36ギャグ? いいえ、シリアスです!
井川麗子。
井川家5児の母で、俊介にとっては義母である。彼女は、胸元まで届くナチュラルブラウンの、ウェーブパーマをした女性だった。優しく包み込むような微笑を携えた女性で、子持ちとは思えないほど若々しく、年齢を言わなければ20代でも十分通用するだろう。特徴的なのが体つきで、30代後半とは思えないほど豊満かつ、スタイルのいい肉体をしている。
「お母様……どうして? どうしてここに?」
「母さんが今日帰国するなんて情報、アカシックレコードには刻まれてなかったけど」
「お、お母さん! あたし達、喧嘩なんてしてないから! 緋雨ちゃんが問題起こしてあたし達が立ち向かおうとしてるなんて、そんなことは全然ないからね!」
「ママー、おひさ! ましろ、あいたかったよぅ」
和姫、レイラ、美鈴、ましろと。4人ともそれぞれに思うことはあるようだ。
その中でも、緋雨だけは何も言えずに、肩をわなわなと震わせながら麗子を凝視している。いつも強気な態度の彼女にしては、ありえないほどの怯えようだ。
「お義母さん! これは一体どういうことですか!?」
「あっ、俊ちゃん! お久しぶりぃ~♪」
「ちょっ……! うぷ!」
麗子は、駆け寄る俊介の体を引き寄せ抱きしめた。
おそらくGカップはあるだろう巨乳が、俊介の顔を挟む。
ちなみに麗子は、孤児院にいた俊介を引き取ろうと言い出した張本人である。それからは実の息子以上に愛情をかけて俊介を育ててくれたが、このように少々溺愛しすぎなところもある。
「あーっ、ママだけずるいっ! ましろもっ、ましろも!」
「あらーましろちゃん! あいかわらずお兄ちゃん大好きねえ」
抗議しに走ってきたましろに、麗子は満面の笑みを向ける。
「俊ちゃんやヒメちゃんから話は色々聞いてるわよー? 色々お手伝いも頑張ってるんだってねー? さっすがママさんの娘! ラブラブ!」
「らぶらぶ!」
両手を合わせてハートマークを作り、挨拶を交わす麗子とましろ。
「あ……あの人が俊介君のお母さん? なんか、調子狂うな……」
恋華はぼそりと呟いた。それもそのはず。子供っぽい挨拶を交わす二人の周りでは、数人の男達が気を失っているという、極めて異常な状況なのだ。そんな中で麗子は微笑を浮かべると、
「てなわけで~。久しぶりの日本でテンションがよく分からなくなってるママさんでした~。ん? どしたの? 俊ちゃん」
「く、苦しいです……」
俊介に言われ、ようやく麗子は彼を解放した。トップバスト95cmの胸は、使い方によっては凶器になりかねない。
「ご、ごめんね。あっ、それで。どうしてママさんがここにいるかって話だけど~」
佇まいを直し、本題に入ろうとする麗子。
緊張に強張った顔をする俊介に対し、彼女は話し始める。
「実は、仕事の方はひと段落したものでね? パパさんだけ置いてママさんだけ帰ってくることにしたの! みんなをビックリさせようと思って、このことは内緒にしてたんだけど~」
そこで言葉を切ると、麗子は突然眉根を寄せて真剣な表情になり、
「どうやら、緋雨ちゃんがとんでもないことしでかしちゃってるみたいね」
俊介はその静かな迫力に、思わず息を呑んだ。
どこから見ていたのだろうか。
仮に今来たばかりだとしても、彼女は全てを把握しているに違いないが。
麗子はつかつかとハイヒールを鳴らすと、腕組みをしながら緋雨の前まで詰め寄り、
「ねえ、答えて? どうして緋雨ちゃんは、こんなことしたの?」
「い、いえっ、わたくしめは……」
そこで、緋雨の言葉は途切れた。いや、途切れさせられたのだ。
なぜならば麗子の拳が、彼女のみぞおちに深くめり込んでいたからだ。




