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6話  「なんかきた(後編)」

 1******


聖女「せっかくニワトリの悪魔さんからいいタマゴを貰ったので、料理を作りましょう」


魔女「アンタ、悪魔のタマゴを容赦なく割っていくわね……」


聖女「料理は思い切りが肝心ですからね」


魔女「うん。言葉の使い所まちがえてるわね」


悪魔「ああ、目の前で無残に調理されていく子どもたち。どれだけ美味に仕上げられるのか……これぞ悪魔的快感ですね!」


聖女「もう少し待ってくださいねー。すぐに美味しい天ぷらができますから。ちょうどいいタコもあったんですよ」


魔女「全ッ然タマゴがメインじゃない料理を選んだわね! っていうかそのタコも悪魔じゃないの!」


悪魔「ああ! ぞんざいに扱われる子どもたち……悪魔気持ちいい!」


魔女「アンタは悪魔を名乗る前に悪魔の意味を辞書で引け!」




 2******


少女「メルウお姉ちゃん、もう落ち込みモードは終わったの?」


聖女「はい。やはり聖女的にいつまでも暗い気持ちでいるわけにはいきません。争いも厳禁です。怒りや嫉妬の心など持たずに、相手を尊重する。それが聖女の在り方ですからね!」


少女「わあ、立派な考えだねー」


魔女「悪魔を尊重する聖女は色々とどうかと思うわよ、わたしは」


少女「まあまあ、悪魔でも聖女みたいなのいるし」


魔女「そうなの?」


少女「うん。人間を安心させて、油断しているとこを頭からボリボリ食べちゃうの」


魔女「それはとても真っ当な悪魔だから一緒にしないであげて」




 3******


聖女「できました! 新鮮タマゴを使ったタコの天ぷら、ディアボロ風です! 軽い食感にしたので、朝食の添え物にぴったりですよ!」


魔女「……見た目が普通な天ぷらなことが奇跡のようだわ」


少女「ディアボロ風ってなんなの?」


聖女「簡単に言うと悪魔的ってことです。ほら、産んだタマゴを使った料理を本人に食べさせるって、ちょっと悪魔みたいな残虐さがありません?」


魔女「ちょっとどころじゃないわよ。っていうかディアボロ風ってそんな意味じゃないから!」


悪魔「――これは! 何という美味! ピリッとした風味が素晴らしいですね!」


魔女「アンタは一番乗りで嬉しそうに食べてんじゃないわよ!」




 4******


魔女「どうしてアンタが召喚した悪魔には真っ当なのがいないのよ!」


少女「ひどいよティアお姉ちゃん! あたしはちゃんとした大悪魔なのに!」


聖女「フェルの召喚は、私も全力を出しましたからね! えへん!」


魔女「今のところフェルって覗きしかやってないわよ。それでわかる情報ってアンタに幼女趣味があるかもってことだけなんだけど」


聖女「えへへー」


魔女「ちゃんと否定しなさいよ!」


少女「ひどい! あたしそんなに子どもじゃないもん!」


魔女「アンタが否定するの!?」


少女「子どもじゃないもん!」


魔女「わ、悪かったわよ。そんな何回も言わなくていいじゃない」


少女「大事なことだもん!」




 5******


悪魔「それにしてもこの天ぷらは本当に美味しいですね」


魔女「アンタ黙々と食べてたわね……いやもう何も言う気が起きないけれど」


聖女「私たちも冷める前に食べましょう! その何があっても揺らがない悪魔さんの姿勢は、聖女として見習わなければいけませんね」


魔女「その前にこの家で聖女と悪魔の関係が揺らぎまくってることに気付いて?」


悪魔「さて、お腹いっぱいです。美味しく頂いたことですし、ここで私の悪魔としてのスーパーテクニックをお見せしましょう――カムバックタマゴちゃん!」


少女「わ。天ぷらがバラバラになって、割れた玉子がみるみる元に戻っていく……!」


悪魔「私は鳥の王。タマゴを生かすも殺すも私の思うがままです」


聖女「……ごはんの恨み!!(食べ物で遊ぶのは聖女的にNGです聖女ウィップスラッシュ!)」


悪魔「ウヘン、羽根がボロボロに!」


少女「メルウお姉ちゃん本音がだだ漏れだよ」




 6******


聖女「ダメ押しの聖女ウィップクラッシュ!」


悪魔「死体蹴りをされる人たちに愛の手を!」


魔女「ボロボロになってもウザいままなのはもう才能ね……」


聖女「食べ物で遊んではいけません!」


少女「わー、メルウお姉ちゃんがいつになく真面目!」


魔女「待って、コイツ前にわたしのごはんに変な薬混ぜ込んでたことあるから」


聖女「それは愛を混ぜ込んだだけですからセーフです!」


魔女「そのガバ判定が免罪符になるとでも思ってんの?」




 7******


聖女「いくら自由気ままと言ってもしょせんこの世の理は弱肉強食。力のない者は鶏肉加工される定めにあるのです」


魔女「えらい限定的な定めね……」


聖女「まずは聖人になれるくらい実力を磨いてから行動するべきでしたね。私みたいに! 私みたいに!」


魔女「アンタ自分が聖人だっていう自覚があったの!?」


聖女「いつもいつも聖女って言ってるじゃないですか」


魔女「アンタの言う聖女は適当すぎるのよ。毎年発売されるワインのキャッチコピーみたいなもんでしょ」


少女「ごめんティアお姉ちゃん、それわかりにくい」




 8******


悪魔「私はもうダメです」


少女「少しはしゃぎすぎたね。あの二人は天ぷらが食べたくなったって作り直しに行ったよ」


悪魔「おお、あなたも悪魔ですね。それも相当にランクが高い」


少女「まあね。変な聖女様に召喚されたせいで、満足に力が出ないけど」


悪魔「……それでもあなたは、この世界に災禍をもたらす為に残るのですか?」


少女「どちらかというとあの二人が面白そうって理由が大きいけどね。もちろんチャンスがあれば容赦しないよ。あくまでも、あたしは悪魔なんだからさ」


悪魔「悪魔だけに?」


少女「え、トドメ刺して欲しいって?」


悪魔「いえ好物はササミの刺し身です」


少女「本当にぶっとばすよ!?」




 9******


悪魔「いい加減トサカにきました。実家に帰らせてもらいます」


魔女「あー、うん、そう。まあ勝手にすれば?」


少女「ティアお姉ちゃんがツッコむのに疲れちゃってる」


聖女「悪魔さん。色々ありましたけど、なんだかんだで私はあなたと話すのは楽しかったですよ」


魔女「アンタはもうちょっとマトモな奴を召喚するようになさいよね」


悪魔「今の召喚方法だと難しいと思いますよ?」


魔女「は? どうしてよ? っていうかアンタ、自分でマトモじゃないって認めちゃうのね」


悪魔「だって私、召喚者の性質に似るよう召喚されましたし」


魔女「……は!?」


悪魔「それではまた会う日まで。次こそは鳥に天下を――」


魔女「…………」


聖女「あれ~? おかしいですねえ~?」


魔女「結局アンタが元凶なんじゃない!」

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地の文があるもう少しちゃんとした小説もあります↓↓
『誰が魔王を殺したか?(犯人は私じゃない、私じゃないから!)』 (小説情報
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