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【祝2000PV】魔王軍の法務部  作者: 月待ルフラン【第1回Nola原作大賞早期受賞】
第6編:初の転職者(キャリアリクルート)編
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第20話 門前の“敵性人材”

国境都市リベルタスの魔王軍駐屯地は、前代未聞の事態に見舞われ、大混乱に陥っていた。

原因は、たった一人の人間。

ボロボロに傷ついた「銀獅子騎士団」の鎧をまとい、門前に崩れ落ちたその騎士は、駆けつけたオークの衛兵に対し、震える声でこう告げたのだ。


「――転職、したい」と。


報告は、瞬く間に魔王城の中枢、最高幹部会議にまで達した。


「馬鹿も休み休み言え!」

玉座の間に、ボルガの怒声が響き渡る。「問答無用で斬り捨てろ! スパイに決まっているだろうが!」


彼の意見に、多くの将軍が頷いた。

「人間など、信用できん」

「我らの同胞が、どれだけ奴らに殺されたと思っている」

長きにわたる戦争の記憶が、彼らの心に根深い拒絶反応を刻みつけている。


「ゼグス、お前の意見は?」

魔王ザイレムが水を向けると、リザードマンの将軍は、冷徹な目で答えた。

「…生かしておくリスクと、殺すリスク。どちらも不明瞭です。ですが、一人を受け入れれば、第二、第三の者が現れる可能性は否定できません。管理コストが増大します」


誰もが、この“敵性人材”の受け入れに否定的だった。

その中で、魔王は、ただ一人、沈黙を守っている男に視線を向けた。


「法務部長マカベよ。貴様の意見を聞かせよ」


全ての視線が、俺に集まる。

俺は、静かに立ち上がり、一同を見渡した。


「皆様。これは、好機です」


その一言で、会議室の空気が変わった。


「敵対組織から、人材が流出してくる。それは、我々の組織が、彼らの組織より優れているという、何よりの証拠ではありませんか?」

俺は、冷静に続けた。

「彼を、正当な手続きをもって受け入れる。そして、その事実が人間領に広まった時、何が起こるか。それは、人間社会を内側から揺さぶる、これ以上ない“広報戦略”となり得ます。剣を交えずして、敵の組織を弱体化させるのです」


ボルガが「しかし、スパイだったらどうする!」と食い下がる。


「そのために、“面接”をするのです」

俺は、きっぱりと言い切った。「彼の持つスキル、そして、彼の忠誠心を、我々が見極める。そのための、初の『中途採用面接』の実施を、ここに提案いたします」


“広報戦略”、“中途採用面接”。

将軍たちが、聞いたこともない単語に戸惑う中、玉座の魔王ザイレムが、初めて愉快そうな笑みを浮かべた。

「…面白い。実に面白い発想だ。よかろう、マカベ。その人間、貴様に全て任せる。我が軍にとって、益となるか、害となるか。その目で見極めてみせよ」



会議の後、俺はリアナ・フォルセに呼び止められた。

彼女は、その謎めいた瞳で、俺に告げた。

「…銀獅子騎士団、ですか。人間たちの間でも、悪名高い組織ですよ」


「悪名高い?」


「ええ。上官の手柄のために、部下は使い捨てにされる。補給は常に滞り、兵士たちは自腹で装備を整えているとか。騎士団というより、巨大な傭兵崩れの集団…“ブラック”な組織、とでも言いましょうか」

彼女は、俺にしか分からない言葉で、小さく笑った。


「彼の話には、聞く価値があるかもしれません。…あなたの、その目で」

リアナの情報は、俺の仮説を裏付ける、重要な追い風となった。



そして、運命の面接が始まった。

場所は、玉座の間に隣接する、静かな一室。

そこには、ただ一つのテーブルと、二つの椅子が置かれているだけだ。


緊張した面持ちで椅子に座る、人間の騎士。

その向かいに、俺は静かに腰を下ろした。


前世で、何度も、何度も、屈辱を味わわされた光景。

だが、今、俺は、力なく俯く側ではない。

相手の未来を、その手で左右する側にいる。


俺は、前世の記憶をなぞるように、静かに、そしてプロフェッショナルに、彼に告げた。


「――では、始めましょう」


「当軍を志望した動機と、あなたの持つスキルについて、具体的に説明してください」

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、他にも作品を連載しているので、ご興味ある方はぜひご覧ください。HTMLリンクも掲載しています。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話等更新しています。

作者マイページ:https://mypage.syosetu.com/1166591/

Xアカウント:@tukimatirefrain

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