44/59
花言葉ものがたりより「月見草/待宵草」
「待てど 暮せど 来ぬ人を……」
スイッチバックでなければ登ってこれないような山奥の秘湯。
一人、窓際の広縁でスマートフォンのメール画面を開いたまま、途方に暮れる。
沈んでいこうとする太陽がオレンジ色の光を深く部屋の中へと投げ込んでいた。
私はとうに浴衣姿だというのに、あの人はまだ来ない。
ここに来る前、見かけてしまったの。
あなたと手をつないで歩く淡いピンクのワンピース姿の奥様。
それに引き換え……。
うつむくと、洗いざらしの色落ちした浴衣が目に入る。まるで今の私みたい。
色あせて、白白と夜が明けるのを待つことしかできない宵待草。
別れましょう。
消してしまうことも、送ることもできなかったメール画面に、震える指先を近づけるけれど……。





