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9手を繋がない? いいえ、繋ぎます!

 通学路にて。


「本当にすみませんでした、奏さん。妹たちが失礼なことばかり言って……」


 俊介は隣を歩く奏に、何度目かの謝罪をした。


「いえいえ、いいんですよ! 気にしないでください。あと、普段見れない俊介先輩の表情とか見れて、私嬉しかったですから!」


「は、はあ。そうですか……」


 照れ臭くなり、俊介は指で頬を掻いた。

 照れてしまったのには、他にも理由がある。自転車通学をしてる生徒などが、じろじろとこちらを見ているからだ。妹軍団のせいでいつもより遅くなったせいで、路地には沢山の生徒たちが歩いていた。その中で、こんな美少女と並んで歩いているのだ。やっかみの視線やひそひそ声を浴びるのは当然といえば当然だろう。


 もう少し距離を取って歩こうか。

 俊介がそう考えていると、奏がぐいっと制服の袖をつかんできて、


「……俊介先輩」


「何でしょうか?」


「お願いがあるんですけど」


「……まあ、僕で出来ることなら」


 俊介がそう言うと、奏は頬を赤くしながら、上目遣いで懇願した。


「……私と、手を繋いでほしいです!」


 自分でそう言いながら、奏は気まずそうに視線を逸らし、


「あ……いえ。手を繋ぐと言っても、あくまで『友人』としてです」


「ああ……そ、そうですよね」


「でも出来れば恋人繋ぎをしたいというか、もっと言うなら夫婦みたいにラブラブしたいというか」


「どっちなんですか!?」


 主張が2転3転する奏に、思わず俊介はツッコんだ。


「というかよく考えたら、たとえ友人でも手を繋いで登校するのはおかしくないですか?」


「そんなことないです!」


 奏は心外だ、とばかりに声を荒げた。

 そして、


「恋愛感情がないと、体をくっつけるのはおかしいって考え方自体が、もう古いです! 友だち同士だからこそ、ノリでやっちゃうことも多いんじゃないですか!? それに、女の子同士で手を繋いでる子も結構多いです! あれだって、カップルじゃないですよね? だから、お友だちである私達が手を繋いだって、おかしくないです! おかしくないです!」


「は、はあ……」


 その理屈は明らかにおかしかったが、これだけ熱弁をふるわれると、真っ向から否定はしづらかった。

 もっと言うならば、女の子同士でも手を繋ぐのは不自然に感じる。


「ということで俊介先輩は罰として、私と手を繋いでください」


「何の罰ですか!?」


 たまらず俊介が叫ぶと、奏はびくっと肩を震わせ、涙目で俊介を見つめ、


「ま、まさか……俊介先輩、私と手を繋ぐのが嫌なんじゃ……」


「ち、違いますよ! そんなこと、あるわけないじゃないですか!」


「じゃあ、手を繋ぐですう♪」


 俊介から否定の言葉を聞くと、奏は嬉しそうに、有無を言わさず俊介の手を握った。

「あっ」という暇もなかった。奏の暖かく柔らかい手が、俊介の手に密着される。距離も先ほど前より断然近づき、シャンプーの甘い匂いが鼻をくすぐった。


「……あ」


「せ、先輩。早く行きましょう?」


「は、はい」


 流石に周囲の視線が恥ずかしいと思ったのか、奏は先を急かす。俊介も若干の気まずさを感じながらも、移動を再開した。


「まさかこれ、校門まで続けるんですか?」


「違います。下駄箱までです。繋げるだけ繋ぎましょう。何だったら一生このままでもいいくらいです」


「……そうですか」


 奏の強引さに、心の中でため息をつく俊介だった。

 すると奏は、


「俊介先輩。この際なので、改めて言っておきたいことがあるです」


「何ですか?」


 俊介が聞き返すと、奏は少し恥ずかしそうに、それでいて毅然とした瞳を向けて、


「――私、先輩のことまだ好きですから」


 その声は、緊張で上ずっていた。それはそうだろう。同様の思いは俊介にもあった。今の俊介と奏の関係は、あくまで友人なのだ。ならば、その関係性を崩すようなことを、なぜ今言うのか。

 俊介の思いを表情で察したのか、奏は先に口を開く。


「と、といっても、お友だちとして……ですけど」


「で、ですよね」


「で、でも! 誤解しないでほしいです! あくまでも今はまだ……ってことですから! ライクとラブの割合でいうと、ラブが90ぐらいです!」


「それ、完全に異性として好きですよね!?」


 答えながら、俊介は呆れていた。

 恋人になってくれといったり、偽装友人になってくれといったり、奏の考えてることはいまいち分からない。

 しかし、それは奏に限った話ではなかった。

 俊介の元偽装恋人・瀬戸内恋華。

 彼女の考えていることも、俊介は一向に分からなかったのだから……。


 そんなことを考えながら、次の角を曲がった時だった。


「あっ」


「えっ?」


 その人物と鉢合わせになり、思わず足を止めたのは。


「先輩? どうしたですか……あ」


 釣られて立ち止まった奏も、俊介と向かい合ってる人物を見て、全てを悟った。

 しばし無言の時が訪れ、最初に口を開いたのは、俊介と奏を絶句させた張本人だった。


「おっはよー、俊介君♪ 奏ちゃんもおはよー!!」


 その人物とは、瀬戸内恋華だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! >犯罪キャラよりは漫才キャラの方がいいかなと思いました(^^; 座布団一枚w [一言] >恋人になってくれといったり、偽装友人になってくれといったり、奏の考えてること…
2020/10/11 16:27 退会済み
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