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59謎の人物? いいえ、緋雨さんです!

 一方その頃。

 俊介は1人とぼとぼと、肩を落としながら舗道を歩いていた。

 理由は、2つある。まずは、瀬戸内恋華についてだ。


 思えば、恋華の出会いは、男子からの告白を避けるために「偽装恋人」役を持ちかけられたことが原因だった。


 妹達の兄離れを願っていた俊介は、恋華の話を受け入れた。ちなみに効果は皆目なく、「お兄様、大好きですわ」、「兄さん、わたしと合体してよ!」、「あたし、お兄ちゃんと結婚したい!」、「にーにー! ずっとずっと一緒にいて!」と毎日アプローチの連続だが。


 そして、そのたびに恋華からヤキモチを焼かれるわけだが。

 俊介自身は、恋華のことを憎からず思っている。

 しかし確信が持てなかった。恋華が自分のことを好きだという確信が。

 

 俊介と恋華は、ただの偽装恋人。付き合いはただのフェイクで、本当は何の繋がりもない赤の他人。それが、恋華との契約なのだから。


 もうひとつの悩みは、彼の妹についてだ。

 井川緋雨。

 

 井川家の3女で、超絶ヤンデレ。

 忘れもしない。1年前、校門の前で彼女は、俊介に対して悪口を言ったというだけで、男子生徒に重傷を負わせてしまった。


「わたくしめは、兄君のためだけに存在しております」


「兄君のためなら、人殺しもいといませぬ」


 こんなことを言う人間は、実際には行動に移せない。

 しかし、緋雨は違う。

 

 温厚で礼儀正しい緋雨が、我を忘れて冷徹に人を傷つけてしまった所を、俊介は目の当たりにしているのだ。

 そんな緋雨と、恋華を鉢合わせてしまったら――。


 恋華は偽装の恋人で、緋雨は義理の妹だ。

 その2人が、もし争いになった時。

 おそらく俊介は、どちらの味方も出来ないだろう。2人のことは好きだが、その「好き」の種類は、全く違うのだから。


 これもおそらくだが、恋華も緋雨も、互いに譲り合ったりはしないだろう。

 ならば、どちらを取る? 

 大切な人の内、どちらか1人しか選べないとなった時、俊介は――。


「どうすれば、いいんでしょうね……」


 俊介は、袋小路に迷い込んだ気分で、帰路についていた。

 そして、見慣れた我が家の前までついた時であった。

 1人の少女が、玄関口の前に立っていたのは――。


「俊介兄君。よくぞお帰りになられました」


 少女は、白地の着物に、薄紫の帯を締め、紺色の草履を履いていた。

 燃えるような赤髪の、腰元まで垂れ下がったポニーテールをした美少女だ。赤髪にして赤眼。体系は小柄なのだが、目の前にするとそんなことは言えないような迫力がある。見るものを射抜くような切れ長の瞳と、凛々しく締まった口元、そして少女から醸し出される、得体の知れない凄みがそうさせるのだろうか。


「いかがなさいましたか、兄君。もしや、わたくしめのことをお忘れでござりましょうか?」


 彼女は心細そうに、上目遣いで俊介に尋ねた。

 まるで時代劇のような話し方。まだ14歳だというのに、大和撫子のように完成された気品を感じる。


「どうして、あなたが……?」


 俊介の声は震えていた。

 その人物は、先ほどまで俊介の頭を悩ませていた人物である。


「どうして……? あえて申すなら、わたくしめは俊介兄君と共に生き、共に死ぬと誓ったからでござりましょう」


 井川緋雨。

 1年前、傷害事件を起こし俊介の周りから隔離されていた少女。

 その彼女は俊介の前で地面に座し、三つ指をつき、頭を垂れると、こう言った。


「もう一度、御側に仕えることをお許し頂きとうございます。俊介兄君」

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