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花言葉ものがたりより「シモバシラ」
鬱蒼とした針葉樹に囲まれた参道は、長く急な階段だ。
私は毎朝、参道の入り口で手すりに腰を預け、朝練の野球部員たちがやってくるのを待つ。
きりりと冷たい冬の朝の空に、彼らの足音が聞こえだす。
「先生、今日も来てるんですか」
声をかけてきた部長の藤堂は、あきれ顔を隠そうともしない。
「もちろんだ」
「顧問でもないのに……今日、むうっっちゃくちゃ寒かったですよね?」
「しかしだ、君たちの健気な姿を見ることは、私の創作意欲をかきたてるのだ」
私の言葉に、ひょうきん者の生徒が胸元を隠すようなしぐさをしながら「きゃあ」と、気色の悪い声を上げた。
「誰もお前に、絵のモデルになれなどとは言わないぞ」
生徒たちは笑いながら、一人、また一人と急な階段を駆け上がっていく。
彼らの邪魔にならないようにそっと移動すると、足元で霜柱が小さな音を立てた。
シモバシラという植物があります。
開花時期は夏になりますが、枯れてしまった茎が水を吸い上げてシモバシラに霜柱ができるそうです。シモバシラはは夏と冬に、白い花を咲かせるのですね。





