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【書籍化&コミカライズ】地味姫と黒猫の、円満な婚約破棄  作者: 真弓りの


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翌日はやっぱり大変でした

疲労回復魔術のおかげで、いつもと変らない爽やかな目覚めだわ。


今日はお天気が良くてとても気持ちがいい朝だ。室内に入ってくる光の量が多いと、それだけで爽快な気分が増すから不思議ね。


肉体的な疲労は微塵も残っていないし、リンスに身支度を調えてもらいながら見る鏡の中の自分は、今日もお肌がツヤツヤだ。そういえば、ゆうべマリエッタも褒めてくれたわね。いつもお肌のことでは叱られてばかりだったから、ああして褒めて貰えると素直に嬉しい。


そうだ、マリエッタで思い出した。今日は、気をつけて一日を過ごさないといけないんだったわ。


昨日は色んな方と踊ったから、学園内ではあまり踊った方と親しく話しすぎない方がいいと言っていた。邪推されたり噂になることを避けるためでもあるし、わたくしにはヘリオス殿下という婚約者がいるから特に、他の男性と距離が近すぎるのはまずい。


ふ、と笑いが漏れた。


今頃になって妹からそんなことを心配されるだなんて姉失格ね。


四年前のわたくしのデビュタントの時、そういえばお母様からも似たような注意を聞いたことがあった気がするけれど、ダンスにもまったく誘われないしそんな注意なんてすっかり忘れてしまっていたわ。


本来ならば、わたくしが体験したことを通じてマリエッタを導いてあげるべきだったのでしょうけれど、頼りにならない姉でごめんなさい。心の中で詫びながら、わたくしは学園へと向かった。



***



「疲れた……」



サロンへの廊下を歩きながら、思わず漏れた言葉に自分でも驚いてしまった。


本当に今日は大変だったわ。学園にいる間じゅう、入れ替わり立ち替わりたくさんの令嬢達が面白い情報を仕入れようとわたくしに群がってくるんですもの。正直に言うとちょっと怖かった。


マリエッタも常に噂の中心にいるような子だから、きっといつもこんな思いをしていたのね。だからこそああして忠告してくれていたんだわ。妹の心遣いが嬉しくて、少し心が元気になる。


それにしても皆様、本当に興味津々だったわ……。


特に、ヴィオル様のことについては本当にもう、根掘り葉掘り聞かれた。


どうやって仲良くなったんだとか、あの時何を話していてヴィオル様は笑ったのかとか……はては趣味は、好物は、好みのタイプは、なんてわたくしからはとても答えられないようなことばかり聞かれてすっかり辟易してしまった。


聞いていて分かったのは、ヴィオル様は本当に本当に人気があるのだということだ。


モテるってそれだけ人として魅力があるということで、羨ましいことだとばかり思っていたけれど、こんなに大変なこともあるのね。


結局今度会うことがあったら聞いておく、と答えることしかできなかったけれど、きっと聞く機会なんてそうはないだろう。あったとしても、頻繁に会っているなんて思われるのも避けたいわけで、お答えを返す日は多分ないわけだけれど。


ああ、でもヴィーにはひとこと告げておいた方がいいかしら。きっとヴィオル様がご自身で感じていらっしゃるよりも数段注目を集めていたのだということだけは知っておいた方がいいだろうし。



「セレン」



考え事をしながら歩いていたら、後ろから声がかかる。振り向いたらリース様が穏やかな笑顔で近づいてきていた。



「昨日はありがとう」



さすがにリース様はわきまえているらしく、学園の教室ではとくに声をかけてこなかった。わたくしが女性達に囲まれていたせいでもあるのだろうけれど、きっとマリエッタが言っていたようにヘンな噂にならないように気を遣ってくれたんだわ。



「こちらこそ。リース様のおかげで落ち着くことが出来ましたわ」


「なら良かった」



さりげなく扉を開けてわたくしを通してくれる。リース様はいつも通り普通に優しい。扉を通るときにちらりと見あげてみたけれど、リース様は優しく笑うだけでいつもとまったく変わらない。


マリエッタはああ言ったけれど、やっぱりリース様がわたくしに恋愛としての好意を持っているかなんてこれっぽっちも分からないのだけれど……。そう思っていたら、頭上からこんな言葉が降ってきた。



「実はずっと以前からセレンとは踊ってみたかったんだ。昨日踊ることができて嬉しかった」



驚いて思わずもう一度見上げる。嬉しかった、という言葉とは裏腹にリース様の表情は、なぜか少し悲しそうに見えて、わたくしは一瞬言葉がでなかった。



「……誘ってくだされば、リース様ならいつでもお相手しましたのに」


「ありがとう。でもセレンは殿下の婚約者だからね、さすがにまだ誰も誘っていないところに先陣切って申し込むのは勇気が要るんだよ。それをあのヴィオル様は物怖じしないというかなんというか」


「あっ……セレン」



リース様との会話を遮るように、マシュロ様の声が響く。サロンの室内にはヘリオス殿下はもちろん、珍しくマシュロ様たちのグループまで室内に居て驚いた。いつもわたくしより遅く来るのに、こんなこともあるのね。



「な、なんでリースと一緒に……!」


「扉の前で一緒になったんだよ」



なぜか語気を荒げるマシュロ様をリース様が笑顔でいなす。いつも思うけれど、お二人って不思議な関係性だわ。わたくしとリース様のところへ駆け寄ってきたマシュロ様が、わたくしを見下ろしてなにかを言いたげに口をパクパクと開けたり閉めたりする。


いつもかなりはっきりと考えを口にする方なのに、珍しい。



「セ、セレン、その……昨日はうまく踊れなくてすまん」


「お気になさらないで。避けるのも楽しかったですわ」



マシュロ様がわたくしに謝るだなんて、本当に珍しい。そう思ったらつい笑ってしまった。すると、マシュロ様は急激に赤くなる。



「まぁ、マシュロはもう少しダンスの練習をしてから出なおすんだね。ヴィオル師団長よりもさらに危なっかしいって、貴族としてどうかと思うよ」


「そう願いたいものだな。あれじゃセレンの身が危険だ」



リース様の言葉に、ヘリオス殿下の声が重なった。先ほどはすでに執務を始めていた様子だったヘリオス殿下が、いつの間にか傍に立っていて、心配気な顔でわたくしを見ている。



「足は大丈夫か?」



どうやら昨日ヴィオル様に踏まれた足を、まだ心配してくれていたらしい。そもそも軽く踏まれただけですもの。全然問題ないのですわ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 突然の逆ハー乙女ゲームがはじまってニッコリしちゃいました。マシュロ…成長したね…!
[一言] あのマシュロが謝った…!ほんの少しだけ成長したのね。 セレン嬢の笑顔がまぶしいね。 ヴィオル様の作戦で男子達もいろいろ動きましたね〜。 これは楽しくなってきた。
[気になる点] なんか変な区切り?
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