄想に過ぎない。
そのことに気が付いたのは、およそ2分後。
「……ふう。落ち着いた。でも、何で俊介君は奏ちゃんと付き合うのそんな嫌がるのよ? あんなに可愛い女の子なのに……。はっ、も、もしかして!? 私のことが好きだったりして!?」
と、せっかく落ち着いたのにまた暴走してしまう恋華だった。
しかし、これはすぐ冷静になれた。俊介の家族がいる前で、恋華自身がこっぴどくフッてしまったのだ。しかも、愛してなんかいないとまで言ってしまった。これで自分のことを好きでいてくれたら奇跡だろう。
それにしても、何て自分は惨めなのか。考えに考えて俊介との関係を断ち切ったのに、彼が自分を好きだという妄想までしてしまうなんて。
「あああぁぁぁ~~!! でもさでもさ~! 絶対ありえないなんてことはなくな~~い!?」
まあ、俊介がどうしてもまた付き合いたいと迫ってくるなら、考えてやらんこともないと、都合のいい設定で妄想を働かせる恋華だった。
そして、また俊介と登下校を共にする。もちろん、デートも沢山する。そして時は経ち、朝、仕事に向かう前の俊介に、愛妻弁当を手渡す自分……。
ヤバい! 何これヤバすぎる!! この妄想だけでご飯3杯はお代わりできそうなことを、恋華は初めて知った。
とその時、急に部屋のドアがガチャリと開いた。
「……なあ、姉貴。さっきから何騒いでんだよ?」
――中に入ってきたのは、恋華の義理の弟・勝であった。




