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あやかし猫の散歩道  作者: 黒辺あゆみ
第二話 媛君の一族

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3 強制乗車

 私はだんだんと、背中に汗をかいて来た。

 いやいや、あっちに私がわかるわけがない。

 なにせあの時の私は猫で……


「やはりそうだった、お前だな」


この耳心地のいい声、やっぱり昨日のアイツじゃん!?

 てか、「やはり」とか言われちゃているよ!?

 なんで!?

 あの時は猫、今人間!

 わかりっこないじゃんね!?

 え、っていうかまさかまさか、コイツ高校生だったの!?

 もっと大人だとばっかり思っていたんだけど!? これが一番ビックリだよ!

 色々情報があり過ぎで大混乱な私に、ソイツが歩み寄って来る。

 それに合わせて、集っていた生徒が道を開ける。

 いやいや、そんな花道みたいに道を作らなくてもいいから!

 むしろ塞いでおいてほしい!


「え、なになに?

 弥奈ってば知り合い?」


逃げようにも、美加子が腕を掴んでいるからできない。

 逃げたい、逃げたいよぅ……!

 やがてソイツは私の目の前まで来て、ズイッと顔を寄せてきた。

 ちょっ、近い近い!?

 キョドっている私の頭を、ガシッと両手で捕まれる。


「探す手間が省けたぞ、野良猫」


うにゃ~ん、猫って言われたぁ!

 やっぱり特定されてるじゃんね!?


「逃げるなよ、呪われたくなかったらな」


ひいぃ……! 呪われるってなによぉ!?

 誰か、タスケテ~!



「……」


「……」


今、無言の空間に耐えている弥奈です。

 あれから大勢に見られながらあのお金持ち車に強制乗車させられて、今車の中でアイツと二人並んで座っているところなんだけど。

 ヤバい、無言が怖い!

 絶対に、昨日の不法侵入を怒られるよね!?

 なんとか場を和ませて、フレンドリーな方向に空気を持っていきたい!


「あの」


「なんでしょう?」


それで私が勇気を出して声をかけたら、口調は丁寧なんだけど、すんごい目でギロッて睨まれた。

 そんな、もっと優しく返してくれてもいいじゃんね……!?

 入学式終わりに校門前で待ち伏せされるっていう、まるで少女漫画に出てくるようなシチュエーションなんだけど。

 それがこんなにときめかないってこと、ある?

 それでも私は、さらなる勇気を振り絞って隣の人に視線を向けて、話しかけた。


「えと、高校生だったん、デスネ?

 てっきり、もうちょい大人かなって思った……」


「なんだ、俺が老けていると言いたいのか?」


なんか、食い気味で文句を言われた。

 そんな、脅さなくったっていいじゃん!?

 なによ、老けてるのって実は気にしてたの!?


「ぷっ……」


私たちのやり取りがおかしかったのか、前の運転席から小さく笑い声がする。

 なによ、こっちの気も知らないで、笑う事ないでしょ!?

 ムカついた私がその運転手さんを睨んだのと、隣の人もそちらを睨んだのが同時だった。

 それに気付いたらなんか気まずくなって、視線を下に向ける。


「……」


「……」


そしてまた、無言。

 もう嫌だ、早く車から降りたい!

 そんな辛い時間の流れる私たちを乗せた車は、私の家の近所までやって来たら、例のお屋敷に入って行った。

 わかっちゃいたけど、やっぱり連れて来られるのはココだったか。


「ココ、空き家だと思っていたんだけど」


私としては独り言で、話しかけたつもりではなかったんだけど。


「つい先日俺が相続したばかりで、住み始めたのは最近だな」


「そうなんだ」


なるほどなるほど、私が空き家だと思っていたのは、勘違いじゃなかったと。

 これで少なくとも、人が住んでいる場所に不法侵入したのよりは、気持ちが軽くなる……かもしれない。

 車はお屋敷の立派な玄関の前に停まって、ドアがタクシーみたいに自動で開く。


「来い」


アイツは短くそれだけ言うと、サッサと車から降りた。

 私はこのまま車に居座っていてもいいことがあるわけじゃないっぽいので、素直に降りてアイツを追いかける。


「お帰りなさいませ」


執事さんとメイドさんに出迎えられて初めて入ったお屋敷の中で、まず見えたのはフカフカの絨毯が敷かれた広い廊下だった。

 すごい、地元の文化会館のホールよりも、絨毯がフカフカだ。

 それに、執事さんとかメイドさんって本当にいるんだぁ。

 着ている服とかもテレビで見るような、ちょっと安っぽいのじゃなくって、「本物だ!」っていうヤツだよ。

 アイツはそんな色々と感激するのに忙しい私を待つことはせず、フカフカな廊下に面している部屋の一つに入って行くので、私は置いて行かれないように慌ててそれに続く。

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