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第15話 電気メーターの使い方


「ねえ、二司君どうだったの?」

 木崎さんが隠れている場所に戻ったおれは、パーカーのフードをもう一度締め直してから口を開く。


「あれはワゴンだと思う。思いっきりおれの家に停まってるし」

「そうなんだ」

 そう言った後、一度下を向いた木崎さんは勢いよく顔を上げ、

「わたしは今すぐ移動するべきだと思う」

 と真剣な表情で告げた。


 移動、か。ワゴンかもしれないとわかった瞬間、おれはこの家に人がいなければ隠れてやり過ごせないか。という考えが浮かんだ。

 当然何らかの能力での干渉を防ぐため木崎さんの無効化は使うだろう。だがそのことによって相手に違和感を与える可能性もある。結局現時点ではどちらを選んでも同じだ。

 しかし木崎さんは同じくリスクがあるなら動くことを選んだ。おれは、おれは、そうだな。おれはリュックのサイドポケットに入れていた鉄変換用水のペットボトルを取り出す。


「一本裏の道に入って駅に向かおう。人がいれば何か起こるかもしれないし、そもそも気付かれずやり過ごせるかもしれない」

「わたしもそれがいいと思う」

 引き締まっていた木崎さんの表情がさらに引き締まり、それにつられたおれも表情を引き締めながら、通り抜けて反対側の道路に出るため、今いる家の敷地内を通り抜け、さらに柵を乗り越えてもう1軒通り抜け反対側の道路に出た。



「目立つから離れて歩く?」

 おれは、一応やっとけ感が拭えていないことを自覚しつつ、家に身を潜めながら道路を確認する。


「普通にわたしの範囲にいたほうがいいと思うけど」

 木崎さんは、何系の出身?と思わせるような慣れた雰囲気で家の壁に背をあずけていた。


「そうだよな。よし今の所は来てないから歩こう」

「わかった」


 なんか今のわかったの言い方。入っちゃってんのか?おれは今度言われたら触れようと思って今回はやり過ごした。


 

 一本裏の道でも先程と同様に車両と人の両方にまったくすれ違わないまま数百メートル歩いたところで、おれは遠慮がちに、あのう。ちょっといい?と言った。


「なに?」

「さっきは移動に同意はしたよ、本心で、シリアス気味で、同意した。でもここまで人通りが無いとさすがにまずいと。ワゴンからしたらさ、「あ、絶対こいつらだ。だって人いねえもん」ってなるよね。おれもうちょっと人いると思っててさ」


 木崎さんは無言で振り返った後、前を向く。


「そう、だね。わたしもそれは思ってた。さすがにここまでと、あ!二司君」

「ん?この辺で方向転換というのも、おれはありだとお」


 あ、まず。車が近づいてくる音に気が付いたおれと木崎さんは再び住宅敷地内に入る。


「静かだからすげえ音が聞こえるな」

「ワゴンかどうかはわからないけど。これだけ車通らないなら」


 この家、中に人いるのかなあ。おれは明かりのついていない2階建ての家を見上げる。


 ワゴン車が目の前を走り去り、徐々に小さくなっていく音を確認しながら、うん、よかった。よかったよ。とおれは1人頷いた。


「さっきの道じゃなくて今度はこっち。これはもう間違いないよね。相手はわたしたちのことをどこまでわかってるのかな?」

 いつの間にかしゃがみ込んでいた木崎さんは、ぎりぎりおれに届く音量で言った、


「うーん、相手の能力次第すぎてなんとも言えないよ」


 相談した結果、15分間は動かずに待機となり、数分で立っているのが辛くなったおれはかなり馴染んでいる状態で転がっていたレンガに腰を掛ける。


 体感では20分、実際は12分後、無敵を誇ったこの服ですら気持ち水が染み込んでいくのを自覚した頃、再びライトの光が辺りを照らし、エンジン音と共にワゴン車が通り過ぎて行った。


「さっきは二司君の家から駅側。今度は駅側から二司君の家」

 木崎さんは独り言のように呟いた。


「これはもう間違いはない。ある程度は絞った上で探している」

 おれは手に持っていたペットボトルの蓋を開け、閉めた。

 

 こういう感じで探しているとしたらいくつ想像できることはある。


 まずおれたちの家に来た2人(怜子さん入れて3人)はやはり単独ではなかった。

 ワゴンの移動は車を使うことが最適。

 細かい場所を把握することはできない。

 現時点では広範囲での攻撃やコミュニケーションを取ることができない、もしくはその必要が無い。

 

 もっとあるとは思うけどいまいち出てこないな。ふと木崎さんを見ると視線が合い、木崎さんは玄関を指さした。


「二司君。人いなさそうだし、一旦この家に入って考えようよ」

「でも木崎さん。電気のメーターが回ってるんだ、人がいるかもしれない」

 おれは早い段階で発見していた電気メーターのことをここで持ち出した。


 わたしもあんまり知らないけど。木崎さんはそう前置きし続ける。


「普通に待機電力とか常時の、例えば冷蔵庫とかで使ってたら回るんじゃないの?」

「え、ああ。まあそういう、うん。そう言われれば……」

「人がいたら謝って出ればいいだけでしょ」


 おれは木崎さんに促される形で、持っていたペットボトルの水を使い鍵穴に水を入れてドアを開けた。


 玄関のドアを閉めると完全に暗闇となり、おれと木崎さんは持参した懐中電灯を頼りに家の中をくまなく探索して人がいないことを確認。そして逃げることを考え1階リビング窓近くに移動した。


「車で動き回ってるってことはわたしたちが歩いてるのを想定してだよね?」

 木崎さんは壁にもたれてゆっくりと息を吐く。


「だろうね。でも能力にしては雑だな。あの距離感で通り過ぎて見つけられないなら目視と変わらないよ」

「わたし達にとって良くない事態としては、わたし達が見た計3回は1台じゃない。全部別もちょっとおかしいから2台かな。それらはおとりと、この付近にとどめるためのけん制。別の人物がこの辺をしらみつぶしに探しているパターン。あの大きさの2台だったら12、3人ぐらいはいるかも」

「あり得ると言えばあり得る。嫌だからやめて欲しいけど」


 おれと木崎さんは電気及び水道も使わないことを確認し、交代で仮眠することにした。


 ありがとう、先にしてもらって。そう言って木崎さんが床に横になってから57分経過したところで、数人が歩く音、そして話し声が耳に入った。


 おれは試しに一度目を閉じてみたが、無かったことにはならなかったので、開いた。

 

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