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昔取ったきねづかで…と言いながら無双する定食屋のおっさん、実は伝説のダンジョン攻略者  作者: 九頭七尾


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第76話 お前ら拡散は禁止だぞ

「あったぞ。転移トラップだ」


 地下43階。

 俺たちは転移トラップを発見した。


 目的地は、門山碧パーティとの連絡が途絶えた地下44階だ。

 そのためちょうど一階分だけ転移するのが望ましい。


「注入する魔力を調整することで、高確率で上手くいくはずだ。……こんなところか」


 俺の感覚なのでミスする可能性もある。

 もし地下45階に飛んでしまったら戻るしかない。


 そうして転移した先は――


「よし、たぶん成功だ。地下44階に来たはず」

「さすがですね……。是が非でも西田様を救援チームに加えたいと考えた長官は、やはり正しかったようです」


 飯島氏がそんなことを呟いているが、たぶん他にもっと適任がいたと思うけどなぁ。


「さて、問題はどうやって探し当てるかだが……」


 地下44階はそれだけで関東全域を凌駕するほど広大な上に、無数の水晶が巨大な壁となって道を塞いでいたりするため、非常に複雑な迷路構造になっている。

 もちろん俺もルートなんてまったく覚えていないし、行方不明者を手探りで捜索していてはどれだけ時間がかかることか分からない。


『当日、門山碧パーティが辿ったルートをナビゲートさせていただきます』


 しかし幸い、こちらには頼もしい地上チームがいる。


『地下44階まで順調に来ていたパーティと、この階で突然、音信が途絶えました。どうか皆様、ご自身の安全を最優先に探索を進めてください』


 そんなドローン越しの言葉に気を引き締め直し、俺たちは探索を開始した。


〈ほんと気を付けてほしい〉

〈ニシダがいれば余裕よ〉

〈変なフラグ立てんなって〉

〈てか、視聴者数増えてきてるな〉

〈100人超えたか。お前ら拡散は禁止だぞ〉

〈するなよ! 絶対するなよ!〉

〈やめれwww〉







「……ちっ、嫌な感じだぜ」


 呟いたのは天童奈々だった。


「地下44階に辿り着いてから、かなりの距離を進んできたぞ? なのに、まだ一度も魔物と遭遇してねぇどころか、その影すらも見えねぇなんて……どう考えてもおかしい」


 それにエルザが同意する。


「ですわね。地下43階もそうでしたけれど、普通ならもう何度も魔物と交戦しているはずですわ。明らかに異常ですの」


 二人とも深層の探索経験が豊富なためか、この状況に強烈な違和感を覚えているようだ。


「とても運がいいって可能性も……」


 恐る恐る可能性を口にしたのは一ノ瀬新之助だ。


「それはねぇな」

「それはありませんわね」


 しかしあっさりと一蹴されてしまう。


〈可哀そうw〉

〈この二人怖い〉

〈まぁ俺も絶対ないと思うけど〉

〈だよな。楽観すぎだって〉

〈だからAランク止まりなんだよ〉

〈みんな辛辣で草〉


「こういうときは大抵ヤベェことが起こってんだよ。あたしの経験上な」

「あたくしもナナに同意ですわ」


 俺も彼女たちと同意見だった。


 ダンジョンの中には、こんなふうに魔物が出現しない特殊な地帯が存在するケースもあるにはあるのだが、少なくとも俺の記憶上、新宿歌舞伎町ダンジョンには当てはまらないはずだ。


『実は門山碧のパーティも、音信不通になるまる直前まで同じような状況でした。魔物とまったく遭遇せず、警戒しながら探索していたのです。過去、地下44階で同様のことはありませんでした』


 いわば嵐の前の静けさといった状況だが、その原因と彼らが行方不明になったことが無関係とは思えない。


 水晶の森の中を突き進み、やがて俺たちは少し開けた場所に出た。

 不自然にそこだけ水晶が途切れ、まるで闘技場のような円形の空間となっている。


「恐らく何かいるぞ。気を付けろ」

「あれ、索敵スキルに反応はないけど……」

「地下44階ともなると索敵を無効化する魔物も少なくないからな」

「そうなの? うちの活躍の機会なくなるじゃん。てか、西田っちは何で分かるの?」


 ……西田っち?

 五条皐月からの呼称に首を傾げつつ、俺は答えた。


「勘だ」


〈勘て〉

〈めっちゃ当たりそう〉

〈ニシダの勘は信頼できるやつ〉


 と、そのときだった。

 魔物が水晶の後ろから飛び出してくる。


「っ……アークメイジです!」

「背後からも!」

「何体もいるぞ!?」


 手には杖を持ち、ローブを纏った魔導師系のモンスターだ。

 しかもすでに魔法の発射体勢に入っていた。


「狙い撃ちにされちゃう!?」

「はっ、どんな魔法か知らねぇが、あたしがまとめて相殺して――」

「これは……マズイっ、転移魔法だ!」

「「「えっ!?」」」


 直後、アークメイジたちから一斉に鮮烈な光が放たれる。

 そして気づいたときには、俺は今までいた場所とは違うところに飛ばされていた。


「しまったな。強制的に転移させられたか。幸い同じ地下44階のようだが……」

「あ、あの……西田様?」

「っと、わ、悪いっ……」


 俺は慌てて彼女から離れた。

 管理庁の飯島氏だ。


 転移の際、身体を接触させていると同じ場所に飛ぶことができることから、咄嗟に近くにいた彼女を抱き寄せてしまったのである。


「い、いえ、大丈夫です。それより……ここにいるのは我々だけのようですね」


 近くには他に誰も見当たらないので、この場所に転移させられたのは俺たちだけのようである。


「先ほどの魔法は……」

「敵を強制的に転移させる魔法だ。要するに転移トラップと同じものだが……まさかアークメイジがそれを使ってくるとはな」


 もしかしたら門山碧のパーティも同じように転移魔法でバラバラにされてしまったのかもしれない。


「ドローンとも逸れてしまったし」

「そちらは問題ありません。予備がありますので」


 飯島氏がドローンを取り出し、起動させる。

 すぐに地上と繋がったようで、


『ご無事ですかっ!?』

「はい、わたくしと西田様は一緒にいて無事です。ただ、他の方々は分かりません。魔物の放った転移系の魔法により別々のところに飛ばされてしまったのです」

『なるほど……。我々も他の方々を見失ってしまい、現在ドローンで捜索をしているところです』


〈お、復活したな〉

〈何が起こったんだろ?〉

〈ニシダと女性しかおらんな〉

〈あの魔法使いっぽい魔物のせい?〉


「どうやら単に転移させただけではないみたいだな」

「えっ、それはどういう……なっ!?」


 俺たちが今いるのは、左右、そして頭上までも巨大な水晶で囲まれた、言わば水晶のトンネルのような場所だ。

 その一本道の両側から、無数の魔物が押し寄せてきたのである。


「ここで待ち構えていたのか」

「ま、待ち構えるって……種類も違う魔物にそんな真似ができるはず……」

「ああ。だから恐らく統率しているやつがいる。……何にしても、まずはこいつらを蹴散らす必要があるな」


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