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50妊娠? いいえ、してません!

 ――井川家。

 リビングのテーブルに着席する和姫、レイラ、美鈴、ましろの4人。

 長女である和姫が上座に座り、その周りを囲むように3姉妹が席についている。その手元には真紅の液体が注がれたグラスが置かれていた。要するにトマトジュースである。


 そのトマトジュースを、和姫は一口すすりながら、


「さて。皆様お集まりのようですので。妹会議を始めましょうか」


「はーい。でも、もうすぐお兄ちゃんが帰ってくると思うから、出来るだけ手短にね~」


「ええ、そうですわね」


 美鈴が手を上げて元気よく言うと、和姫は短く返事をした。

 妹会議……それは、和姫ら妹軍団が、いかに俊介を悪い虫から守るかという議論を交わす会議のことである。


 しかしここ最近は、瀬戸内恋華という思わぬライバルが出現してしまったので、もっぱら恋華への対策を講じていることが多い。もしくは……。


 グラスをテーブルの上に置きながら、和姫は「ふう」と一つため息を漏らした。


「短くして頂けるなら助かりますわ。わたくし、最近体調が少し優れませんの」


「な、ヒ、ヒメ。あなた、もしかして……」


 何かに気づいたようにレイラがそう言うと、和姫は、


「ええ。最近理由もなく吐き気がするように……」と、伏し目がちに答えた。


 すると、美鈴が目を丸くして、


「ヒメちゃんどうしたの? ご飯の食べすぎ?」


「ちがいますわ。貴女と一緒にしないでくださいまし」


 見当違いなことを言う美鈴を、キッと和姫はにらみ付けた。


「おそらく……ですが。わたくし、お兄様の子供を妊娠しています」


 フッと寂しげな笑みをこぼしながら、和姫が言う。

 美鈴は首を傾げて、


「えーっ! ヒメちゃん、いつの間に!?」


「心当たりはあります。最近、わたくしはお兄様と随分親しくしておりましたから。一緒にお料理を作ったり、一緒にお風呂掃除をしたり……」


「で、でも。それだけじゃ赤ちゃんなんて出来ないよ?」


「いいえ。多分、わたくしが眠っている間に、お兄様がわたくしの寝屋に忍び込み、性欲のはけ口にしていたのでしょう。わたくしとお兄様の部屋はお隣同士。知らぬ間に夜這いをかけられていても不思議はありません」


 おそらく、多分と言うわりには、具体的な妄想をする和姫であった。

 この場に俊介がいたら、「いいえ、そんなことしてませんよ!」と突っ込むところだったろうが。

 あいにく、今リビングには妹軍団しかいない。よって、この妄想会議を止める人物は不在ということになる。


 美鈴は、人差し指をピンと立て、自らの顎に当てながら、


「それなら、あたしにだって心当たりあるよ?」


「なっ、美鈴もですの? まさか、あなたもお兄様に?」


 慌てふためきながら問いかける和姫に、「うん」と美鈴は頷いて、


「あたしも最近、朝起きる時すごくお腹が痛いんだよね。痛すぎて、すぐに起きれないくらい」


 ……しばらく沈黙したあと、和姫は。


「それは別に、懐妊してるからというわけではないと思いますが?」


「えっ、そうなの? じゃあ、何でお腹痛いのかなぁ~」


「筋肉痛ではなくて? 貴方、寝る前によく腹筋をしているでしょう?」


「あっ、そっか! 確かに、あたし毎日寝る前に腹筋を100回くらいしてるもんね! なんだ~、お兄ちゃんが知らない間に種付けしたからじゃないのか~」


「そうよ」


「そうですわよ」


「そうだよー」


 レイラ、和姫、ましろの3人から、総ツッコミを受ける美鈴であった。

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