5食べきれない? いいえ、全部食べます!
井川家の朝は早い。
理由は一つ。大所帯だからである。
朝食の準備は勿論のこと、学校の支度、掃除、洗濯。こういった作業は早めに終わらせておくに限るということで、皆早起きなのだ。
特に緋雨と麗子が帰国してからは、人数が増えたせいでますます大変になった。こうなってくると、いかに料理上手な和姫といえど、ある程度、朝食の支度には手を抜かざるを得なくなってしまう。
しかし、今日に関しては別だった。
「これはまた、ホテルの朝食みたいに豪華ですねえ」
テーブルの上に並べられた豪華な料理を見て、俊介は感嘆の声を漏らす。
王道の卵焼きから始まり、サンマの塩焼きや唐揚げに湯豆腐やみそ汁、漬物、きんぴらごぼうなどの和食系、スクランブルエッグにウインナ、フレンチトーストにかぼちゃの冷製スープといった洋食系、チャーハンや焼きそば、マーボー春雨といった中華系などが、所せましと置かれている。7人分にしても、明らかに作りすぎだ。
「それにしても、少し量が多いんじゃないですか?」
「だあってえん。久しぶりの家族団らんだから、張り切りすぎちゃったんだもん」
えへへっと笑う麗子。家族で食卓を囲むのも久しぶりなせいか、とにかくハイテンションだ。
「でも味には自信があるから。とにかく、食べてみて?」
「は、はい」
そう言われて俊介は、料理に箸をつけた。
綺麗に黄金色した卵焼きを口に入れると、鰹だしが効いたあまじょっぱい味が口の中でふわりと溶けた。料亭で出てくる卵焼きと比べても、遜色ない味付けだった。
「うん。これ、すごく美味しいですよ」
「わぁい♪ 良かった~、お料理作るの久しぶりだから、腕が落ちてないかと心配だったのよね~」
「アメリカでは、料理してないんですか?」
「仕事で忙しいからね~。家政婦さんに全部やってもらってるの~」
ぽりぽり、と照れくさそうに麗子は頭をかいた。よく見ると、指には絆創膏が貼ってあった。目の下に少し隈も出来ている。
「お義母さん……ありがとうございます。残さず全部食べますからね」
「きゃ~っ。俊ちゃんったら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの~」
「ちょっ……! うぶっ」
感極まった麗子は俊介を抱きしめ、自身の胸に俊介の顔を埋めた。驚異のGカップの胸は、小さめな俊介の顔など容易に沈めてしまう。胸だけではなく、スッキリとくびれたウエスト、キュッとしまったヒップなど、殺人的なまでに麗子はナイスバディなのだ。ファッションモデルやグラビアアイドルといえども、麗子の前では霞んでしまうだろう。
「お母様……いくらなんでも、食事中にはしたなさすぎますわ……」
「胸が大きい人って、何をやっても許されるって思ってないかしら?」
「くう……! 羨ましい……しかし、わたくしめにそのような感情を持つ資格など……」
「何よお兄ちゃん、大きいだけのおっぱいなんかにデレデレしちゃって。適度に鍛えられた大胸筋の方が良い形してるっていうのに」
「いいな~。ましろも、にーにーとぽかぽかしたい」
和姫、レイラ、緋雨、美鈴、ましろと。
5姉妹はその光景を見ながらぶつぶつと不満を呟いた。
よその女がやろうものなら、即座に引きはがすところだが。麗子の場合は母親なので、単に親子愛からのハグとも言える。どちらにせよ、井川家の子供としてお小遣いを貰っている身としては、麗子のすることに反対することは出来ないのだ。




