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8拾わない? いいえ、拾います!

 そして放課後、俊介は教室で恋華と別れ、1人で下校しようとしていた。

 恋華とは偽装とはいえ恋人同士。いや、偽装だからこそ。出来る限り一緒に行動しないと、『最近あいつらギクシャクしてね?』とか『俺にもまだチャンスあるかも!』とか、そういった輩が出てこないとも限らない。表立った活動はないが、恋華の隠れファンが、恋華の彼氏の座を虎視眈々と狙っているという噂もある。


 しかし、それを見越して恋華は学校の中では俊介とイチャつこうとしているのだ。あまりに別行動を取り過ぎていると、また嵐のような告白攻撃に襲われかねないからだ。


 そんなことを考えながら、俊介が廊下を歩いていると。


「あれ? 東条さんじゃないですか」


 山のようなプリントの束を持って、ゆらゆらと2つに結んだ髪を揺らしながら、えっちらと前から歩いてくる女子生徒に、俊介は話しかけた。

 少女は手にしたプリントで前が見えないらしく、俊介に向かって聞き返した。


「ふえ? 誰ですかあ?」


「僕ですよ。井川俊介です」


「ふえ!? 井川先輩!?」


 あ、と言う暇もなかった。少女は動揺からか、持っていたプリントをバサバサと下に落としてしまった。黒髪の長いツインテールをサイドから垂らす美少女の名は、東条奏。俊介の1年後輩である。無くした自転車の鍵を俊介が見つけてあげたことがきっかけで、以降は俊介のことをとても(・・・)慕っている少女だ。


「ああっ。大丈夫ですか?」


 俊介が駆け寄ると、奏は表情を曇らせながら、


「わ、私は大丈夫です。気にしないでください、井川先輩!」


「え、どうしてですか?」


「放課後は、瀬戸内先輩と一緒に帰るですよね? 私なんかに関わって、大事な時間を無駄にするのはよくないです」


「……何言ってるんですか。2人で拾った方が早いでしょう?」


 俊介はそう言うと、散らばったプリントの前にしゃがみ込む。

 枚数は約80枚。おそらくはクラスの課題だ。

 教師に職員室までプリントを運ぶよう指示されたが、奏の性格上誰かを頼ることが出来ず、結果1人でこの枚数を運ぶことになった。そんなところだろう。


 落ちたプリントを、トントンと床で揃えると俊介は、


「うん。これで全部のようですね」


「あ……ありがとうございます。井川先輩」


「いえいえ。いいんです、よ――?」


 立ち上がろうとした俊介は思わず目を見張った。なぜならば、屈んだ太ももの間からパンツが見えてしまっていたからだ。きめ細かい白い素肌に負けないくらい、木綿100%の白パンツが。柔らかくすべすべな太ももの間から、スカートの下に隠れた秘所が顔を出している。普通であれば、まず目にする機会はないだろう。


 ただ――位置が悪かっただけで。

 長さは膝くらいまでのスカートなのだが、しゃがんでいるせいでスカートの奥までバッチリ見えてしまっている。


 校内でも1、2を争う美少女の、いわゆる「パンチラ」が。

 俊介は、なるべく目に入らないようにと視線を横に逸らした。


「先輩? どうしたですか?」


「いえ、何でもありません」


「そうですか? なんか顔が赤いですよ?」


「……気のせいです」


 俊介はそう言うと、プリントを持って立ち上がった。


「それじゃあ。早く行きましょうか」


「ふえ? どこにですか?」


 俊介の言った言葉に対し。

 上目遣いで疑問を投げかける奏。

 俊介は、横目でチラリと奏を見ながら言った。


「どこって、職員室ですよ。ついでだから、一緒に持っていきます」

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