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きよし、ついに兄貴と激突する

【前回までのあらすじ】

 主人公のきよしは、水洗便所に流されて絶命。死んだ爺ちゃん(うんこ神)のおかげで剣と魔法の世界に転生した。清はパンダ獣人のパンパンと依頼をこなす中、自分が「うんこがたまるほど強くなる、かつ、うんこの性質を追加能力にする」ということを知る。次の依頼の最中、野球帽の少女エーリカとオネエ熟練戦士ルアーナとパーティを組むことになった清とパンパン。彼らは冒険者武闘大会『ギルドバトル』に参加する。無事に予選を通過した清たちだが、特殊な事情で本戦の一回戦の相手、最高マックスに稽古をつけてもらうことになった。そしてついに一試合目、清たちアナルパンダぶりぶりーず!とマックス兄貴が激突する!


挿絵(By みてみん)

      ◇


 大会第一日目。気候晴天。南東風ときに強し。

 

 ビッグ・シティスタジアム。別の名を巨人の闘技場。

 

 その巨大な決闘場は、今、数万にも及ぶ人間で埋め尽くされている。


 今まさに、清達のギルドバトル本戦が始まろうとしていたのだった。


 『本日の第一試合は第一試合から盛り上がりましたねえ。レミラスさん。大物魔法配信者VS尊文。魔法大物配信者の不思議なダンスと歌声に、チーム尊文の選手たちは錯乱。その隙きに畳み掛けた魔法大物配信者が勝利しています!』


『第二試合のひまわり幼稚園VSデュエリストキビナの試合は圧巻デシタね。神童けんたの圧倒的な速攻は痺れマシタ。デュエリストキビナは得意のカード攻撃を完封されてしまいマシタね』


『将来が非常に楽しみな選手ですよねぇ! 第三試合はチームうんこしたいが集団食中毒でお腹を壊したらしく、唐揚げにレモンかけるな、の勝利となっています』


『下痢と言えばカンピロバクター、鶏肉ですから、なんとも皮肉な敗退デスネ』


『ですねー。はい、それでは皆様おまたせしました! 本日の第四試合アナルぱんだぶりぶりーず!VSシーライダーwaveの準備が整ったようです』


『本日では最も注目のカードデスネ。今日もルアーナ選手が欠場なのは気にかかりますが、話題性抜群の御手洗選手擁するアナルぱんだぶりぶりーず!と実質白金階級の最高マックスの試合ですカラネ』


 闘技場中央。俺たち三人の眼の前には波の絵が描いてある短パン一丁の兄貴が立っている。焼けた肌に鍛え抜かれた肉体、金のアクセが太陽の光を反射する。刈り上げに剃り込み、でけえサングラス、立派な顎髭。脇に抱えたボードは純白。ファッキン決まってるな。


 気づいてみれば自分らの試合。今日は時間が経つのがえらく早かった。


 青い空を雲が結構な速度で流れてゆく。頬を撫でる風は昨日よりもずっと激しい。俺が着ている茶色の冒険者服がなびく。内側の胸ポケットには、針なし、かつ栓をした注射器が最後の保険として忍ばせてある。これが俺の秘策だ。


 パンパンはいつものレザーアーマー。エーリは野球帽に真紅のマント、そして魔法少女服。派手派手じゃなくて控えめな紺色のやつだ。どちらもなかなか良い目をしてる。修行の成果を見せてくれよ。


 会場の雰囲気は正直予選会なんてもんじゃない。まず観客の数が倍近くに増えてて基本的に空き席はない。各都市のイメージカラーの応援垂れ幕が下がり、有名チームや冒険者には固定ファンまでいる。俺の場合は、固定アンチがいて相変わらずブーブーやかましいし、【御手洗汚し!】みたいなふざけたプレートを掲げてるけど、今の集中度ならそれほど気にならない。さすがに試合中にケチャップ投げてこないだろうしな。


 昨日のことを思い出す。ルアーナ曰く、勝利の秘訣はいかに最高マックスの油断をつけるか、だ。晩御飯を食べてる時に、正攻法ではまず勝てないと言われた。今日、あのホモはここにいないけど、華麗に勝って見せて大目玉食らわせたいところだ。てか、あいつチームなのに一回も一緒に戦ってないじゃん。


 ホモのことはまあいい。今は兄貴のことだけが問題だ。風乗りマックス、兄貴の本職は波乗りだけどおそらく風にものることができるのだろう。そうじゃなくてはこんな闘技場でボードを用意する意味もない。もちろんそれを踏まえて俺たちも作戦案を立ててある。


『ピリピリとした緊張感のもと、お互いが向かい合っています』


『レフェリーが両者にルールを説明し離れます』


 ついにこの時が来た。兄貴、胸を借りるぜ。最初から出し惜しみせず行かせてもらう。清、遠慮すんなよ。兄貴の口がそんなふうに動いてる気がした。


『さぁ、運命のゴングです』


 一瞬スタジアム全体がやばいほど静かになる。遠慮なんかしねえよ。俺の未来がかかってるんだからな。


 カーーーーン。


「「「OOOOOOOOOOOOOOO!」」」


 高いとも低いとも言えない金属音が会場に響き渡った。一気に観客達のボルテージが湧き上がる。


 その瞬間、俺も兄貴も叫んでいた。


俺様なら行くぜ(THE・MAX)ッ!」 

便性変換ブリブリストルコンヴァージョンッ、破竹の型ビッグベンスタイル・バンブーフォーム!」


『両者なんという魔力と気、マックス選手、御手洗選手ともに初っ端からフルスロットルだァァァァっ!』


 兄貴の全身を包むように青い魔力と白い気が渦巻き、ビーチサンダルで地面を蹴る。飛び上がった距離は十メートル以上。抱えていたボードが舞い上がり、特訓の時と同じで、太陽が兄貴で隠れる。そして輝く金アクセ。脱ぎ捨てられるサンダル。


 エーリとパンパンが俺の斜め後ろにそれぞれ散開する。兄貴を空で迎え撃つには違う地点から撃ち続けるのが効果的なはずだ。


 俺は天に拳を突き出す。全身に若竹の生命力を感じる。突き出した拳に魔力を込めていく。いい感じだ。これなら捕れる。


「風に乗るのは好かねえが、許せよブラザーッ!」


 風が吹く。


 天に舞い上がった兄貴はそのままボードの上に着地すると、まるで波に乗るかのような姿勢で俺の方へ滑空してくる。加速するボードは青い魔力に、それを支える兄貴の身体は白い気で強化されてる。風を受けた短パンはバサバサと音を立て、俺に超速で急降下してくる。器用なことするもんだぜまったく。


 だがこれは想定してたことだ。


「なめんなよ兄貴。根捕縛(ルーティング)ッ!」


 俺の拳が緑色に発光し、開いた手のひらから竹の根が上空に伸びてゆく。数本の根っこは毒蛇のようにうねり、兄貴を束縛しようと爆進する。


『ななななんとぉ! 御手洗選手とんでもない切り札を隠していたッ! まさかの植物系能力の持ち主だったのかぁぁぁぁ!』


 竹の根の一直線上の兄貴。真っ白なボードの鋭い先端は俺の額に向かっている。俺は笑みを浮かべる。兄貴にこの技を俺は一度も見せていない。このままなら確実にかち合う。強靭な竹の根、並大抵の力では引きちぎれない。捕まえてしまえば兄貴は一人。どうということはない。


 だが兄貴は、腰をかがめ、さらなる加速体勢に入る。その口角がわずかに上る。そして口元が動く。


 ――甘えんなよブラザー、と。


「!」


「ッシャアアア!」


 兄貴の魔力が指先に集まり、蒼く鋭く輝く。俺の根は兄貴の眼の前まで迫ったが、腕を振るった兄貴の魔力に触れた瞬間、“完全に切断された”。ボードに巻き付こうとする根も接触する前に、兄貴の魔力に触れた瞬間切り刻まれ、宙に散る。


 なぜ斬られた?


 そのまま兄貴は加速し、右の拳を握り、大きく振りかぶり、それに膨大な気を込める。上空から加速し続けた速度、ボード+兄貴の身体の質量、ヤバ過ぎる気。間違いなく確殺の拳!


 やべえッ!


 俺は咄嗟に腕を引っ込め、その場から横っ飛びする。回避が間に合うか?


「タケバースト・速射ラピッドファイヤッ!」

「とりゃあぁぁぁ!」


 俺を守るための咄嗟の機転で、タケノコ砲弾と、レーザービームみたいな速さで閃光小石が交差するように兄貴へ飛翔する。タケノコ砲弾はボードに当たるが、やはり瞬間的に切り刻まれる。小石に関してはボードをかするだけで直撃には至らない。


 俺がさっきいた場所を、超速の兄貴が白い残像となって通過する。通り過ぎただけで爆風が巻き起こり身体がのけぞりそうになる。兄貴は既に反対側の上空で風にのっている。青い空に白いボードが映える。反撃の余地すら残さない一撃離脱。


 なるほどコイツは強えわ。


 俺は起き上がって、パンパンとエーリに指でサンキューと合図する。多分、二人の機転がなかったらすでに俺は地面に転がってた。


『風乗りマックスッ、なんという一撃必殺の急降下攻撃ッ! 無念、御手洗選手ッ! 今まで隠していた上空への攻撃も完封されていますッ! 』


「「「WAAAAAAAAAAAAAAAAA!」」」


 観客が歓声を上げドンドンドンと興奮して太鼓をならす。兄貴は観客の前を横切るようにゆっくりと空中を旋回する。


「不思議なようだなブラザー。なぜ斬られたか」


 兄貴が指先に魔力を込める。青い光が集まると同時にプーーーンという小さく高い音がする。なるほど、そういう仕掛けか。


「超音波カッターか。たしかにそいつも波だ」


「グッドスチューデントッ! んじゃ次、行くぜオラァぁッ!」

 

 親切にも種明かししてくれた兄貴は、予備動作として一撃目よりも高く高く上昇していく。流れる雲とボードの白色が同化する。


 まじかよ、さっき以上の速度で来るのかよ。さすが“最高”にクレイジーだぜ。


 ならば仕方ない。プランBだ。幸い兄貴の戦法は一撃離脱。


「パンパン、エーリッ。頼んだッ! 吸竹の相!」


 俺は大地に手のひらを当てると、魔力をそこに集め一気に竹の根を生み出す。


「らああああああっ」


地中に大きく無駄のないように根を広げる。約二日ためたと言っても俺の今の便意は六十%といったところか。基礎身体能力は最高まで高まっているわけではない。だが、それを一気に最高点まで持っていく方法がある。


 それは即ちこの吸竹の相である。この技は、対象に根をはることによってそこから水分や栄養分を吸収し、その養分は俺の腸内へと還元される。つまりこれは暴食の技。もって十分、短期決戦の技。脱糞のリスクと引き換えに、便意の頂点まで俺を導き最高のパフォーマンスを発揮するッ。


「ああああああああああ!」


 大地から水分、養分を根こそぎ奪い取る。腹部が膨満していき、異物の侵入に俺の腸が激しく蠕動する。もちろんそれは腹痛以外の何物でもないが、俺の全身から立ち上る魔力と気は、燃え広がる山火事のように刻一刻と増大していく。あと三十秒。パンパンとエーリが時間さえ稼いでくれればいける。


『な、なんだこれは! 御手洗選手、地面に手を置いたかと思うと爆発的に気と魔力が増えていっている! こんなの前代未聞だーーーっっ!』


『おそらく植物系能力ですから、地面の養分を吸っているのかもしれませんネ。しかし、彼は予選でのイユ選手との試合では、魅了系チャームの能力かと思ったのデスガ、これは分かりませンネ』


「「「BOOOOOOOOOOOOO!」」」


 なんかするたびにディスられんのはちょっとむかつくぜ。


 兄貴が空の頂点達した時、彼のボードがいったん停止し、もはや凶器でしかない先端がギラリと輝く。それはしっかり俺の方を向いていて攻撃を予告してくれてる。二回目も狙いは律儀に俺みたいだ。セオリーなら後衛のエーリやパンパンを狙うのがベストだろうが、これは兄貴のこだわりだろう。


 散開してたパンパンとエーリが集まる。小石も当たらないし、タケノコも切り刻まれるとなれば別々に撃つ意味はない。


「タケプロダクト、調理済み(cooked)!」


 パンパンは一見なんの変哲もない大きめのタケノコを手のひらから生成すると、そいつをほいっとエーリの方に投げ渡した。エーリはそいつを片手で受け取ると、すぐに投擲体勢に入る。


「シャアアアアアアッ!」


 風に乗って舞い上がった上空の兄貴は、超速で急降下をし始める。魔力はさっき以上、力強さといい、もはやジェット機みたいな迫力だ。


『御手洗選手ッ、なんとその場から動かないッ! 風乗りマックスの一撃を受け切るつもりかぁぁ?』


 俺だってそんなアホな真似はしねえよ。見せてやれエーリ、パンパン。アナルパンダぶりぶりーずは、御手洗清だけじゃないって。


「おんどりゃあああああああああああああああああああああああッ!」


 エーリが右手で持つタケノコが真紅の光で輝く。高い位置からのリリース、全身を使った美しいフォーム。そいつは上空へ射出される。リリースされた瞬間、パアンッと威力を物語るような小気味よい破裂音が周囲に響き渡る。真紅のタケノコは流れ星みたいに尾を引いて、剛速で兄貴を迎え撃つ。


「フールの一つ覚えッ! ガールの威力がファッキンクレイジーだとしても、俺様にそいつ(タケノコ)は当たらねえよッ!」


 風にのって急降下する兄貴は微妙に身体を倒し、俺にたどり着くまでの軌跡を微妙に曲がった軌道にする。これでタケノコが通るはずの場所を兄貴は通らない。つまり当たらない。


 ……と思っただろ?


「「タケバーストッ・コラボ! 散弾砲(ケースショット)ッッ!」」


 パンパンとエーリが叫ぶ! 飛翔中にタケノコ弾の皮が空気との摩擦で燃え尽き、中身の、すでにカットされたタケノコが高速の散弾となって空中に広がる。兄貴に襲い来る数多のタケノコ片は、すべてエーリの魔法で紅く強化されており、超音波くらいでは切れはしないはずだ。


「なっ!?」


 試合が始まって、兄貴の顔がはじめて驚きの表情に包まれた。驚くのはまだ早え、これはまだ布石だ。

 

 

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