12責めてる? いいえ、責めてません!
「私の方からも聞かせてもらえる? 今後、奏ちゃんと付き合う予定とかはあるの?」
「……それは……」
それまで淀みなく話していた俊介の口調が、急に歯切れ悪くなる。
どう答えたらいいのか分からなかったからだ。しかしこれだけは言える。その可能性はあると。奏は何だかんだで魅力的な女の子だからだ。
「誤解しないでね? 別に私、責めてるわけじゃないの」
「恋華さん?」
「ただ私、俊介君には幸せになってほしいの。私のワガママで、俊介君には沢山迷惑かけちゃったんだから」
「だから、僕と奏さんにくっついてほしい、と?」
俊介がそう言うと、恋華の瞳が鋭く、真剣な眼差しになった。
「そうだよ。それが私の――贖罪」
「贖罪?」
「私さえ偽装恋人なんて言い出さなかったら、俊介君と奏ちゃんは、今頃は普通に恋人として付き合ってたかもしれないでしょ?」
恋華の言い分は、俊介には受け入れられなかった。
もしも・たらればで物事を語るのは、理知的な俊介には理解しがたい。
「私には、男子からの告白避けをしたいっていう、自分勝手な目的があった。でも俊介君は、妹さん達のことを思って、私の提案を受け入れてくれた。だから私は、心から反省をしてるの」
「反省?」
「俊介君の気持ちを利用したことを、よ」
恋華は、伏目がちに話した。
「私は本当に自分勝手だから、俊介君を縛り付けて嫌な思いをさせた。でも、いつまでもこのままじゃいけない。まだやり直せるんだから」
「……」
「だから……ね? もし俊介君に少しでもその気があるなら、奏ちゃんとのこと、考えてあげて? 私のことなんて忘れて、幸せになって?」
俊介は絶句していた。
今の話には致命的な欠陥がある。俊介が幸せになったとして、恋華はどうなる?
ひやりと、頬を撫でる風が冷たくなってきた。見上げると、空は大分赤くなっている。少しだけ雑談するという話だったが、ずいぶんと話し込んでいたようだ。
「まあ、今すぐどうこうとは言わないよ。強制もしないし。ただ、あんな可愛い子に慕われてるんだから、泣かせるようなことだけはしないでね?」
無言の俊介に、恋華が柔らかい口調で話しかけた時だった。
「――そんなこと、瀬戸内先輩に心配される筋合いはないです」
その声は、俊介の発した声ではない。
俊介の後ろにいる人物が言ったのだった。
「あなたは……」
「すみません、俊介先輩。盗み聞きするつもりはなかったです」
その人物は、コツ、コツ、とローファーを鳴らしながら歩いてきた。
俊介には、振り向かずとも誰か分かっていた。正直、今この場でもっとも会いたくない人物だった。
東条奏は、瀬戸内恋華の前に立ちはだかった。
艶やかな黒髪のツインテールが、さらさらと風に舞う。
正に絵に描いたような美少女同士の邂逅であったが、奏から発せられた言葉は、挑戦的だった。
「恋華先輩……一体何を企んでるんですか? 迷惑なので、これ以上俊介先輩に近づかないでほしいです」




