34怯む? いいえ、怯みません!
「みんな……どうして? この場所は教えなかったのに。どうして僕がここにいると分かったんですか?」
俊介の問いに、答えたのは和姫だった。
「申し訳ありません、お兄様。実は、お兄様に発信機をつけさせて頂きました――お兄様のお弁当のおかずの中に。その電波をたどって、ここまでやってきたというわけですわ――もちろん、体に害のないものを使用しておりますが。黙っていて誠に申し訳ありません」
「……」
和姫の謝罪に、俊介は絶句してしまった。
ピンチの時に助けにきてくれたので文句を言うつもりはさらさら無いが、それでもモヤモヤとした納得できないものは残る。
……本当に、体に害がなければいいのだが。
「和姫姉君……まさか、そのような手段を用いるとは」
ぼそりと呟く緋雨。和姫は、キッと彼女をにらみつけた。
「それはこちらの台詞ですわ。あなたが、ここまで非道な行いをするとは思いませんでした」
「数日前に思い知らせたはずがね。その時、今度わたくしめの邪魔をしたら容赦なく潰すと、そう忠告したはずですが?」
「……だからこそですわ」
「……え?」
緋雨がきょとんとした顔で聞き返すと、和姫はフッと笑みを浮かべて、
「わたくしは、あなたと戦う覚悟が出来ました。恋華さんはおろか、お兄様までこんな目に合わせて。たとえ姉妹の縁を切ってでも……あなたを止めてみせます!!」
キーンと。
工場内に響き渡るような大声で、和姫は言った。
「緋雨……やり過ぎたのよ、アンタは!」
和姫に続いて叫んだのは、隣に立つレイラだった。
「レイラ姉君まで……なぜですか? 頭のいいレイラ姉君が、兄君を奪い取ろうとする者のために、討ち死にしようなどと」
「ええ、そうね。でも、わたしは瀬戸内恋華につくって決めたの。――それに、わたしはあんたなんかに負けないわ!」
「なんですと? それはどういう……」
「なぜならば、わたしこそが闇魔界の王族の末裔。暗黒の帳が落ちた今こそ、このわたしに充分な魔力が満ちる時なのよ! いい機会だからアンタの汚れた魂を、聖なる精霊の祝福によって浄化させてあげるわ!」
「はあああっ!?」
飄々と厨2台詞を放つレイラに、緋雨は怒号を飛ばした。
威圧の視線をかわしながらレイラは、真正面から緋雨と向き合う。
その時――
「やめて! ひさねーねー! みんななかよくしようよ!」
「そうだよ! 緋雨ちゃん! 今謝ったら許してあげるから!」
「とにもかくにも、まず恋華さんを解放しなさいな!」
ましろ、美鈴、和姫と。
3人から非難の声を上げられるも、緋雨はまるで動じない。
「――お断りいたす」
緋雨は冷酷な声で両断すると、視線を後ろに向けた。
緋雨が従えてる不良達に。
「この者たちの相手は、お主達に任せる。――ただし、幼いましろにだけは手を出すな」
「「「「了解」」」」
男達はみな下卑た笑いを浮かべながら、妹軍団に近づいた。
妹軍団はその迫力に怯え涙を流しながら縮こまる――のではなく、悠然と、男達と向かい合っていた。
「たったこれだけの人数で相手をするとは。わたくしも舐められたものですわね」
「まあいいけど。こんなヤツ等、闇の瘴気を使うまでもなく倒せるし」
「おにーさん達、謝るなら今の内ですよー? あたし、やるとなったら手加減しませんからね!」
「「「「んだとこのアマアアアアアアアアアアアア!!」」」」
和姫、レイラ、美鈴の挑発に対し。
4人の不良達は猛然とした勢いで彼女達に飛び掛ったのだった。




