1妹会議? いいえ、妹+母親会議です!
深夜0時。井川家のリビングにて。
家族で夕食を食べ終えたあとの、恒例の妹会議。いつもより時間は遅いが、それには理由がある。俊介だけには、絶対聞かれたくない内容だからだ。よって、俊介が確実に寝静まるまで待っていたのだ。
井川俊介は瀬戸内恋華と偽装恋人として付き合っていたが、最近になって別れている。井川家3女である緋雨が恋華を監禁し暴行しようとした時である。最終的には母・井川麗子の登場もあり丸く収まったのだが。その場で恋華は俊介に対し、別れを切り出したのである。
以上の回想をまとめながら、
「それではこれより、妹会議を始めたいと思うのですが……」
と言ったのは、井川和姫だ。
井川家長女。15歳。
黒曜石のように艶やかな漆黒の髪、均整の取れた抜群の肢体、まるで人形のように整った顔立ちと、大河のお姫様として出てきてもおかしくないほどの、和風美少女である。
そう、いつもは凛として毅然な態度を崩さない和姫なのだが、今日はどうも歯切れが悪い。その原因は一人の人物にあった。和姫は、その人物に向かって話しかけた。
「あの……始めてもよろしいでしょうか? お母様……」
「いいわよん♪ ママさんに構わないで、いつも通りにしちゃって~」
ウインクをしながら麗子が、遠慮がちな和姫の問いを了承する。
井川家の母――麗子は、正に美の女神のような女性だ。
20歳で父親と結婚し子を産んでいるので、現在は35歳なのだが、見た目だけなら10代でも通用する。豊満ではあるが流麗な曲線美、完璧なまでに整った目鼻立ちだが冷たくはない柔らかな美貌。5人の娘達が揃いも揃って美少女なのにも、納得がいくというものである。
さて、なぜその麗子が妹しか参加できない妹会議に出席してるのかというと――
「だぁって~ん。なんだか楽しそうなことやってるし~。ママさんも混ぜてほしかったんだもん。あっ、ママさんのことなら気にしないで? うるさく口出しするつもりもないし、好き勝手にやってもらって構わないから」
どうぞどうぞ、と麗子は両手を突き出して5人の前で広げた。
ならば好き勝手にやらせてもらいます、といかないのが年頃の娘。言葉を発する者は誰もいなかった。
和姫の表情は硬く、いつもよりかしこまっている。
レイラは表面上こそ無表情だが、「中2な」口数は少なめだ。
緋雨はとにかく怯え切った顔で、麗子の顔色を窺っている。
美鈴はいつもの元気がなく、バツの悪そうな面持ち。
ましろだけは母の参加をとても喜んでいるが、眠そう。
――以上が、井川家5姉妹のリアクションなのだが。
「ヒメ。母さんの言うとおりよ」
ようやく口を開いたのは、レイラだった。
井川家次女。14歳。
極度のアニメオタクにして、中2病を患っている。
さらりとした金髪のブロンドヘアをツインテールにまとめた、北欧系の美少女だ。冷たく鋭い切れ長の瞳は神秘的で、左右の色が違うのだが、別にオッドアイということはなく、右目にはカラーコンタクトをしているだけだ。ちなみに左目には眼帯をしている。
背は高く、手足もすらりとしている。それでいて、透き通るような美肌。右手には包帯が巻かれているが、これは過去に悲惨な事件に巻き込まれて大怪我を……したわけではなく、ただのワンポイントアイテムだった。
「みんな夜も遅い時間に、わざわざ集まってくれたんだから。これ以上時間をかけるのは悪いわ。やる気がないのなら、わたしが代わりに仕切ってあげてもいいけど?」
レイラは素っ気ない態度で言った。
和姫は反論する。
「やる気がないわけではありませんわ」
「じゃあ、さっさとなさい。誰が聞いていようと関係ないわ。今さらいい子ぶるつもりなんてない。兄さんを手に入れるためにどうしたらいいか。いわゆる『独善』のための会議を、早く始めましょう?」
「レイラ……」
突き放すようなレイラの言葉に、和姫は呑まれた。
母親がいるからやりづらい、というのはあくまで方便だ。それよりも、俊介と恋華が別れた後だから会議がしづらい、という方が正解だろう。
つまり恋華と別れた俊介を、この5人で奪い合うことになるのか?
それとも……。




