書籍発売記念SS
本日1/18、NiμNOVELS様よりに『加護なし聖女』の書籍が発売しました!
WEB版から沢山加筆しました!なんと、結婚式まで…!
コミカライズも進行中です!
これも皆様の応援のおかげです! ありがとうございます♡是非お迎えいただけると嬉しいです……!
「レイミア、一つ聞きたいことがあるんだが」
「……? はい、なんでしょう?」
──とある日の夜。ブランの部屋での出来事だった。
湯浴みを終えたブランの髪の毛をタオルで乾かしていると、突然部屋に入ってきたヒュースが話しかけてきた。
幸せそうな表情をしていたブランは、急にぷくっと頬を膨らませる。
「ねぇ、ヒュース! 今の状況見て分かんないの? レイミアは僕の髪の毛を乾かしてるんだよ! 質問なんて後にしてよ!」
「知らん。自分で乾かせ。いつまでもレイミアに甘えるな」
「あはは……。まあまあ、二人とも……」
顔を見合わせればいつも喧嘩するんだから……。
レイミアはそう思いながらも二人を落ち着かせ、「それで、聞きたいことって何でしょう?」とヒュースに問いかけた。
「レイミア、酒は飲めるか?」
◇◇◇
ブランが眠りに就いた後、レイミアはヒュースの部屋にお邪魔していた。
あまり生活感のないヒュースの部屋。焦げ茶色の革のソファに腰を下ろしたレイミアは、お高そうなローテーブルに置かれたワインボトルと二本のグラスをジッと見つめる。
「ヒュース様、準備をさせてしまって申し訳ありません。それで、このワインがそうなのですか……?」
「ああ、そうだ。この国の酒で最も度数が低く、甘味も強くて飲みやすいと言われている」
というのも、約一時間前のことだ。
──『レイミア、酒は飲めるか?』
そうヒュースに質問を投げかけられたレイミアは否と答えた。
この国では、十六歳で成人の仲間入りになり、飲酒することが可能になる。
そのため、すでに十八歳を迎えているレイミアはこれまでもお酒を飲むことができた。
だが、加護なし聖女として神殿で虐げられてきたレイミアに機会は訪れるはずもなかった。
そんなレイミアにヒュースは、嫌でなければ一緒に飲んでみないか、と誘ってくれたのだ。
レイミアはもちろんですと二言返事をし、今に至る。
「少しでも気分が悪かったら、すぐ言うように」
「はい」
レイミアの隣に座るヒュースは、慣れた手つきでグラスにワインを注ぐ。
二つのグラスにワインが注がれると、二人はそれを手にとって、軽くグラスを合わせた。
「では、いただきます!」
「ああ。少しずつ飲むようにな」
レイミアはコクリと頷くと、ワインを口内で味わってから、ゴクリと飲み込んだ。
「ヒュース様っ! これ、とっても美味しいです……! 葡萄の香りがふわーっと鼻の奥に広がって……。こんな美味しい飲み物を今まで知らなかったなんて……!」
「ふっ、それは、良かった。そんなに喜んでくれるなら、もっと早く誘えば良かったな。すまない」
「いえ、謝らないでください……! むしろ、ありがとうございます」
レイミアはワインの美味しさに感動して、注いでもらいであった分をすぐさま飲み干す。
ヒュースも続くようにしてワインを飲み干すと、次はレイミアが空になった二つのグラスにワインを注ぎ始めた。
「初めてなのに、まだ飲んで大丈夫なのか?」
「大丈夫……だと思います! 今のところ、体が熱くなる感じも、頭がくらくらする感じもありませんし」
「それなら良いが……チーズやナッツもたまに食べるように。それと、たまに水も飲め。良いな?」
「はいっ! ではヒュース様、もう一度乾杯しましょう!」
それからレイミアは、ヒュースと談笑を交わしながら、美酒を味わった。
どれだけ飲んでも酔っ払う気配はなく、もしかして私ってお酒に強いのかしら? とレイミアが思い始めた頃、一方でヒュースの頬はほんのりと色付き始めた。
「ヒュース様、大丈夫ですか? お水を飲まれますか?」
「…………いただこう」
「は、はい!」
頬の色づき、ややとろんとした瞳。いつもに比べて格段に遅い返答のヒュースに、レイミアは確信した。
「ヒュース様、酔っていらっしゃいますか……?」
「…………だいじょーぶら。……だ」
(絶対酔ってる……!)
言い直しているが、舌足らずになっている時点で、胡麻化しは無意味だ。
とはいえ、ヒュースが時折ワインを嗜んでいることを、レイミアは知っている。
体調や気分が悪くなったこともないと過去に聞いたていたので、ワインを取り上げるまではしなくても構わないだろう。
(……それにもう少しだけ、酔っ払ったヒュース様を見ていたいもの)
いつも紳士的で、大人で、格好いいヒュースのこんな姿は貴重だ。
レイミアはニコニコと微笑みながら、ヒュースの様子をじっと観察する。その時、ふととある疑問が浮かんだ。
「そういえば、どうして急にお酒を飲もうって誘ってくださったんですか?」
再三だが、ヒュースは時折ワインを嗜む。
しかし、一緒に飲もうと誘われたのは今回が初めてだった。これと言ったきっかけがあったわけではないというのに。
レイミアの質問に、ヒュースは少し考える素振りを見せてから、口を開いた。
「レイミアは、ブランをあまやかすだろう……?」
「そう、ですね?」
ブランが口を開ければ、お菓子を食べさせてあげたい。
目を擦っていたら、寝かしつけてあげたい。
出かけた際にブランが疲れた時は、抱っこしてあげたい。
──確かにレイミアはブランをわりと甘やかしているかもしれないが、レイミアをお酒に誘ったのとなんの関係があるのだろう。
レイミアが小首を傾げると、そんな彼女の手をヒュースはそっと握る。
酔っ払っている影響だろうか。ヒュースの手は熱を帯びたみたいに温かかった。
「だからわたしは、そんなレイミアをあまやかしたいとおもって……」
「えっ」
「だが、レイミアはさいきん、こうしゃくふじんとしてのべんきょうにいっしょうけんめいだったり、ブランをあやまかすことにいそがしくて、わたしにあまえてくれないから……もしかしたら、よえば、あまえてくれるかもと……」
「……!?」
熱っぽい瞳を向けながらそう話すヒュースに、レイミアはギュッと胸を鷲掴みにされた。
(嘘でしょう……? ヒュース様がそんなふうに思ってくださっていたなんて……)
ヒュースは公爵の爵位を持ち、人望もある。
そんなヒュースの隣に立っても恥じない人間になるために、ここ最近のレイミアは公爵夫人としての勉強に励んでいた。
空いた時間は魔物を森の奥に追いやるために言霊の加護を発動したり、ブランを甘やかしていたりで、確かにヒュースに甘える時間は少なかったように思う。
「そんな、したごころをもってさけにさそったわたしのことを、きらいになるか……?」
不安なそうな表情で問いかけてくるヒュースに、レイミアは首を横に振った。
「なるはずありません……!」
「……!」
「今日はたくさん、甘えても良いですか……?」
「……っ、ああ」
それからレイミアはヒュースと向い合せになるようにして、彼の膝の上に乗って、むぎゅっと抱き着いた。
「いっぱい抱き締めてください」
「……ああ」
「それと、頭をなでてほしいです」
「……ああ、いくらでもなでてやる」
密着したからこそ伝わる互いの体温。直ぐ側にある吐息。
幸福感に満たされたレイミアは、ひょっこりと顔を上に向けて、上目遣いでヒュースを見つめた。
「キスも、したいです」
「……っ」
「頬やおでこじゃ、嫌ですからね?」
「〜〜っ、しあわせだ……」
「……ふふ、私も、とっても幸せですよ、ヒュース様」
その日を境に、ヒュースはレイミアに甘えて欲しくなると、ワインを飲もうと誘うようになった。
レイミアは酒の耐性がめちゃくちゃ強くて酔うことはなかったけれど、ヒュースとの甘い時間には酔いしれた。
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