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【祝2000PV】魔王軍の法務部  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第11編:原点回帰編「真壁の心の負債」
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第37話 法務部の"ストライキ"

清潔な薬草の匂いで、真壁の意識が浮上した。

重いまぶたを開くと、そこは埃っぽいオフィスの天井ではなく、見慣れた魔王城の医務室だった。

「……ここは」

「目が覚めたか! この大馬鹿野郎が!」

怒声と共に、寝台の傍らにいたボルガがその巨体を乗り出してきた。その声は怒りに満ちていたが、それ以上に、深い疲労と焦燥がにじんでいた。

「お前がぶっ倒れて、法務部の連中がどんな顔してたか、分かってんのか!」

医務室には、ボルガだけではなかった。

ゼグス、アーカーシャ、クラウス。そして、リアナ。

彼らは真壁を囲んでいた。医務室の空気は、重苦しく張り詰めている。

「ボルガ将軍、抑えてください」

リザードマンのゼグスが、ボルガの肩を制した。その爬虫類の目に、いつもの冷徹さはなく、組織の危機を前にした険しさがあった。

「……法務部長。まずは、意識が戻られて何よりだ。だが、事態は深刻だ」

ゼグスは、あくまで事実を述べる口調で続けた。

「貴殿の不在と、それ以前の過重労働の蓄積により、法務部は現在、機能不全寸前にある。これは、貴殿自身が制定した『労働安全衛生規則』第12条に、組織の長自らが違反した結果だ」

「それは……プロジェクトが……」

「真壁殿」

真壁の言い訳を、アーカーシャの静かな声が遮った。

骸骨魔術師アーカーシャ眼窩がんかの奥で、青い魂の火が悲しげに揺れている。

「我らは、貴殿が築いた『法』を信奉した。だが、その法を、制定者自らが踏みにじった。……我らは、貴殿の"道具"ではないはずだ。貴殿がそう、教えてくれたのではないか」

最後に、ドワーフのクラウスが一歩進み出た。彼は、医務室の床を睨みつけ、ごつごつした拳を握りしめている。

「法務部長……いや、真壁さん」

彼は、あえて役職ではなく、名前で呼んだ。

「あんたは俺に、"立ち止まる勇気"をくれたじゃねえか。不当な労働には『ノー』って言っていいんだと……」

クラウスは顔を上げ、真壁をまっすぐに見た。その目は潤んでいた。

「……なのによぉ、なんであんたが、あの時の……ボルガ将軍の部下たちみてえな、死んだ目をしてんだよ! 俺は……俺たちは、そんなあんたを見たくねえ……!」

仲間たちの言葉が、鈍器のように真壁の胸を打つ。

(違う、俺は、皆のために……成果を出さなければ、俺の価値が……)

前世の強迫観念が、必死に反論しようとする。

「だが、仕事が……聖法神王国の再建は、待ってくれないんだ。俺がやらなければ……!」

「――やめてください、部長」

その言葉を遮ったのは、リアナだった。

彼女の手は、震えていた。その手には、一枚の羊皮紙が握られている。

「もう、それ以上、ご自分を貶めないでください」

彼女は、泣きそうな顔を必死にこらえ、真壁の目の前に、その羊皮紙を突きつけた。

かつて、ある部下を上司の不当な扱いから守るために制定した、『職場におけるハラスメント防止規定』。

「『権威的地位を利用した、精神的・肉体的苦痛を与える過重な業務の強制は、これを"パワー・ハラスメント"と定義し、厳にこれを禁ずる』……」

リアナは、震える声で、しかしはっきりと告げた。

「私たちが、あなたを止めます。あなた自身の、"法"の名において」

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、他にも作品を連載しているので、ご興味ある方はぜひご覧ください。HTMLリンクも掲載しています。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話等更新しています。

作者マイページ:https://mypage.syosetu.com/1166591/

Xアカウント:@tukimatirefrain

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