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57 ーーーー ※????目線



「大道具の片付けをしないといけないんだ」



 セイントルキア学園の中、特進クラスの自席に座っている私にそう言ってきたのは、学園祭のクラス演劇の舞台美術担当チームのリーダーだった。


 先日、特進クラスの出し物『カルロとシャーロットの不思議な世界』の舞台練習の際に、第1王子が襲われる事件が起きた。その犯人はまだ見つかっていない。

 その場にあった大道具は、証拠品となるため、触れてはいけないことになっていたはずだ。

 なのに、片付けをするとはどういうことだろう。


「可能な限りの調査は終わっていたから、もう大丈夫なんだってさ。大魔法館自体の修繕もしないといけないし、ものが大きくて場所を取るから、むしろ片付けて欲しいって、警備兵団からのお達しだよ」


 何やら、事件の時に半壊した大道具は既に体育館に移動させられているらしい。今日は、大道具の状態を確認しながら、使えるものは倉庫に一度納めて、使えない物の廃棄作業をするのだとか。

 ……警備兵団からの指示なら、きっと大丈夫なのだろう。後で怒られたりしないといいのだが。

 不安に思いつつ体育館へ移動していた私は、ふと気が付いた。クラスメート達の数が思ったよりも多い。

 不思議そうにしていると、リーダーが私に答えをくれた。


「解体作業は、かなりの大作業になるからね。流石に俺達だけじゃ無理だから、他のチームも一緒にやってくれるんだ。お前も力には自信ない方だろ?」


 そう言われると業腹だけれども、まあそのとおりなので私は頷く。


 体育館につくと、大道具の残骸が置いてあった。

 『カルロとシャーロットの不思議な世界』の大道具は、私達が一から作ったものではなく、第1学年の生徒が毎年先輩達から引き継いで大事に使っていたものだ。それが、大半は使い物にならない状態になっている。仕方がないことだったとはいえ、この光景を見ると先人達に申し訳なく、心が痛む。


「ほら皆、サクサク作業するぞ。最近は日が暮れるのが早いからな!」


 リーダーの指示に従って、皆で大道具を選別していく。解体するものと、修繕利用するものを大きく分けて、その後、修繕利用すると決まったものを片付けるのだ。


 仕分け作業が終わった段階で、私は既に息を切らしていた。男なのに、どうにも体力がなくて困ってしまう。


 その後、半数ぐらいの生徒が片付け作業に入り、残りの生徒が解体作業に移った。私は解体班だった。体力がないから解体はちょっと、とリーダーに嘆願したけれども、「壊さないように運ぶ方が力がいるぞ?」と言われて思い留まる。確かに、そのとおりかもしれない。


 リーダーの指示に従って解体を進め、廃材となってしまった木片を束にして括り、体育館の外に積み上げていく。その作業に夢中になっていると、後ろから、慣れ親しんだ声がかかった。


「頑張ってるな。疲れてないか?」


 ふわふわした金色の髪に、深緑の目。私達のクラスメートの、ラファエル第1王子だった。


「殿下」

「お前は体を動かすの、苦手だもんな。でも、魔石に魔法を込めるのは得意だろう? 舞台美術担当よりも、洪水チームとか、舞台魔法担当の方がよかったんじゃないか」


 ――舞台美術の大道具の配置や魔法効果を考えることに興味があったんです。


 私がそう答えると、第1王子は、困ったような、悲しいような、複雑な笑みを浮かべた。


「そうかもな。いや、それも本音なんだろう。確かに、お前はそういう根をつめるような作業が好きな奴だよ」



 ――ガン!



 と、衝撃と共に、世界が真っ暗になった。


 後ろから凄い力で押さえつけられて、額を床にぶつけたのだと気がついたのは、何秒後のことだっただろうか。


 抵抗しようとしても、体が動かない。私を中心に、体育館には魔法陣が浮かび上がっていて、私の体の自由を奪っていた。その魔法陣には、聖属性と魔属性を除く全ての属性の魔力が込められている。


 もちろんこれは、目の前の第1王子の仕業だ。


「何をするん、ですか……」


 体は床に這いつくばったまま、眼球だけ動かすと、体育館には私と殿下以外、クラスメートは誰もいなかった。

 第1王子は、表情の読めない顔で私を見下ろすと、左手の人差し指の指輪に魔力を籠める。大粒のダイヤが輝きを見せた後、床から黒い影が盛り上がり、そのままツノの生えた美丈夫の姿へと形を変えた。彼の、契約精霊だ。


『ふむ。一応、捉えたようだな』


 その冷ややかな目線に、私は目を見開く。


「なあ、お前がやったんだろう?」

「何、を……」

「もう分かってるんだ。本当に残念だよ」


 そう言うと、第1王子は右掌を広げる。ふわりと中指の指輪が光って、魔石の煌めく豪奢な杖が現れた。



「――マイルズ。お前が僕を狙った犯人で、世界でただ1人の魔属性適性者――《魔王》だ。違うか?」



 なんだ。


 もう、とっくにバレていたのか。




 深緑の目に映った私の顔は、これ以上ないほど、歪な笑みを浮かべていた。



 ……なら、もう我慢する必要は、ないな。



 私は、耐えるのを、辞めた。




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