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花言葉ものがたりより「紫陽花」

「おや奥様、一足違い」


 もぬけの殻の社長室。秘書が、胡散臭い笑顔で私を出迎えた。


「待っててって言ったのに」

「わがままを言っちゃあいけません、大事な会議があったのです」

「で? 私はスケベジジイと一緒に食事をすればいいのね?」


 夫の大事な取引先とやらの。


「佐奈さん……」

「なによ?」

「いえ、よく社長に本性を見破られずにいると思って」

「あなたにはわかってるっていうわけ?」


 横目で睨んだのに、男に怯んだ様子はない。

 まあ『ご主人さま、お帰りなさいませぇ』なんて台詞を吐いていた頃の私を知っているのだから仕方がない。そのうえ私は、夫と付き合い出すまで、この男の所有物だった。


「アンタといると、気分が悪くなる。行くわ」


 踵を返した背中に「素敵なネイルですね」と、男が声をかけてくる。


「紫陽花よ。きれいでしょう。私の大好きな花なの」


 男に向かって手を突き出すと、彼は恭しく爪先に唇を寄せた。


「たしかにあなたにぴったりですね。移り気、浮気……そして毒がある」


 私は頷きながら男ににっこりと微笑んでみせた。


<了>


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― 新着の感想 ―
[一言] 45話『紫陽花』 不思議な関係の二人、そして、『紫陽花』の花言葉…。 「あなたにぴったりですね…」 なぜかどこかで聞いたような話…。そう言えば、ボクも『紫陽花』が好きです。 さて、この…
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