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【祝2000PV】魔王軍の法務部  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第11編:原点回帰編「真壁の心の負債」
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第39話 最初の"休暇申請書"

魔王城の大広間。

真壁の「辞退します」という言葉が、静まり返った玉座の間に響き渡った。

「なっ、何を言っているんだ!」

「あの巨大プロジェクトを、今更放棄すると!」

「英雄が敵前逃亡か!」

将軍たちが色めき立ち、非難の声が渦巻く。

ボルガとゼグスだけが、腕を組み、黙って真壁を見つめている。

真壁は、騒ぎ立てる将軍たちを制するように、言葉を続けた。

「理由は、私の能力不足、そして健康上の問題です。現状のまま続行すれば、私は倒れ、計画は頓挫し、魔王軍に多大な損害を与えることになります。これは、私が最も避けねばならぬ"契約不履行"です」

彼は、自分の胸に手を当てた。

「私は、私自身の"法"に違反しました。これ以上の職務続行は不可能です」

将軍たちの非難が、再び真壁に集中しようとした、その時。

「ふっ……くくく、あーっはっはっは!」

魔王ザイレムの、地を揺るがすような哄笑こうしょうが響き渡った。

「ようやく気づいたか、愚か者めが!」

ザイレムは玉座から立ち上がり、真壁を見下ろす。

「貴様が壊れれば、この軍の"頭脳"は失われる。貴様が倒れれば、貴様が築いた"法"は機能不全に陥る。聖法神王国の再建など、どうでもよいわ!」

魔王は、真壁を指差す。

「法務部長・真壁 仁。貴様の最も重要な仕事は、"生き延びること"だ。そして、貴様がいなくとも回る"組織"を完成させることだ。違うか?」

真壁は、魔王の言葉を受け、深く頭を下げた。

「……御意」

「よろしい」と魔王は頷いた。「辞退は承認する。プロジェクトはゼグスとアーカーシャに命じ、規模を縮小して再検討させよ」

そして、真壁は懐からもう一枚の羊皮紙を取り出した。

それは、彼が昨夜、リアナと共に作成した書類だった。

「つきましては、魔王陛下。私が制定した『計画的年次有給休暇制度』に基づき、本日より二週間の休暇を申請いたします」

魔王は一瞬きょとんとし、そして再び腹を抱えて笑った。

「許可する! 存分に怠けてくるがよい!」

法務部の執務室では、すでに引き継ぎの準備が進められていた。

休暇中の代理として、リアナ、クラウス、そして新たに副部長に昇格したゴブリンの情報将校が、山積みの書類をテキパキと仕分けている。

真壁は、彼らに向かって深く頭を下げた。

「……皆さん、留守を、よろしくお願いします」

彼らの顔には不安もあったが、それ以上に「任せろ」という決意がみなぎっていた。

「で、どこに行くんだよ?」

見送りに来たボルガが、ぶっきらぼうに尋ねた。

真壁は、簡素な旅支度を肩にかけながら、振り返った。

その顔には、前世では一度も見せたことのない、本当の笑顔が浮かんでいた。

「国境の温泉街です。……まだ一度も、使ってなかったので」

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、他にも作品を連載しているので、ご興味ある方はぜひご覧ください。HTMLリンクも掲載しています。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話等更新しています。

作者マイページ:https://mypage.syosetu.com/1166591/

Xアカウント:@tukimatirefrain

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